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法制審議会家族法制部会第36回会議議事録読む2~原田委員・戒能委員・小粥委員・石綿幹事

拙速にウェビナーで条文素読

よかった!読むって大事ね!!チルドレンファーストなんだね

連れ去り勝ちにならなくなってきている???

亀仙流でいこう

議事録を読む

○原田委員

 原田です。遅れまして申し訳ありません。私も池田委員や佐野幹事の意見に賛成で、佐野幹事がかなり丁寧に詳しくおっしゃいましたので、ほとんど同じことにはなりますが、ここでいう年齢及び発達の程度というのは、この表現は飽くまでも大人からの視点であって、こどもの主体性が感じられないと思います。こどもの意見表明権というのは、全てこどもの言うとおりにするものではないということや、こどもが決めるわけでもないということですし、したがって子に責任を負わせるものでもないということは共通した理解だと思いますし、意見を表明しない権利も含むというのも意見表明権の基本ではないかと思います。こどもが自分のことが決められるに当たって十分に意見を聴いてもらって、そのとおりにならない場合でも、その理由をきちんと説明してもらうことによって納得感を得られると、これはいろいろなアンケートの結果を見ても、やはりこどもが自分の意見を聴いてもらえなかったとか、何が起こっているのか分からなかったというようなところに対しても考える必要がある問題ではないかと思います。ヒアリングでもそのようなことをおっしゃっておられましたし、やはりこどもがその結果をきちんと受け止められるようにする上でも、こどもの意向を尊重し、かつそれに十分な説明をするということが必要なのではないかと思います。
 それから、第1の1(2)の、互いに人格を尊重し協力するという点ですけれども、まず人格の尊重としては、DVや虐待をしないことはもちろんなのですけれども、濫訴的な申立てをしないとか、父母の同意なしに勝手にこどもの写真とかをネットに上げたりとか、元配偶者の批判をするとかいうような行為が、父母間の対立をあおるような行為、人格を尊重しない行為で、このようなことは親権の変更とか、そういう問題にも通じる問題だということを申し上げておきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは2点、御意見を頂戴しました。1点目は、これまでずっと御発言が続いている意見表明について、基本的には賛成という御意見でしたが、表現ぶりについて多少これまでの発言とニュアンスの差のあるようなこともおっしゃっておられたかと思います。それから2点目は、人格の尊重、協力ということの中身についての理解をおっしゃっていただいたと受け止めました。ありがとうございます。

父母間の対立をあおるのもNG,とφ(..)メモメモ

○戒能委員

 ありがとうございます。委員の戒能です。2点申し上げたいと思います。
 1点目は、もう既に多くの方がおっしゃったとおりなのですが、子の意見表明権はやはり独立して明記すべきだと考えております。それで、今までこどもの意見というのが、特に司法過程においては、十分に尊重されてこなかったということから出発したいと思っております。それで、確かに難しさはあります。困難であると思います。ただ、こどもの意見を尊重することと、この補足説明の3ページなのですけれども、子に意見表明を強いることというのは、必ずしも一致しないと認識すべきだと考えております。それで、我々が考えるべきは、どういう方法でどうやったらこどもの意見が尊重されるのか、あるいはその前提として、こどもが自由に意見を率直に表明できるような環境の整備だと思っております。一つは、司法と他の専門領域との連携、協働という話になっていきますし、多分弁護士会などでもそういう通知をしていらっしゃると思うのですけれども、専門的知見に基づく専門的な協働関係ということですね、そういうサポートがあって初めて、それから時間をじっくりと掛けて、ということがあります。心を開くというのは時間が掛かることですので、そういう体制を是非整備をしていく方向で検討すべきだと思っております。
 それから、2点目なのですが、それは、親子関係に関する基本的な規律の1(2)なのですが、その点では2点申し上げたいのですが、確かに互いに人格尊重し協力ということは必要なことかもしれませんが、ただ、これは婚姻関係の有無にかかわらずとなっております。そこで、離婚ということを考えてみると、違和感を持つわけです。それは、互いに人格を尊重しない、それから協力をしないというふうに、人間関係の問題になってくると。そうすると、その人間関係が問題だから離婚に至るというような関係ももしここに含むのだとすれば、では協力しない場合はどうなるのかという議論になりかねないということを危惧しております。
 例えば、オーストラリアではもう2011年にその条項が廃止されたと聞いておりますが、フレンドリーペアレントルールとか、片親引き離しとかそういう議論が出てくるという懸念を大変強く持っておりますので、人間関係の問題と法規範の関係をきちんと考えておくべきだと。そして、こういう状況が生じるかもしれないと、そういうときにどうするのかということも、これは考えるべきだと思っております。
 それで、先ほどの落合委員の問題提起は大変重要だと考えております。これを見ますと、親子関係に関する基本的な規律ですから、全ての親子関係に適用されるわけですよね。この部会は離婚ということを前提にして議論しておりましたから、そういう発想があるということはよく理解できます。しかし、実際に法となって規範となったときには、社会的にもっと幅広い問題を実はカバーしなければならない、そこまで考えて法の規律というのは考えるべきだということだと思うのです。
 それで、附帯決議のことは後で大石委員から御説明があると思っておりますが、そういう社会の中での親子関係は、もちろん一つではないし、そこに今、多様化が進んで、先ほど落合委員が御説明いただいたケースは多分、熊本の外国人の方のケースだと思っております。それから、日本の若い人のケースでも孤立出産の事件は多く生じております。そこで母親のみに重い責任を負わされると、父親は一体どうしているのかという議論がいつもあるけれども、そういう問題も意識して、これは附帯決議にするかどうかは後で議論するとしても、きちんとカバーをする、視野に入れて議論をすべきだと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からも2点、御意見を頂きました。1点目は意見表明について、これまでに出ている意見に基本的には賛成であるということだったかと思います。難しい点があるということは理解するけれども、それを克服していく環境整備を考えるべきだという御意見だったかと思います。2点目、その直前の原田委員の御意見でも出てまいりました人格の尊重、協力という点について、その影響に関する御懸念をお示しになったと理解を致しました。附帯決議という話も出ましたけれども、先ほど申しましたように、またそれは後で取り上げさせていただきたいと思います。

父母間の人格尊重をせずに、子どもの意見だけは強調したい
何を企んでいるやら

○小粥委員

 委員の小粥でございます。前々回だったか前々々回だったか、落合委員と窪田委員とのやり取りの中で、子の養育について親権者にあたかも全てを委ねるというようなことではなくて、国や地方公共団体の支援というようなことを民法に書き込むべきではないかというような御意見が出て、そのこと自体には深く共感するのですけれども、その意見が今度も出るのではないかと思って手を挙げておりました。けれども、民法の中でそれをという御提案は今日はなかったので、それについて御意見を申し上げようと思っておりましたけれども、恐らく補足説明の第1の1の2で尽きているということではないかと理解いたしましたので、その点については申し上げないことといたします。
 しかし、この問題意識には共感するところがありまして、それは縦割りの各省の役所の所管の中で立法論議をするということへの問題提起であるとも思いましたし、それから、法制審の部会で発言するようなことではないのですけれども、民法学者が家族法の授業をするときに、民法という法律に書かれた家族に関するルールだけを説明して事足れりとするような傾向がなかったかと言われると、反省しなければならないところがあるようにも思いました。
 ほんの少しだけ、立法に関わるようなことで、まだ十分な考えに至っていないわけですけれども、付け加えさせていただきます。それは、父や母であるから当然に親権を持って重たい責任を負うということは、事柄の性質上当然だというわけではなくて、法政策の問題なのだということを少し法律に書き込めないかということを実は考えておりました。結論は出ていないのですけれども、もし今後、若い世代で考えていただけるときのために、少しだけ議事録に残したいという趣旨での発言でございます。
 それは、今後、要綱案の第1の1のところで、恐らく補足的に、こどもに応じて、未成年の子については父母が親権者になるとか、養子については養親が親権者になるというような規定が提案されることになると思うのですけれども、その際に、親だから、父、母だから当然にというような書き方ではなくて、例えば後見に関する、現行法でいうと民法の第8条ですけれども、後見だと後見に付するという書き方をしますし、更に飛躍して言うと、こどもの養育が親権者に信託されるというような書き方もあり得ようかと思います。現在この時点で問題提起をして議論することは難しいと承知しつつも、父、母だから当然に親権者になるということではないのだと、法政策の問題なのだということを考える手掛かりになるような規定の仕方に調整していただく余地はないかなと思って申し上げました。
○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは御発言は、今後の検討課題ということでお挙げいただいたと受け止めました。これまで様々な方から出ている社会的な支援の必要性ということについては、これを今の時点で民法に書き込むということを支持する意見が出ているわけではないので、それについては発言されないということでしたが、ただ、民法の中でも親の果たす役割についての書き方について再検討をして、その表現を変えていくということも将来的には考えられるのではないかという御指摘を頂いたものと受け止めました。ありがとうございます。

反省する研究者

○石綿幹事

 幹事の石綿です。第1の1(1)について2点、発言させていただければと思います。
 まず、多くの方々から意見があります子の意思についてです。子の意思をここの部分に入れることについては慎重な意見を申したいと思います。理由は4点ございます。
 まず一つ目は、第821条との関係ということになります。現状の文言は第821条と平仄を合わせるような形で御提案があるかと理解をしておりますが、ここにもし子の意思の尊重を追加すると、第821条とそごが生じてくることになる。親は子の意思を尊重するのである、親と親権者で親の方が広い概念なので、親権のときも当然にそうなのだということもあり得るのかもしれませんが、少なくとも新たな条文と第821条の関係をどう説明するのか、どうしてこちらには入っていて、入っていないのかという問題、同じなのか違うのかといったようなことの整理の必要が生じてくるということになります。そのことによってかえって解釈論、実務に悪影響というか混乱が生じるおそれもあるのかもしれないということですので、ここはできる限り第821条との平仄を合わせるということが法体系の形から望ましいのではないかと思われます。
 2点目としては、部会資料にもございますが、子の人格の尊重という部分に一定程度、こどもの意思の尊重ということは含まれるだろうと思います。人格を尊重する際にその人の意見を全く考慮しないということはあり得ないので、子の人格の尊重にこどもの意思の尊重は一定程度入っているのではないかと理解をしておりますし、そのような解釈というのも十分に成り立ち得るのだろうと思います。
 3点目が、佐野幹事などからこどもの意思表明というのが独立した権利であるということの御説明があり、そのこと自体はそうだとは思いますが、この形で入れるのが本当に望ましいのかという問題もあるのだと思います。ここに入れると、親子の関係でということに少なくとも限定されてしまうと思います。これを契機にして、将来的にこどもの意思表明権の導入を考えていく、あるいはこどもにとって一番大事なのは親との関係なのだからまずここに入れるということなのかもしれませんが、こどもの意思という重要なものをここの場面で入れることが望ましいのか、独立して別途入れていく方法をまた考えていく方が望ましいのかというのも検討すべきことなのではないかと思います。
 4点目は、以前の部会で水野委員がおっしゃっていたようなことかと思いますが、ここで子の意思の尊重を追加したときに、しかもこの文脈の中で入れたときに、こどもの意思ということが過度に重視される、あるいはこどもの意思の表明を求めるということがこどもにとって結果として負担になることというのもあり得るのではないかということがあります。以上の4点がこどもの意思を入れることに対して慎重な理由ということでございます。
 それから、2点目は小さいことではありますが、先ほど第1の1について落合委員が、従前よりも親の責任を重くする規定を設けるといったような御趣旨の御発言をなさっていたように理解をしております。部会資料の方にも、そのようなものではない、従前、実務・学説で考えられていたことを明文化するのだというふうな整理がされているかと思いますし、私自身もそのような理解をしております。これは、議事録を中心に御覧になる方に誤解が生じないようにということで、補足的に発言させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは、大きく分けて2点について御意見を頂きました。一つ目はこどもの意思の問題で、慎重に考える方が良いのではないかということを四つの理由とともにおっしゃったかと思います。そのうちの最初の三つは、主として体系的な整合性という観点からの御指摘だったかと思います。二つ目は、この第1の、親の責任、責務ということについて、従来の責任を加重するという性質のものではないということを確認しておきたいという御趣旨だったかと思います。ありがとうございます。

親の責任が重くなるわけではない

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