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法制審議会家族法制部会最新資料をみる1~資料34-1

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さて、今週は、資料を読もうと思う
トピックに先鋭化しているので、体系的な感じはしないけども、大事な議論が展開されていそう

1 家族法制部会 資料34-1
親権に関する規律についての補足的な検討

(資料の位置付け)
この部会の第32回会議では、部会資料32-1(以下「たたき台(2)」 という。)に基づき、要綱案の取りまとめに向けて、親権に関する論点の議論がされた。その際には、いくつかの論点について、部会委員・幹事の意見が対立し、一部の委員・幹事から具体的な修正案が提示された。この資料(部会資料34-1)は、意見対立のあった論点における修正案について議論するための論点整理を試みるものである。 また、第32回会議で示された意見の中には、たたき台(2)に示されたゴ シック体の記載の賛否や修正の意見とは別に、その解釈・適用の在り方に関する意見も述べられた。そのような解釈論については、それ自体がこの部会における取りまとめの対象となるものではないものの、この資料では、ゴシック体 の記載の修正の要否を検討する上で参考となると考えられる限度で、これまでの議論を踏まえた補足説明を試みている。 なお、第32回会議では、たたき台(2)に示されたゴシック体の記載の意味内容をより明確に表現する観点からの修正意見や、記載の場所に関する意見等もあったが、規律の実質的な内容に直結しない表現ぶりの修正意見はこの資料では取り上げていない。

1 親権行使に関する規律の整備についての論点整理


 たたき台(2)第2の1⑴イについては、第32回会議において次のよう な修正意見が示されたが、どのように考えるか。

① 「イ」の「急迫の事情」の要件をより緩やかなものに修正する観点から、 「必要性」及び「相当性」を基準とすべきであるとの意見や、「必要やむ を得ない」ことを要件とすべきであるとの意見
② 「イ」に加えて、「ウ」として「父母の意見が対立しているとき(であ って、裁判所の判断を待てないとき)」を追加すべきであるとの意見


たたき台(2)の内容(部会資料32-1より再掲)
1 親権行使に関する規律の整備
⑴ 父母双方が親権者となるときは、親権は父母が共同して行うものとする。ただし、次に掲げるときは、その一方が行うものとする。
ア 他の一方が親権を行うことができないとき。
イ 子の利益のため急迫の事情があるとき。 
⑵ 親権を行う父母は、上記⑴本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為を単独で行うことができるものとする。
⑶ 特定の事項に係る親権の行使について、父母の協議が調わない場合(上記⑴ただし書又は上記⑵の規定により単独で行うことができる場合を除く。)であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権を父母の一方が単独で行うことができる旨を定めることがで きるものとする。

資料32ー1


(補足説明)

1 これまでの議論の整理


⑴ 昭和22年の改正前の民法では、父母が婚姻関係にあるかどうかに関わらず、子の親権は父母の一方のみが行うこととされていた。その後、こ の規定は、昭和22年の民法改正により改められ、親権は、父母が婚姻中は、父母が共同して行うことが原則となることが定められるに至った。このような改正の背景については、親権行使を父母の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいことが多いとの価値判断があったとの指摘があり、改正当時の議論においては、例えば子の有する財産の処分が問題となる場面を念頭に、多くの場合には子の利益から考えて、父母の意見不一致の時には財産の処分を許さない方が良いと考えられていたとの説明がされている。この部会のこれまでの議論においても、このような民法の価値判断を維持することを前提とした意見が示されてきた。 もっとも、親権の共同行使の原則を厳格に貫き、父母の意見不一致の場合に親権行使が一切できなくなることに対しては、適時に親権行使が行われなくなることで子の利益に反するおそれがあるとの批判がある。この部会のこれまでの議論やパブリック・コメントの手続においても、例えば、①父母の一方が子の養育に無関心となり、音信不通となってしまうケースでの不都合を指摘する意見、②(父母の関係が必ずしも良好でなく別居状態にある場面等を念頭に)日常的な些細な事項についてまで常に父母がコミュニケーションをとることは困難であることを指摘する意見、 ③父母の意見不一致により親権の行使がされないことで、かえって子の利益に反する場合も想定されることを指摘する意見、④父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設したとしても、その判断に一定の時間を要することへの懸念を示す意見などが示された。
⑵ そこで、たたき台(2)では、父母が婚姻中の場合も含め、父母双方が 親権者である場合の親権行使のルールを整理することとしている。まず、 上記のうち①の懸念への対応策としては、父母の一方が親権を行うことができないときは他の一方が単独で親権を行うこととすることで(なお、 このような規律は現行民法第818条第3項と同様である。)、父母の一方が音信不通である場合には親権の共同行使を不要とすることとしてい る。また、親権の「共同行使」とは、例えば、父母の一方が、他方の同意を得て、単独名義で親権の行使をする場合も含まれており、この場合の他方親権者の同意は黙示的なものも含まれると解されることから、部会のこれまでの議論においては、父母の一方が他の一方に対して親権行使に関する相談の連絡をしたもののそれに対する反対がないといった場面においては、黙示的な同意があったものと整理することもできるであろうとの意見があった。 また、上記②の懸念については、たたき台(2)において、現行民法の解釈を明確化する趣旨で、父母双方が親権者である場合であっても、監護及び教育に関する日常の行為については、単独行使を可能とするものとしている。 さらに、上記③の懸念に関して、日常の行為以外の事項(すなわち、重要な事項)について親権者である父母の意見が対立する場合に対応するための方策として、たたき台(2)では、この場合の意見調整をするための裁判手続を新設することを提示している。このような規律によれば、ある重要な事項について、父母の意見が対立する場合の親権行使の方法は、(a)まずは父母の協議により当該事項についての親権行使の内容を定めることとする(この協議は、父母のみの協議のほか、家庭裁判所における家事調停や各種のADRによることも考えられる。)が、(b)この協議が調わないときは、家庭裁判所の審判により、父母のいずれが当該事項について親権を単独で行うものとするかが定められることとなる。このような当事者間の協議や裁判所の判断による解決方法は、現行民法の他の規定とも整合的であると思われる。また、このような裁判手続には一定の時間を要すると考えられるものの、緊急性が要求されるケースにおいては、例えば、審判前の保全処分を活用することも考えられる。 その上で、このような解決方法については、上記④の懸念のとおり、父 母の協議や裁判手続には一定の時間を要することを念頭に、そのような協議や裁判手続を経ていては、子の利益に反することがあるとの懸念がある。部会のこれまでの議論の中では、例えば、入学試験の結果発表後の入学手続のように一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場面や、DVや虐待からの避難が必要である場面等を念頭に置いた意見が示された。そこで、たたき台(2)では、このような場面に対応するための規律として、子の利益のため急迫の事情があるときは、例外的に親権の単独行使を許容する旨の規律を提示している。部会のこれまでの議論の中では、このような急迫の事情(緊急の行為)を要件とする例外規定を設けることについては、現行法の規定(児童福祉法第33条の2第4項や 同法第47条第5項)との比較において整合的である旨の指摘があった。

2 「急迫の事情」の意義


たたき台(2)のうち急迫の事情に関する部分の修正の要否を検討するに 当たっては、「急迫の事情」の意義を整理することが有益であると考えられ る。 そして、上記1⑵のとおりの議論の経過によれば、このような「急迫の事情」の有無が問題となるのは、重要な事項に関する親権行使について父母の 意見対立が生じ得る場面であると考えられる(たたき台(2)によれば、父 母の一方が音信不通のケースや、日常的な行為を行う場面では、急迫の事情 の有無にかかわらず、親権の単独行使が可能となる。)。部会のこれまでの議論においては、そのような重要な事項については、一般に、親権行使を父母の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいことが多いとの価値判断を踏まえた意見が示されていた。このような議論の 経過を踏まえると、父母の協議や家庭裁判所の手続(たたき台(2)第2の 1⑶参照)を経ることが可能である場合には、基本的にはそのプロセスを踏 むことが、子の利益にとって望ましいとの解釈があり得る。 他方で、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができずその結果として子の利益を害するおそれがあるようなケースでは、「急迫の事情」があるとして、親権の単独行使を許容すべきであるとの解釈があり得る入学試験の結果発表後の入学手続のように一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場面や、DVや虐待からの避難が必要である場面等は、このようなケースの 1 例であると考えられる。

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