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サッカー北朝鮮女子代表監督の記者会見に関する雑感

韓国と北朝鮮に関する思い出話

 昭和50年代に空前のBCLブームがありました。SONYのスカイセンサー5900、松下電器のクーガ2200、トリオのR-300、東芝のトライエックス、日立のパディスコSLなど、家電メーカーは短波放送を受信することができるBCLラジオをこぞって発売し、当時の価格水準として非常に高価であるにもかかわらず、飛ぶように売れていました。BCLブームからアマチュア無線に関心を持つ者も増え、アマチュア無線雑誌CQやラジオや通信型受信機に関する雑誌であるラジオの製作も売れていました。
 そのような時代の中で、私も県庁所在地の大手電化店まで行ってBCLラジオを購入し、自宅に短波放送受信のための外部アンテナを設置して自分の部屋に引き込むだけでなく、波長を計算してダイポールアンテナや八木アンテナなど指向性の強いアンテナを自作したりしていました。
 そのような中で、日本で受信のしやすいモスクワ放送、韓国のKBS、朝鮮中央放送を聴く機会が増えました。特にKBSと朝鮮中央放送については受信報告書を送付する際の通信欄に書いた手紙に対して受信証明書とともに丁寧な返事をいただくというリスナーとして誇らしい実績を積むことができましたが、ひょっとしたら在日コリアンの活動家と右翼との関係性に疑念を抱いたことのみをもってリンチされるようなしばき界隈のような共同体に属していれば私は「日和見主義者」として総括されていたかもしれません。
 KBSと朝鮮中央放送の日本向けのラジオ放送を比較するのは非常に興味深く、特に朝鮮中央放送のニュース番組で「偉大な金日成主席は・・・」が枕詞になっているのは興味深く、その全体主義はもはや笑うレベルに達していたように感じていました。そして、番組の中でKBSは北朝鮮のことを「北韓」と呼び、朝鮮中央放送は韓国のことを「南朝鮮」と呼んでいました。

「北韓」の呼称に反発したサッカー北朝鮮女子代表監督

 女子サッカーのアジアカップで非常に興味深い「事件」が発生しました。

 サッカー女子のパリ五輪アジア最終予選で日本代表「なでしこジャパン」に敗れた北朝鮮代表のリ・ユイル監督が、記者会見で「北韓」という韓国内での北朝鮮の呼称を用いた韓国メディアに反発する一幕があった。試合後の会見では韓国メディアの質問を拒否した。監督ら代表一行は29日午後、羽田空港を出発し帰国の途に就いた。
 「われわれは朝鮮民主主義人民共和国のチームだ。国号を正確に言ってもらえなければ質問は受け付けない」。監督は試合前日の27日の記者会見で、韓国の放送局の質問をさえぎって「北韓」という言葉を使ったことに抗議した。(共同)

共同通信「サッカー北朝鮮代表監督、国名で反発、韓国メディアの質問拒否」

「北韓」や「南朝鮮」の呼称の意味

 サッカー北朝鮮女子代表監督が反発した理由は「日和見主義者」である私にとっては自明のことでした。北朝鮮は北朝鮮による朝鮮半島統一を前提として韓国を北朝鮮の南部として「南朝鮮」と呼び、韓国は韓国による朝鮮半島統一を前提として北朝鮮を韓国の北部として「北韓」と呼んでいますから、北朝鮮女子代表監督が「北韓」という呼称に反発するのは当然であるといえます。
 なお、レイシストをしばき隊の初期メンバーとしてカウンター活動の際に新大久保の商店との調整を行った金展克さんは、正統派の大韓民国民団であるようでXではきちんと北朝鮮を「北韓」と呼んでいましたが、中には何も考えていなかった方もいらっしゃいました。行動界隈の一派である日本を護る市民の会の代表である黒田大輔さんは、韓国を貶めようとして韓国を「南朝鮮」と呼んでいましたが、この発言によって黒田大輔さんが北朝鮮による朝鮮半島統一を夢見る北朝鮮シンパであることが明らかになりました。ただ、いくら行動界隈の一派で朝鮮半島や朝鮮民族に対する差別感情を抱いているといっても、日本の右派が韓国と連帯して共産主義思想の流布を警戒し阻止しようとしていた歴史を理解していないというのはどうかとも思ったものです。