1・ 電子帳簿保存法について
1-1 電子帳簿保存法の2つの特長
まずおおきく2つの特長をお話しておきます。
電子帳簿保存法には2つの特長があります。
ひとつめ。国税庁が管轄で、正しい税務申告をするための法令であるということ。そのため、対象の書類は税務申告に関係あるものです。
ふたつめ。他の法令(ここでは所得税・法人税)で定めるところも考慮した保存が求められ、必ずしも法令間で整合性があるとは限らないということ。
さらにいうと、電子帳簿保存法のことだけを考えてシステムや業務をデジタル化しようとすると、各法令、業法、社内規程など他の決まり事と齟齬が出てきてしまう可能性があるということです。
大事なことは、電子帳簿保存法だけではなく、他の法令(民法、印紙税法、etc…)さらには社内規程なども意識した運用が必要ということです。
1-2 電子帳簿保存法の種類ー対応すべきは「電子取引」
国税関係書類はいくつかに分類されていて、現行の保存制度は3種類です。
◆対象書類は2つあります。
1・帳簿(仕訳帳、現金出納帳など)
2・帳簿以外の書類(貸借対照表、損益計算書、注文書などの取引書類)
◆保存制度は3つあります。
1・電子帳簿等保存‐‐‐会計ソフト等で作成した帳簿や決算関係書類について
2・スキャナ保存‐‐‐紙で受領した文書をデータ化して破棄する
3・電子取引※‐‐‐書類のうち電磁的方法で授受を行う取引のこと。
2022年1月1日から施行された改正内容を見てみましょう。
1・電子帳簿保存 ⇒ 紙での保存かデータ保存かを選択できる
2・スキャナ保存 ⇒ 同上
3・電子取引 ⇒ データのまま保存することが義務化
3の電子取引保存が義務化になったことで、電子帳簿保存法の対象者が、いままで任意で電子保存をしていた一部の企業から、一気に拡大しました。ほとんどの企業・事業主で2023年12月31日までに対応必須です。
つまり対応が求められるのは「電子取引」のみです。
これ以降お話するのは電子取引保存のことを指します。
1-3「電子取引」の保存要件とは
では要件をみていきましょう。
さきほども言いましたが「電子取引」の保存要件です。
2つの要件があります。駆け足で説明します。
まずはこちらです。
可視性の要件ー対象データにアクセスできること。
①マニュアル②システムの概要書は、何らかのシステムを導入する際備わっているものです。③も標準機能でレコード検索ができます。
kintoneの場合:⇒CLEAR!
つぎに真実性の要件を詳しくみましょう。
真実性の要件ー4つのうち1つができればいい。
①②は認定タイムスタンプのことです(作成元か受領側のいずれかが付与)
③はそのシステムが改ざん/削除できないものであること(kintoneはシステム上物理的にデータや履歴の削除ができるのであてはまりません)
kintoneの場合:④事務処理規程で⇒CLEAR!
つづいて事務処理規程をみていきましょう。
事務処理規程は国税庁のサイトからダウンロードして入手できます。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
ひな形は用意されているので必要なところを埋めるだけで作成できます。
内容は訂正削除をするときの手順、管理・処理責任者を設けるというものです。これで設置OK。
その後、実際にやむを得ない訂正削除がでてきたら「取引情報訂正・削除申請書」を各責任者に提出するというながれになります。
以上、
kintoneで電子取引の保存要件を満たすには、
事務処理規程を備え付けて規程にそった運用をする
たったこれだけです。
ここまでのまとめ
●電子帳簿保存法は税務申告に必要な書類を電子化するためのもの
●電子帳簿保存法に対応するさいに、他の法令や社内規程との整合性、フローの見直しも検討する
●電子帳簿保存法で対応が必要なのは「電子取引」のみ
※2022年1月1日より施行された改正内容
●kintoneで保存要件を満たすには「事務処理規程」を備え付ける
2・kintoneアプリで電子帳簿保存法に対応
2-1 検索3項目のフィールドを作成
可視性の要件の話をおさらいします。
データにアクセスできるため、検索性が必要でした。
実際の検索とはつぎのようなものです。
これ、すべてkintoneの検索機能でできますね。
さらにブランク(入力なし)も検索できます。
3つの検索項目のフィールドを作成するだけでOKです。
2-2 具体的なアプリ例と運用方法
いくつか方法がありますが1つの例を提示します。
■保管アプリ(データ保管用)
ここには自社で作成した文書のほか、相手から受領した文書の保管も可能です。過去の紙もPDF化して保管することができます(スキャナ保存には対応しないので原本破棄はしない)
以下を設置します。
・日付・金額・取引先:3つの検索項目のフィールド
・添付フィールド
■申請アプリ(訂正削除の履歴を残す)
事務処理規程※の申請をするものです。
紙でも申請できますが、せっかくなのでkintoneアプリで運用するという内容です。アプリに関連レコードやレコードのリンクを添付しておけば、相互のデータを確認するときに重宝します。
それぞれ責任者とステータスを設置して規程にあるとおりにフローを進めていくのは、kintoneの標準機能・プロセス管理でできますね。
kintoneユーザーの中で「処理責任者」と「管理責任者」を設ける、それぞれを承認者に指定したフローを進める。ということです。
「申請」→「承認」→「訂正削除実行」→完了「報告」
このような感じです。
履歴の削除やプロセス管理の変更など、アプリの管理権限は最小限にしておく必要はあります。アプリ権限で申請者はレコード追加(+閲覧)のみ。レコード削除ができないようにするなど。
訂正削除の方法は、いくつか考えられます。
【訂正】
・保管レコードの添付データを入れ替える(訂正前データは削除)
・訂正前データも残しておきたい場合は訂正後データを追加で添付する
【削除】
・物理削除:保管レコードそのものを削除
・物理削除:保管レコードの添付ファイルのみを削除
・論理削除:見た目上は閲覧不可にして削除しているが、実レコードは削除しない(レコードのアクセス権を使用)
最後の論理削除(削除をしない)が一番安全ですが、GDPRや改正個人情報保護法の観点からするとレコード削除を求められるケースもあります。
このあたりの実際のルールは個社に応じて決めていただくことになります。
いずれも申請アプリに記録として残っているのでどの方法でも問題ありません。
まとめ
長々と解説してきましたが一言でいうと
kintoneの標準機能だけで、電子帳簿保存法(電子取引の保存)対応はできます。
少しでも皆様の疑問が解消出来たら幸いです。