見出し画像

システム開発の真の意味を教えてくれる

知って行なわざるは知らざるに同じ ー 貝原益軒

行動と当事者意識は大事!といった先人の多くの名言があります。
環境(社会)を変えられる場所にいながら行動をしないのであれば、社会への不満もグチも言う資格はありませんね!
ちなみに貝原益軒は『和俗童子論』という教育論を書いた人ですね~。


システム開発から学ぶ

私のそれぞれの関心ごとに共感いただいている方、ありがとうございます。
子どもの教育だったりkintoneだったり本だったり。
書いているテーマは毎回異なるのですが、根底は同じです。

未来を良くしたい、社会を良い方向に変えていきたい、楽しく幸せな人生を送るためにどうしたらいいか考えたい。

価値観がこれから大きく変動するであろう今の社会で、旧来からのシステムとの軋轢が生まれ、明るい未来が見えない状況があちこちにあります。
日本の、世界の社会問題は山積み…
でも。家庭、学校、会社、地域など…身近なところからなら変えることができるのでは?
少しずつ…。

社会を変えていくにはどうすればいいか?
最近読んだ本『御社にそのシステムは不要です。』より考えます。

📕御社にそのシステムは不要です。


SIerという言葉、ご存じでしょうか。
私、”スラー”って呼んでました。”エスアイアー”だそうです。
(英語圏ではSI:System Integratorって言うそうです。IT用語はムズカシイ…)
システムを統合する職のことだそうです。その会社(環境)にとって使うシステムを選定したり設定したり使えるようにするお仕事のようです。

この本の著者はkintoneまわりで老舗のSI会社といわれているジョイゾーの経営者です。kintone導入企業向けの内容かと思い、ハウツー本として読んでみることにしたのですが、どの業界でも会社でも通用する”考え方”がありました。
IT化・システム(と伴走する業者)選定のうえで欠かせない考え方・導入はどうあるべきか…といったIT導入の指南の書です。

それには次の問いが欠かせません。
・なぜIT化が必要なのか?
・会社(または私たちの生活)にITを取り入れることによって何が生まれるのか?
・私たちはITをどう使っていくのか?
これは、日常にAIが組み込まれるこれからの時代の根源的な問いでもあります。

余談ですが、私、いくつかの企業の理念に共感し行動しています。

サイボウズの「チームワークあふれる社会を創る
アドビの「心、おどる、デジタル」(社長が変わっちゃいましたね…)
ジョイゾーの「ENJOY YOUR WORLD.

それぞれ、デジタル技術が人を豊かにしてくれる未来をつくろうという意思が表れています。IT化は経営層を喜ばせるだけのものでも、会社の利益を上げるためだけのものでもなく、第一義的に大勢の人たちを豊かに(幸せに)するためのもの。つねに心の隅においておきたい理念です。

本に各章まとめがあるので、印象的なところをみていきます。

1・”野良”にさせないために…

(お世話をしないと野良になる…)

”野良”とは導入したものの使われなくなったシステムのことを指します。
なぜ野良システムが生まれるのか?
「とにかくDX!IT化を!」と言われる中、システムを導入することが目的になってしまったり、本来あったはずの”課題を解決する”という目的を見失う。その結果、せっかく導入したシステムは実用的ではなく使われなくなっていく…。

「課題解決」という首ひもが切れてしまったシステムは、”野良”になるしかない

『御社にそのシステムは不要です。』より

猫とちがってずっと飼う責任はありませんが、使われなくなった野良システムは(作った人もお金出した人も)報われませんね…。
なんのため?なにがしたい?を常に問うことです。

2・IT化でできることを考える

(代表的なWeb会議)

IT化で実現できること。3つ挙げられています。

①日々の業務のムダとムラをなくす
②リソース配置の最適化
③新たな事業や働き方を創出
(注:それぞれの詳細は本を読んでください…)

出典同

ここで重要なのは、IT化が最適解ではない場合があるということ。
ITで実現できることは全部置き換えるのではなく、アナログな方法も含めて、”相手”が納得いく便利な方法を検討すること。
”相手”は、社内の従業員だったり、取引先だったり、お客様だったり、システムにより影響を受ける人たちのことです。

思い出すのはコロナ禍での台湾の話です。
マスクが不足したときに、マスク在庫アプリを運用し薬局で購入できるシステムを作り、すばやくIT化でマスクの供給に対応しました。その後昼間購入できない人からの意見で、コンビニでも手続きできるように柔軟に対応しました。
同時に、ITに不慣れな高齢者の意見も取り入れ、別のアナログな方法も併用したとのことです。
このように、誰も取り残さず、誰もが利便を享受できる環境にすることが、社会を変えるうえで大事なのです。

そのため、いつでも「何のため?」を問いかけます

3・IT化担当者にまかせる

(とにかくやる気!)

社内にITを導入する担当者の資質としてつぎの3つが挙げられています。

①顧客目線を持っている
②IT化に取り組む熱量がある
③失敗を過度に恐れない
(注:こちらも詳しくは本を読んでください…)

出典同

ITに詳しいかどうかはおいといて、①②③だそうです。
意外だったのは①顧客目線です。
社内業務を改善したいというのがIT化の動機付けのはずです。
目線は社内に向けられていると考えていたのですが、お客様にどのような変化(メリット)があるだろうか?という視点が加わることで、課題がよりクリアに見えてくることになるのですね。

②熱量③失敗を恐れない、についてはそのとおりです。
ただし、社長(経営のトップ)が同じくらいの熱量を持っていなければ上手くいかない点は注目したいところです。
これは、以前読んだ本『拝啓 人事部長殿』でも気づいたことでした。
…独自の人事制度を取り入れている会社にインタビューした内容で、担当者が制度改革に着手したとき、経営トップがGOサインを出していたのが印象的でした。

4・IT化する前に…

いまある業務をITに置き換えるのではなく、まずは業務全体をまとめてみます。細かい業務フローを把握しておくこと、人と業務を分けてとらえることです。その際にはつぎの視点でみていきます。
現場からの視点
現場外からの視点
経営層からの視点

そして、この業務/手順は必要か?を考えます。
これ大事です。
最終的に目的が実現できるものを洗い出してIT化を進めていきます。
何のためのIT化?を意識することです。

5・IT化の進まないあるある

IT化を進める際のありがちなことが書かれています。
あー、あるあると苦笑いしながら思い当たる方も多いのでは。

◆抵抗勢力
・いまいちピンと来ていない人
 ⇒とりあえずできることから。検討よりもまずは使ってみてどうか。
・慣れたやり方を変えられたくない
 ⇒変えることによって得られるメリットを共有/納得してもらう。
・細かく管理されるのでは?
 ⇒目的を正しく伝える。「情報共有をすることで~」
・後回しでもいいのでは?
 ⇒経営層は未来への投資のため、業務改善を本気で取り組むこと。
・他に優先することあるんじゃないか?
 ⇒今はいいが未来はどうかという視点を。
・効果がわからない
 ⇒現場の反応、感想。数値化できる効果を提示。

◆利用者の視点
・余計な仕事が増えそう
 ⇒入力は簡単に。かつ便利と思ってもらえるように。
・覚えるのが大変
 ⇒最初は丁寧にフォローすることが必要。
・代わりにやってもらう、楽をしたがる
 ⇒現場に根気よく使い方を教える。
・運用を丸投げされる
 ⇒現場に使ってもらえる教育/工夫/サポートを。
・あれもこれも一気に導入する
 ⇒現場が違和感をいだかない、かつ便利を実感できる小さな変化から。

相手に寄り添う。
根気よく説明する。
情報共有をする。

これらは、IT化に限らず、社会で互いが協力して自由に生きていくためのスキルです(そして案外難しいのです)

問題や衝突が起こると、相手を非難し強制し排除しようとしがちです。
私にも思い当たることたくさんあります。嫌いになったり苦手意識のある人に対して(程度の差はあれ)このような頑なな態度をとってしまう…。
相手に合わせて同調し心にもないことを言うのは不本意だし、
嫌いや苦手を無理に好きになる必要はないと思っています。
だけど、そのまま社会で生きるには息苦しい…。

そんなときは、本や哲学が役立ちます。
例えばこちら。”信念対立”について

『お互いの信念をただぶつけ合っていたら、「どっちが正しいか」の言い争いになる。そしてそれは、どこへも行き着かない信念対立になる。でも、それぞれの信念の底にある欲望の次元にまでさかのぼり合えば、「なぁるほど、そういうことだったんだね」と一定の”共通了解”が生まれる可能性を見出せる。』
ー『子どもの頃から哲学者』苫野一徳 大和書房ー

まとめ

この本の中でなんども出てきたのが
「何のためか?をつねに考える」です。

最初は目的を持っているはずです。検討していくうちに、試用運用していくうちに状況は変化してきます。
思考を止めたら使われなくなる=野良になります。
かわいそうな野良を増やすのは避けたいですね…

マイナンバーカードを例にすると
■最初は
各部署(国/自治体)のシステム(管理番号)を改修して
(国/自治体の)業務を改善しよう
お客様(国民)の利便性を高めよう
 ⇒こういう目的…だったはず。
■途中で
あれこれ機能をつける:予算を追加投入(後戻りできない状況):複雑な仕組みになっていく:いつまでに、普及させること、が目的に
 ⇒目的を見失う
■今は
不具合や利便性の欠如:利用者の支持がないシステム(使いづらい、信用できない、メリットがわからない)
 ⇒野良になる予感?

これまで多額の予算を投じたから途中でやめられない…。野良システムの典型パターンです。
変化や不安材料の兆しが表れたときこそ、いったん立ち止まって計画の見直し(必要なら大幅に変更や中止)を行うべきです。
だれも不幸にならないように…。

◆IT化で会社が良い方向に変わる
・未来への投資ができる会社には人が集まる
(取引先、パートナー、社員、社外の人、お客様)
・会社に未来に通用する価値観が浸透する
・常に「何が必要か、不要か」という思考を持つ

そういう会社では思考を止めることなく、生き生きと働けます。
働き方が変わって楽しめる時間が増える⇒人生が充実する。
こういう人が増えたら、こういう会社が少しずつでも増えてくれば、社会も良い方向に動くのではないでしょうか。

会社をIT化する際のポイント






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?