見出し画像

【読む力】想いにつく輪郭

言葉上手は、愛情表現力の高い人

想いは、口に出さないと伝わらない。
子どもは言葉を求めたがる。
「なんで?」「どうして?」
分からないから、知りたがる。
態度と言葉が一致していればわかりやすい。
大袈裟なぐらいが伝わりやすい。

子どもの頃の私もそうだった。
母は態度に出さなかった。
ただ明るい人。
そして、言葉ベタ。

いいじゃん、学校の宿題の手紙ぐらい書いてくれたって。
「えぇ~。イヤ。」と母が言う。
なんだそれ?
私を愛していないということか?
勝手に産んでおいて。腹が立った。
もういいっ!ってほっておきたい気分だった。
でも、学校の宿題なのだ。
出さないとまずい。親から子へという手紙。
これは、修学旅行で披露されるやつだ。
まったく、学校もよくわかっていない。
世の中には、こうして子どもが苦労している家庭もあるというのに。
母親が言葉ベタのせいで。

母は、愛を言葉で表現することが苦手だった。
娘の結婚式の時ですら「手紙なんて無理。」だった。
裏でこっそり動いてくれた友だち、ごめん。
だからうちの母にはかまうなって忠告したのに……
夫の母親は息子宛てに喜んで書いてくれたというのに……
友だちが平謝りでそっと差し出した1通だけの手紙を見つめる。

うちの母の、言葉ベタは直らない。
言語化なんて、嫌いなのだ。
自分の気持ちを言葉に変換するなんて難易度が高すぎる。
まぁ、そもそも直そうなんて思わない人が大半かもしれない。

例えば、
お医者さんの説明不足。言葉ベタ。患者はモヤモヤする。
わかっているけど毎日同じ説明をしつづけてめんどいのだろう。
難しい言葉で説明するから、患者が置いてけぼりになる。

先生の説明不足。言葉ベタ。生徒はモヤモヤする。
こんな簡単な所は説明しないでいいっていう思い込みが命取り。
そこにつまずいている生徒がいる。教え方にひと工夫がいる。

母親の説明不足。言葉ベタ。子どもはモヤモヤする。
「はやく!」って言葉。その中に含まれるのはきっと気遣い。
待たせている相手への配慮。そんなの子どもにはわかりゃしない。
今のあなたの焦りを前面に押し出してくる感情言葉は言い換えよう。

お礼の手紙の説明不足。言葉ベタ。もらった相手はモヤモヤする。
この手紙の内容がないんだけど……と逆にがっかりさせてしまう。
お礼の言葉には、その人の習慣・クセ・礼節が入ってくる。
その人の人となりがにじみ出る。文章のテクニックで化粧映えさせることは可能だが、本心はごまかされないから、それだけ相手に伝わってしまう。
本当に感謝してる?

言語化は共通認識のツールだ。
言葉とは、見えない想いの部分に輪郭をつけてくれるもの。
そしてそのまま、その人との関係性の可視化になってしまう。
だから、もろ刃の剣でもある。

小さなこと、ささいなことほど、
気にかけてもらえると嬉しいものだ。
あっ、覚えていてくれたんだ。
言葉は自分の記憶と直結している。

人に嫌われるのは怖い。
誰だって、怖いもの。落ち込んでしまう。
それが嫌であえて関係性を言葉にしない人も多い。
いつのまにか、心の防衛が日常になっている人も少なくない。
態度でちょっと示して、察して?と相手に委ねる。試す。
すねている小さな子どものように。

だけど、想いに形をつけて言葉で
「ありがとう」って言われて悪い気はしないだろう。
別にっ……って照れる気持ちはあれども。
「大好き」「愛している」「ずっと一緒だよ」と好きな人に言われたら
すごく嬉しいだろう。それは、恥ずかしさを通り越して、安心になる。
「こっちにおいで」「いい子だね」「楽しいね」と共感してくれたら
自分の心を見せてもいいかもって思うだろう。
嬉しい気持ちが伝わると、心がほんわか温まる。

世の中には悪い人もいる。詐欺をする人たち。
ある意味、頭がいい。人の感情を知っている。
彼らは役者だ。優しい人は騙される。
言葉巧みなのは、愛情表現が上手になれるツールでしかない。
女性を褒める言葉がすらすら出てくる外国の方々に出会ってみるとおもしろい。レディーファーストな文化がそういう言葉を育てているらしい。
リップサービスがとても上手。
そういう文化がないと、最初はどぎまぎしてしまう。

言葉上手は、ある程度技術。でも、見極める目を育てていくと
そこに〝想い〟が宿っているかどうかがわかるようになる。
この人の言葉は本物だとわかるようになる。
それには、読むしかない。
たくさんの言葉に触れ、たくさんの人に出会うしか方法はない。
自分を磨くしか。

想いにつく輪郭。

言葉ベタ。
けれど、そこにある愛情が自分の心の中で翻訳できればそれでいい。
肝心なのは、言葉よりも〝想い〟のエネルギー。
言葉の向こうにある愛に、勝手に気づければそれでいいのかもしれない。
想いにつく輪郭を私が翻訳できれば。
モヤモヤをハッキリと。
たとえ、それが刃になって己を傷つけようとも。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?