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死を予言する子供

10年ほど前、実家へ帰省していた際に部屋にある本やおもちゃなどを断捨離していたら、本棚の一番上に置いてあったCDやMDなどが入った箱の中から古いカセットテープが出てきた。

そこには大人の手書きで

「昭和55年4月 遊び風景の記録」

と書かれてあった。これは僕が2歳の頃に4歳年上の姉と同じマンションに住む幼馴染のお兄ちゃんに連れられて、マンションの階下に住むお兄ちゃんの祖父母の家へ遊びに行った際に、お兄ちゃんのおばあちゃんがラジカセで録音したものだった。

当時、僕は②歳だったけれど、この時のことは覚えている。

折込チラシの裏に歌いながら絵を描いたり、ゲームをして遊んだ。

「懐かしいな。」

ちょっと聞いてみたくなって辺りを見渡すと、ベッドの方に父親が使っていたラジカセがあった。
そこで持っていたカセットテープをかけて聞いてみた。

オープニングにではお兄ちゃんのおばあちゃんが日付と子供たちの名前と場所を言い、「遊んでいる風景を録音します」と説明していた。


おばあちゃんは数年前に病気で亡くなった。そうしたら、残されたおじいちゃんは急に元気が無くなり、おばあちゃんが亡くなってから2ヶ月後に亡くなった。

僕はおばあちゃんのおっとりとして、優しい声を聞いていたら無性に会いたくなった。

テープからは、当時2歳の僕が覚えたての「オバケのQ太郎」のオープニングを自信をもって披露していた。けれど歌詞がめちゃくちゃだった。
確かあの時は完璧に歌い切ったと思っていたんだけど…

カセットテープを聞きながら、部屋の整理をしていたらキッチンにいる母から、「夕食の準備ができたから来なさい」と呼ぶ声がしたから、カセットテープを止めて部屋を出た。

そして食後に、お兄ちゃんのおばちゃんにカセットテープのことをメールしたら、是非聞きたいからダビングして送って欲しいという返信があった。

おばちゃんはそのカセットテープのことは知らなかったらしい。おばあちゃんやお兄ちゃんの思い出に触れられるものは欲しいはずだ!
僕はその日のうちにカセットテープをMDにダビングして、翌日におばちゃんの家に郵送した。

数日後、おばちゃんからお礼のメッセージが届いた。
亡くなったおばあちゃんの思い出やあの頃の記憶が溢れ出て涙が止まらなかったという。何度も「ありがとう」という言葉が書かれてあって、こっちも泣けてくる。

「ただ、ちょっと気になることがあるの」

突然、雰囲気が変わった内容のコメントが来た。

「気になることって何?」

緊張感を帯びたコメントに、僕は答えをせかした。

「息子が突然、おばあちゃんは◯月◯日に死ぬよ、と突然、何の脈絡もなく言い出してるんだけど…」

そんなこと言ってたかな?あの頃の記憶はあるけれど、死にまつわる話をお兄ちゃんがしていた記憶はない。カセットテープは一度も最後まで聞いたことがないから、おばちゃんの言っていることが良くわからなかった。

「そうだっけ?覚えてないなぁ。。。テープも全部聞いてないからわからないや」

そう返答した。お兄ちゃんがおばあちゃんに向かって、おばあちゃんの死ぬ日を伝えたらしい。おばあちゃんは「何を言ってるんだか。」と言って6歳の戯言を真剣に聞いていない様子だったらしい。

「でもおばあちゃんが亡くなった日は、息子があの時に言った日なのよ」

それを聞いてゾッとした。
お兄ちゃんと一緒にいると、良く不思議な体験をしていた。

このカセットテープで遊んでいる日のちょっと前には、お兄ちゃんと2人でマンションの隣にあるお寺の納骨堂へ忍び込んだら、直後に部屋に納められてあった骨壷が一斉に倒れてしまい、住職にこっぴどく怒られた。

「気のせいだよ」

とおばちゃんには返信したら、「そうだね。所詮1/365の確率なんだし」と返ってきた。それって絶対に納得できてないでしょ?と言いたかったけれど。

カセットテープはその話を聞いてからは、もっと聞くのが億劫になってしまい、今も実家に眠っている。

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