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計画的陳腐化】今日買ったものが前より劣化している理由

今日も私たちはどこかで何かを買いますが、そのすべてが10年前よりも少しだけ悪くできている。にわかに信じがたい主張に聞こえるかもかもしれませんがコンピューター、携帯、自動車、ゲーム機、ファッションに至るまで、あらゆるものは壊れやすく、破れやすく、寿命がそんなに延びていません。

いったい何が起きているのでしょう?共通点は大したアップグレードが施されているわけでもないのに毎年、新作が発表され、そのたびに多くの人々が買い求める現象。実は企業が永続的に売り上げを伸ばすマーケティング戦略に計画的陳腐化っと呼ばれるものがある。要約すればとてもシンプルな戦略です。お手持ちの商品は古いので新しいものに買い替えましょう。

その行きつく先はどこにたどり着くでしょう?人によっては財布の中身が空になります。経済によっては貧富の格差が広がり続けるでしょう。惑星によっては耐え切れずに環境を破壊することにもつながります。大量消費時代における美しき消耗品のゴミ山から抜け出す方法なんてあるのでしょうか?

①プロダクト設計プロセス

まずは基本的な儲けを出す仕組みについて話ましょう。例えば企業が新作のジャケットを売りたいとします。考慮すべき主な要素は大きくわけて3っ。
機能性:目的のためにきちんと働いてくれるか?
外見性:見た目は良い感じに見えるか?
生産性:製造するのが簡単で安くできるか?
一般的に優れた製品はこれら3つの要素がうまく組み合わさって完成している。ですが産業が飽和状態になると、この均衡が崩れます。フォーマルスーツの歴史とともにその実例を見ていきましょう。一昔前、新しいスーツが欲しなら街で唯一の仕立て屋に出向いて寸法を測り、素材を選んでオーダーメイドをしてもらっていました。それから数十年が経つと大型デーパートなどで大量生産された規格ものを買うようになり、さらに現代ではオンラインでクリックをするだけ。場所も時間も関係なく、ほぼ無限の選択肢からスーツが選べる。

経済学の基本からいえばこの段階に差し掛かると、自社製品をより多く買ってもらうためには“購入のし易さ”だけでなく“購入の頻度”まで設計しておく必要がある。つまりは飽和状態になると“どうやって買わせるのか”とともに“どれだけ買わせるか”も重要な戦略に含まれるということです。
今年購入したスーツも、来年には時代遅れの古ぼけた旧型に成り下がり糸がほつれたりボタンがダサく見えてくれば最新モデルが欲しくなる。まだ使えますし見栄えもしっかりしているにも関わらずです。結果的に私たちは狂ったように買い物をします。

環境省の調査(https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/)によれば年間約18着を購入し12着を手放し25着は1度も着られていません。顧客のライフスタイルを満たす以上に購買意欲を刺激する新しい商品を打ち出さない限り、その企業は淘汰されていく。他社は大した改良も加えてないのに新たな切り口の宣伝文句だけで同じようなものを再販売しているのですから。

企業は生産性を増すために、もっと多くの人を雇うか設備にお金をかけなきゃいけない。最もシンプルな解決策は販売価格を上げること。ですが価格は抑えておかないと消費者は買い続けることができません。そのため生産ラインを人件費の安い海外へ移したり、素材をより安価な合成素材に切り替える。長持ちさせることも修理のしやすさも二の次。だって売り上げが発生するのは買う瞬間であって使ってるときではないのですから。結果として一見すると見た目も価格も同じですが最新の劣化した商品が世の中に出回っていく。プロダクトの設計プロセスにおいて最も重要な点は消費者の購買意欲を刺激して購入サイクルを速く回すことです。

②計画的陳腐化

壊れたり古ぼけるのが早いほど新しい製品への買い替えが進みます。製品寿命を人為的に制限したり修理のコストを底上げする戦略は100年以上昔からあるマーケティング戦略です。1924年、ドイツのオスラム、オランダのフィリップス、アメリカのゼネラル・エレクトリックなど世界有数の電球メーカーが共謀し電球カルテルを結託しました。カルテルで合意された内容は「白熱電球の寿命を1000時間未満にする」この規制を確実に順守させるために監視システムが導入され、消費者には1000時間を超えると電気代が無駄になるっというデマを信じ込ませました。世界初の計画的陳腐化は大成功を収め低品質の商品から大きな利益を継続的に受け取ります。消費者には他の選択肢がなく、それを買わざる負えない状況になったのです。

時代は移り変わろうとも人間の狂った部分は変わりません。アップルのiPhoneは古い機種の動作を意図的に遅くして修理のできない特殊ネジを採用しリペアを防止、任天堂スイッチは回路基板の寿命をわざと短くしてジョイスティックの不具合が多発、どちらとも集団訴訟に敗訴しています。

このように買い替えサイクルを短くする戦略はジャンルを問わず、様々な産業でよく使われている。自動車は5年に1度、大きなモデルチェンジを行い、それまで間で細かいバージョンアップを何度も繰り返す。どこかの具合が悪くなったとしても全ては電子制御のため故障診断には専門機器が必要となり町工場やスタンドでは到底、直すことはできません。よってメーカー側から提供されるオプションに大きく依存します。

③消費者の選択

現代ほど財布のヒモに注意を払わねばならない時代はありません。SDGs、ミニマリスト、サステナブル。本来の意味合いでは資本主義と貪欲を否定するはずの言葉ですが、それらはもはや商品化されビジネスマンたちの謳い文句です。
アップルはSDGsを掲げていますが、まだ使える良好なiPhoneを2年で手放せば残債を免除する割賦販売を行っており、ミニマリストの教祖的インフルエンサーこんまり氏は自社ブランドを展開し“ときめきを刺激する”高価な商品を販売。教育系ユーチューバーの中田氏はサステナブルがコンセプトのアパレルブランドを立ち上げ“長持ちさせるため”の買い替えを促す。

彼らはより建設的にモノを大切にするライフスタイルを提案しているのは間違いありませんし、偽善者だとか批判をしたいのではありません。ただ言葉が持っている本質的な意味と行動は一致しておらず、彼らが本当のところ提案したいのはモノを大切にし続けることでもなく、モノを減らすことでもなく、モノを直すことでもない。その精神を具現化する商品を売ること。それはSDGsやミニマリスト、サステナブルが本来持っている核なる意味とは両立しません。ビジネスによって出来た歪をビジネスによって正そうとするマッチポンプです。

どんなビジネスも消費者が望むものに反応します。需要が落ち込むような戦略を企業は打ち出すことができません。よって私たちの財布は投票権のような責任を有する。どのビジネスを発展させ、どのビジネスを衰退させるか決定権を持っており、それが消費者の責任でもある。今持っているものを大切にしたり、直してまた使えるようにすることに消極的な企業の製品を私たちが買わなければ、それは変化を要求することに繋がり言動の一致した企業が世の中に増えます。自分の財布が持っている小さな小さな役割は社会システムを根本的に変えてしまう力を持っているのです。

カリフォルニア州の消防署には120年以上、光続けている電球があります。その技術はもちろん120年以上昔に作られた電球です。今度財布を開ける際には本当にそれに見合うだけの価値があるのか?いったん手を止めて電球の陰謀を思い出してください。まだ使えるものを買い替える必要が本当にあるか?意識的に購入し、長持ちさせる工夫を学びましょう。お金は限られた人生と引き換えに稼いだとても尊いもの。さらに100円を稼ぎ出すよりも節約する方が何倍も簡単なことです。

結局のところ、すべては消費者の為に作られている。では私たちは本当のところ何を望んでいるのでしょうか?

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