芹沢銈介と、新しい日々:2 /東京国立近代美術館
(承前)
型染カレンダーで埋め尽くされた壁の向こう側には、染色の作品が。
まずは、文字をモチーフとした作。
意匠化された文字は、無味乾燥な記号と化すのではなく、もとの意味を醸しながら、作品全体に大きく関わっている。
職人の工房や、暮らしと仕事が結びついた村々のようすといった「ものづくりの現場」を、意匠に起こしたシリーズ。
沖縄の壺屋焼、栃木の益子焼、宮城の堤焼など、やきものづくりを描いた作をよくみかけるが、出品作のモチーフは、紙づくりの現場だ。
沖縄の紅型をベースとした作風ではあるけれど、描かれる風景は上質な和紙の産地・埼玉の小川町に取材したものという。
谷あいを川が流れ、そのまわりに田畑や集落が形成される……そんな、東武線の車窓からみえた小川町の景色が思い出された。
ものづくりの情景を連続した文様にしようだなんて、芹沢以前には誰も着想できなかっただろう。
まさに、工人たちをあたたかく見守る、敬意のこもった眼差しのなせるわざと思われる。
《芭蕉布地型絵染柳文夏がけ》(1960年)は、芭蕉布を手にとった質感を思い出しながら鑑賞した。
行ごとに反転を繰り返していく柳の木、またその葉っぱがとてもリズミカルで、涼を感じさせる。
「夏がけ」というのも、またよい。冬だからこそ、夏の夜が恋しくなる向きもあるのだろうか……夏になったら、もう一度観てみたい作品である。
他にも、型染による絵本、装幀、筆で描かれた絵画などを展示。
——型染カレンダーを主体にしながら、芹沢の広範な仕事の要所要所を押さえた好企画。もちろん、コレクション展の他の企画を一緒に観ることができるし、金・土曜には夜間開館もある。おすすめしたい。
4月7日まで。
※《椅子とかまきり》の椅子、やけに見覚えがあるなと思ったら……わが家の椅子そっくりだった。
古めの松本民藝家具と聞いているが、あるいは、芹沢が描いたものと同手品なのかもしれない。
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