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日本でチップの文化を広めるには?

少し前の話なんですが、Twitterを眺めていたらこんな投稿が流れてきました。


実は私、今の店で働き始めてすごく驚いたのが、チップを置いていってくださるお客さまが非常に多いことでした。

金額は人によってそれぞれで「お釣りはいいから」と数十円、タバコを買いに行った手間賃として数百円、年の瀬のゲン担ぎとして1000円〜2000円。あとは、酔った勢いでとか、出産のお祝いにとかで、ときに万を超える額をいただいたこともあります。

このチップ、少額でも仮に貯めておくとしたらそれなりにまとまった金額になりますし、何よりその気持ちが嬉しいんですよね。仕事の励みにもなりますし、スタッフたちのモチベーションも上がります。

国によっては習慣的に行われているチップの文化、日本でももっと広まればいいのに!と思ったので、どうすればいいのか考えてみました。



かつては日本でも、タクシー運転手やゴルフのキャディーにほんの気持ちとして、あるいはより良いサービスを期待して旅館の仲井に前もって包んでおく、という習慣がわりと一般的にあったそうです。もちろん、飲食店スタッフに渡されることもあったそうで。

しかしこの習慣、平成の頃にはすっかり廃れてしまっていて、今でもなお日常的に行なっているのは、一部の気前のいい高齢者ぐらいなものです。

一体なぜチップは廃れてしまったのでしょうか。ここを解きほぐせば答えが見えてくるような気がします。


現代のお金の使い方はチップの文化と相性がいい

理由のひとつは、単純に不景気になってしまったからだと思います。

30年ほど前のバブルのころって、本当に日本中が好景気に沸いてたそうです。

タクシーがなかなか捕まらなくて、数千円で行ける場所なのに一万円を頭の上でヒラヒラさせて「これで乗せてくれ〜(お釣りはチップ!!)」とお願いしたなんて話を聞いたときは冗談かと思いましたが、そういうことはわんさかあったそう。

決して、一部のお金持ちの話じゃないそうですよ!日本人の多くが裕福で、お金をどんどん使える余裕があった。羨ましいです。


しかしバブルの崩壊で世の中はいっきに不景気になり、人々はどんどん安くてお得なものに流れていきました。

当時のチップを払う行為って、どこか格好をつけたり見栄を張ったり、主導権を握りたいなんて思惑を持った人も少なくなかったわけなんですが、それどころじゃなくなった人も数多くいたことでしょう。

そういうわけで、チップを払う余裕のある人なんて、世の中のほんのひと握りになってしまったのです。


ただ、以前と比べて人々の消費に対する意識はガラッと変わっています

モノよりも思い出や経験を重ねたいだとか、自分の好きを大事にしたい、応援したい、という熱が高まっていますよね。こうした意識はチップの文化とすごく相性が良さそうです。


ややこしい・めんどくさい・恥ずかしいの壁

チップが廃れた理由のふたつ目はおそらく、ややこしい、めんどくさいからです。

チップの文化がある国へ行ったことがある人は知っているかと思うんですが、こういう場面ではいくら、こういう人にはいくらと、相手や受けたサービスによって相場が決まっていますよね。

そして慣れていない旅行者にとっては、それを覚えたり計算したりするのって非常に面倒です。

一年半ほど前にアメリカへ行ったときだって、タクシーに乗るとき、ホテルについて荷物を運んでもらうときや頼みごとをするときに、どんなタイミングでいくら払おうかと考えるのはけっこうなストレスでした。


日本も同じで、チップや心づけの金額や、渡すタイミング、渡し方などは、一応マナーとして決まっています。

基本的に硬貨を渡すのは失礼に当たりますし、旅館のような場所だと何かに包んで渡すのが常識。

でも飲食店に行って「(数百円の)お釣りは取っといて」と言うのはアリで、わざわざ包んで渡すようなことはしないですから、やっぱりこうした習慣に馴染みがない人にとってはややこしいですよね。

こんなにめんどくさいチップ文化を新たに習慣にしようなんて、マメな国民性である日本人だっておそらく難しい。もう一度根付かせるなら、もっと単純でないといけないと思います。



もうひとつ付け加えると、お店の人に「お釣りいらないです」とか「これほんの気持ちなんで」と伝えるのって、恥ずかしくないですか?

私の旦那は17歳年上なんですけど、飲食店に入ったときやタクシーに乗ったときに、気分がいいと少額ですがよくチップを渡すんです。

それをみていて「私もいつか!」と思ってはいたものの、いざとなるとすごく気恥ずかしいんですよね。

しかも相手が年上だった場合、なんとなく失礼な気もする。もっと気軽に気持ちを伝えられる手段であってほしいです。


現代人には "仲介者" が必要なんだと思う

ではどうすればチップの文化を広められるのだろうと考えたときに、私がまず思いついたのが、QRコード決済です。

今って現金を持ち歩かない人が多いです。

そしてこの先キャッシュレス決済が進めば進むほど、従来のチップの文化はまずます消えていくことになるでしょう。わざわざいつ訪れるかわからないチップを渡す機会に備えて現金を持ち歩くなんて、面倒すぎますから。


とある神社では、賽銭箱を置く代わりにこのQRコード決済を利用しているそうです。飲食店だったらテーブルやカウンターの各席に掲示しておくのが良さそう。

で、客はそのお店やサービスを気に入ったら、好きな金額を好きなタイミングでチップとして支払うことができると。

これなら、ややこしくもめんどくさくも、恥ずかしくもないですし、恩着せがましくならずに済みます。言葉を交わさず応援できると思うと、個人的にはやりやすいです。


ただ問題は、これだと店側から「チップをください」と言っているようなもの。

日本でいうところのチップって、サービスの対価というより感謝やお礼の意味合いが強いですから、店側からお願いするのはやや無粋です。

そこで改めて考えたのは、仲介者があいだに入って背中を押す。つまり、決済会社がチップの橋渡し役になるのはどうだろうかと思いました。


ウーバーイーツが昨年の夏頃だったかに、客が料理を注文する際に、オンライン決済ついでに100円のチップを店舗に支払える、というサービスを提供していました。現在は店舗でなく配達員へチップが支払えるようになっているそうです。

この仕組みは便利だなと思いました。

たとえばQR決済なら手元のアプリで、カード決済なら端末で「このお店にチップを支払う」みたいな表示をタップすると、支払いのついでにチップを渡せるとか。

これなら飲食店に限らず、旅館でもコンビニでも、どこでも気軽にチップが渡せてしまえます。


アメリカのレストランなどでは、カードで支払いをするときに同時にチップの金額を指定してまとめて決済できるようになっているんですが、これと同じようなものです。

あちらはチップを支払うことがマナーであり常識なので、表示の仕方には少々強制感があります。

日本ならもっと「良かったら任意でお店を応援しませんか?」っていう雰囲気で表示してもらえれば良いんじゃないかと。


このような仕組みができたら、日本でも好きなお店にチップを渡そうと考える人が増えてくる気がします。noteのサポート機能みたいな感覚でポチッと気軽に。

どこか決済代行会社さん、こういうサービスをはじめてくれないでしょうか。

イチ飲食店経営の立場としても大歓迎ですし、消費者としても、これならどんどん利用したいと思うのですが...!


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