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長時間労働をしない自営業オーナーは、働く時間をまず決めている

*note公式にご紹介いただいたのでいちど全文無料にします。


夫と飲食店経営をしている私はここ数年、どこまでも間伸びする労働時間をいいかげんなんとかしたくて、時短に成功しているさまざまな事例を調べてきました。

その中でひとつ気づいたのは、うまくいっている人は、働く時間を短くするにはどうしたらいいか、と考えるのではなく、仕事の時間を先に決めてしまって、その枠の中で生産性を上げるにはどうしたらいいかを考えている、ということでした。

今日は国内外の例などを参考にしながら、先に仕事の時間を決めてしまう働き方が、自営業、とりわけサービス業でも現実的に可能なのかを考えてみたいと思います。



自営業はなぜ長時間労働に陥るのか

時間の融通が効きやすい自営業ですが、案外、気をつけていないと長時間労働に陥りやすい仕事でもあります。


厚生労働省の調査によると、自営業を営んでいる人は、そのおよそ3割が1日の労働時間を10時間以上に設定しており、約70%の人が週に50時間以上働いているそうです。

同省が定めている法定では、1日の労働は8時間、1週間で40時間以内とされているので(もちろん自営業には適用されない)、大幅に超えていることになります。

自営業には主な業務(販売や営業、製造など)以外にも、銀行に行ったり事務作業をしたりなど細々とした仕事が日々山積していますよね。

雑用を頼むためだけにスタッフを雇い入れる余裕のある事業者ばかりではないので、多くの人は自分ひとりか、家族の協力など最小人数でこなそうとします。

職場にいればやることなんて際限がないので、労働時間はどんどん伸びていく。

それがけっきょく「通常の仕事時間」として当たり前に設定されてしまっているのでしょう。うちはそうでした。

何時間働こうが自由な自営業だからこそ、かえってどこまでも間伸びしてしまうのです。



労働時間を制限することと、生産性の関係

ここで海外の事例を見てみます。

生産性を上げるための方法についてネットや書籍で盛んに発信している、起業家のバーナビー・ラッシュブルックは、週の労働時間を35時間と決めてしまっているのだそう。

イギリスでも週の労働時間は40時間が基本だそうなので、それより少し短いです。週5日勤務だとすると、一日約7時間。

彼が言うに、かつては週の労働時間が100時間を超えていたにもかかわらず、働いても働いても全く成果が上がらなかったそうですが、今の働き方に変えてからは業績もプライベートも劇的に改善されたのだと言います。

こうした発見を踏まえ、私は仕事の仕方を完全に変えた。かつては1週間あたり100時間あった勤務時間を、35時間にとどめることを自分に課したのだ。今の私は以前よりも幸福で健康だ。3人の幼い子どもたちと過ごす時間もたっぷりとれる。しかも、会社は絶好調だ。

週100時間労働を35時間に減らして売上10倍。生産性を劇的に高めたCEOが明かす5つの秘訣

うまくいっているのは彼が優秀だからでは?と思う人もいると思います。

たしかに彼は単に働く時間を短くしただけではなく、

・優先順位をつける
・人に任せる
・スケジュール遵守
・自分の生産性がいい時間帯を把握する
・メールや通知など無駄な情報を遠ざける

など、ビジネスの基本のキを守り抜く努力をしています。簡単そうに見えて、案外徹底するのは難しいはずです。

しかし彼のような意思の強い経営者でなくても、生産性を落とさずに労働時間のみを減らすことができたという実験結果は出ています。

アイスランドで行なわれたのは、試験的に労働者の週の労働時間を4〜5時間ほど減らしてみる社会実験。もちろん給料は変わりません。

するとどうなったかというと、生産性はおおむね維持、または向上し、労働者のストレスや幸福感は大きく改善したという結果が出たのです。


国民一人あたりの労働生産性ランキング12位のドイツでは、1日の労働時間は原則8時間までと決められ、一日10時間を超える労働は「禁止」されています。

やはり、労働時間を決めてしまうことと生産性には何らかの関係性がありそうです。



サービス業にも適用できるか

ただ気になるのは、オフィスワークではうまくいくのかもしれませんが、飲食などのサービス業にもこのまま当てはまるのかということです。仕事の性質の違いを考えると少し疑問が残ります。

なにせサービス業とは人手があって初めて成り立つ商売。何よりも重くのしかかるのが人件費です。

ここをむやみに減らしてしまうと、サービスの質が落ちて顧客離れを引き起こします。

数ある業種の中でも、特にサービス業が生産性が悪いと言われるゆえんです。


それにいくら働き手の仕事が早く効率的でも、時間内に想定した人数のお客さまが来てくれなければ売り上げが上がらないどころか人件費や光熱費などの費用がかさむばかり。

小売りにしろ、飲食店にしろ、なるべく長い時間営業しなければ利益が立たないというのがこの業種のセオリーなのです。

そう考えると、一般的なオフィスワークの成功事例を単純に当てはめるのは難しそう…。


とはいえ、考え方のヒントには十分なるなと思いました。

多くのサービス業では、1日○万円上げるためには何時間店を開けないといけないと考えるでしょう。

しかしこれを、一日○時間で○万円あげるにはどうしたらいいだろうかと考える。

時間と売り上げに制限をかけたほうが、かえって選択肢が狭まり、案外思いも寄らない働き方のアイディアが生まれる可能性があるような気はします。



ランチだけでやっていける店を目指して

実は今うちの店、以前にも書いたようにお昼の営業だけで運営していくことを模索しているんです。


で、まず考えたのは、決まった時間の中で何をしようではなく、何をやめようか、でした。

これまでの労働時間は夫で13〜15時間、私が10時間ほど。

これを日中の8時間に短縮させるためには、仕込みや雑務など、今までと同じだけの仕事量をこなすことはできません。

すると、準備に時間のかかるメニューはやめようとか、レジ計算をしないでいい方向で考えようなどという考えが浮かびます。

無駄なこと、効率の悪いことを徹底的に精査し始めるのです。


時間という枠を先に決めてしまうとで、やれることも限られてきます。

短い時間で目標とする売り上げを上げるには、単価をあげるか客数を増やすしかありません。

どちらを選ぶにしても、席数が限られている飲食店は売上の天井がある商売です。

しかしコロナをきっかけに、デリバリーやテイクアウトをはじめ、来店以外で売上をあげる方法がたくさん登場しました。

よくわからないからやりたくない、覚えるのがめんどくさい、などとしのごの言ってられません。

時間が限られているのですから、ひたすら売上をあげるための方法を考えるしかないのです。

うちの場合はほんとシンプルなんですが、

・IT化(DX化)を進め、
・原材料の高騰に合わせてメニュー価格を上げ、
・しかしメニュー数は半分以下に絞り(仕込み時間の削減)、
・複数の経路から注文を受ける(客数アップ)、

という道を選びました。

人を雇うことも考えましたが、今のところ、人手がなくても店を回せる仕組みを作る方向に進んでいく予定です。



国内にもこんな事例が

他店のアイディアも少し紹介します。

京都の佰食屋さんは、限定100食・ランチのみという希少性を打ち出し、短い時間の中で一挙に売りあげる方法を取っています。

売り切れたら営業を終え、早々と帰宅することができます。

「捨てないパン屋」で有名なブーランジェリー・ドリアンさんは、パンのメニューを4種類に絞る代わりに、最高品質の材料を使って付加価値を作り、他店と差別化。

パン職人である夫の仕事は午前中で終わり。午後は妻が一人で店に立ち、6時間だけ営業しておしまい。

しかも店を開けるのは週末の木金土だけで、あとは通販業務をこなし、夏には2ヶ月の休暇を取るそう(現在お店の営業は数ヶ月に一回だそうです)。

働き方、理想的すぎです!


このようにオフィスワークだけでなくサービス業でも、◯時間しか働かない!と制限をかけてしまうことで効率よく仕事をすることは可能なのかな、と考えました。

ほかにもこんな事例があるよ!とか、時短のアイディアなどがあればぜひ教えてください。

ではまた次回☆


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