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新生活へ「出発進行」するあなたへのエール

春といえば、別れと出会いの季節。
とりわけ卒業を迎えた学生の皆さんは、学びや友人と離れる寂しさ、新生活への不安や期待など、さまざまな思いが胸の内に交錯することでしょう。

私、「ぶらっくま」は、最後に学校を卒業した日からも四半世紀がたち、当時の感情を思い起こすのは難しいですが…。それでも、街角ではかま姿の若者や、卒業証書の筒を手にした学生を見かけると、声には出しませんが、「おめでとう。頑張って」と祝福、応援したくなります。

そうした思いを抱く人は少なくないようで、先日の神戸新聞にはこんな記事がありました。

花びら形用紙にメッセージ

JR加古川駅通路に設置されたメッセージ板「桜のエール」

 就職や進学など人生の門出を迎える人たちを応援するメッセージ板「桜のエール」が、JR加古川駅(兵庫県加古川市)通路に設置されている。桜の花びら形の用紙に書いて箱に入れれば、駅員が貼り付けてくれる。「成長することをあきらめなければ、必ず道は見える」など、若者らを勇気づける言葉が並ぶ。
 3月1日から掲示板を設置して募集を始めたところ、予想を超える数のメッセージが寄せられた。既に三つの「桜の木」はいずれも〝満開〟。もう一つ追加することも考えている。
 3月前半は受験生を励ますメッセージが多く見られた。ほかにも「荒波に負けるな」「無理せず自分らしく」「つらいこと、嫌なこともあるけど、希望を持ってくじけないで」など心温まる言葉が並ぶ。ある高校生は「毎日を一生懸命生きている皆さん、一緒に頑張りましょう」と寄せた。
 4月9日までメッセージを募集。掲示は16日まで。

(2023年3月19日付神戸新聞朝刊より抜粋)

メッセージを寄せた人の温かい気持ちまで伝わり、門出を迎える人でなくても、読むと元気をもらえそうです。

JR加古川駅のこの取り組み、今回が初めてではないんです。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で断念したそうですが、最初に企画したのは2021年春。担当したのは、ある若手駅員でした。

新社会人、新入生へのメッセージが書かれた黒板=2021年4月、JR加古川駅

 「つらい経験はいつか人生の糧になります」―。JR加古川駅コンコースに置かれた黒板に、今春就職、進学した人たちへのメッセージが掲示されている。書いたのは入社2年目の男性駅係員。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた1年前、大学の卒業式や入社式がなくなり、不安を抱えたまま社会人となった。まだまだ収束は見通せない。だからこそ、同じ境遇の人たちを励ましたい。そんな思いを込めた。
 この男性駅係員は、同駅で改札や窓口業務を担当。仙台市の大学を卒業し、昨年4月に入社した。メッセージは、卒業式や入社式がなくなったことに触れ、「恥ずかしながら学生気分が抜けないまま社会人になり1年がちました」と振り返る。卒業旅行も諦め、入社後の研修は中断し、顔が分からない同期社員もいる。今年も状況は好転しておらず、「悔しい思いをした方も多いと思います」と寄り添う。
 白色のチョークで書いた言葉は、仕事に対する前向きな思いへと続く。コロナ禍でも利用客が快適に通勤通学できる駅、自身のように新天地に移った人たちにとっては「気持ちよく帰ってていただける駅」を目指す決意をつづった。
 黒板のそばには、「新生活応援メッセージ」約300点も掲示。桜の花びらをかたどった紙に3月、利用客らにしたためてもらったという。

(2021年4月16日付神戸新聞朝刊より抜粋)

「大雨・大雪により、ご不便をおかけした日もありました」

地元高校の卒業生へのメッセージが書かれたホワイトボード=2017年2月、JR福崎駅

皆さんもこの春、お近くの駅でこうした卒業生へのメッセージを目にされたかもしれません。神戸新聞にも過去、兵庫県内各地での同様の話題が何度か掲載されました。私が印象に残った記事を一つ、ご紹介します。

 ご不便をおかけした日もありました―。地元高校の卒業式に合わせて、JR播但線福崎駅(兵庫県福崎町福田)のホワイトボードに駅員が書いたメッセージが、インターネット上で話題になっている。「町民として誇らしい」「ええことするやん」。会員制交流サイト(SNS)には共感の声が相次いでいる。
 「駅でアイスやジュースを買い、友達と楽しく談笑した日」「部活を頑張り、薄暗い中を赤い列車で帰った日」…。高校時代に同線で通学した経験のある男性駅員が、生徒たちが利用した駅の風景を生き生きと描写。「様々な道を進んでゆく皆様の顔に数多くの笑顔があることを」と激励のメッセージもつづった。
 福崎高校3年の女子生徒(18)はボードを眺め、「乗り遅れそうなときの全力疾走、車内での試験勉強、いろいろ思い出した」と感慨深そうに話した。

(2017年3月1日付神戸新聞朝刊より抜粋)

駅員さんの情景描写に加え、記事末尾の生徒さんのコメントもいいですね。何でもない毎日が、本当はかけがえのない〝記念日〟だった青春時代を思い出させてくれます。

最後にもう一つだけ過去記事のご紹介を。こちらはスケールが大きいです。

電車丸ごと〝祝電〟に

卒業を祝い在校生らがデザインしたヘッドマーク=2022年2月、能勢電鉄山下駅

 能勢電鉄(兵庫県川西市)は2月25日、間もなく卒業を迎える沿線の中高生に向け、車体に感謝と激励を詰め込んだ「卒業列車『祝電』」の運行を始めた。
 兵庫県の川西市と猪名川町の5校の在校生がデザインし、ヘッドマークや中づり広告が卒業生への励まし一色に。4両編成で、先頭から川西北陵高▽猪名川高、こやの里特別支援学校分教室▽川西緑台高▽川西市立東谷中―のメッセージで彩られる。車内の中づり(計24枚)やドア上部の広告板を全て活用。「夢は近づくと目標に変わる」「七転八起」などの格言も寄せた。能勢電鉄の車体には、最近では珍しくなったという「小旗受け」があり、各校の校章をデザインした小旗も掲示している。
 「祝電」の企画は新型コロナウイルス禍の昨年、同社社員の提案で始まった。行事の中止が相次ぎ、電車を使う客も減ったが「通学で利用されている学生さんの明るさに社員も励まされた」といい、「若い皆さんが明るい未来を踏み出せますように」と担当者。

(2022年2月26日付神戸新聞朝刊より抜粋)
「祝電」の車内には在校生らが寄せたメッセージを掲示=2022年2月

この「祝電」は今年も運行中で、3月31日までの予定。お祝いの言葉と、旅立ちを応援する思いを乗せて走ります。

<ぶらっくま>
1999年入社。神戸出身。この記事を編集しながら、懐かしい歌のフレーズが頭に流れました。

話しかけるように ゆれる柳の下を
通った道さえ今はもう 電車から見るだけ
(荒井由実「卒業写真」)

私の高校の通学路付近にも柳の木がありました。今は電車から見ることさえありませんが。久しぶりに行ってみようかな。