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【長田区地域づくり活動助成】「親ガチャ」への挑戦。学習支援塾から長田区の教育を変える!

【団体名】みんラボながた

 今回は、毎週3回無料で中学3年生に学習支援塾を運営している、みんラボながたの宮﨑仁史さんにお話しを聞かせていただきました。活動をはじめたきっかけや、学習支援を中心とした理想のコミュニティ形成などを教えていただきました。

【「『親ガチャ』への挑戦」にかける想いとは】
-記者-
まず活動を始めようと思ったきっかけを教えていただけますか?

-宮﨑さん-
中学校の教員をしているときから、塾に通う生徒とそうでない生徒の学力の差が激しく、授業についていけない子どもたちが多いことを感じていました。教員時代も、学校の勉強についていけない生徒たちに勉強する時間をつくっていましたが、退職した後はより専門的に学力格差、そして経済格差の解消を目指した活動をしたいと思い始めました。

-記者-
学力格差に対してどのような想いをもって活動されていますか?

-宮﨑さん-
生まれた家庭環境でその子供の将来が決まるようなことを、近年「親ガチャ」と言うようになりました。私はあまりいい表現だとは思わないのですが、2021年の新語流行語で話題になりましたね。そのような「親ガチャ」と呼ばれる環境を打破したいと思っています。そのためには、学力をつけることが一番です。学力をつけることで自立への道が開けると考えています。学力が低い子は自尊感情が低くなり、自分は能力が低い人間だという感覚になってしまいます。しかし勉強ができるようになることで、その成功体験を通じて自尊感情が育ちます。そして様々なことに挑戦する自信が生まれ、自分が暮らしている環境の打破を目指すことができます。
そういった意味で、みんラボながたの活動は「『親ガチャ』への挑戦」と言えるかもしれません。本来は「『親ガチャ』の解消」を目指したいですが、今はまだ「挑戦」という言葉になると思います。とにかく、そういった「挑戦」が色々な学校の校区に広がっていったらいいなと思っています。

【苦労とやりがい】
-記者-
活動するにあたって大変なことは何ですか?

-宮﨑さん-
会場と指導員そして資金を確保することが大変でした。資金がなければ指導者も集まらないし、資金と指導者がいても場所がないと活動できない。最初は自己負担で活動を始めました。現在はこの活動も1年以上続き、賛同していただける団体や自治体からの補助金を活用して運営できるようになりました。しかし、持続可能な資金の調達はできていない状態で、正直自転車操業のような感じです。

-記者-
苦労する面がある一方で、やりがいを感じる瞬間はありますか?

-宮﨑さん-
それはもちろん塾生徒がテストでいい成績をとってくること。また、生徒が第一希望の高校を受験できる成績になることです。定期テストの点数が10点20点と伸びていくと、生徒たちの学習意欲が明らに高くなっていきます。それを見ていると指導者にとってもやりがいと使命感が生まれますね。

-記者-
他に何か印象的だったことはありますか?

-宮﨑さん-
一番勉強が苦手だった生徒が、飛躍的に学力が伸びたことです。その生徒と話をすると「自分は勉強できたんや!」というような感想が返ってきました。他にも今まで取っていた点数の2,3倍の点数を取れるようになる子もいます。点数が悪いことが当たり前だと思っていた自分が、点数が取れるようになったことが何よりも嬉しいみたいです。このような生徒の笑顔は印象的ですね。週3回実施することで、勉強が習慣化され勉強をしたいという意識が生まれているのだと思います。その意識の結果が、成績の向上につながっているのではないでしょうか。

【「学習支援×コミュニティ形成」で社会を変える】
-記者-
理想のみんラボながたの姿を教えていただけますか?

-宮﨑さん-
各中学校でみんラボを運営したいです。長田区内で、区内中学校区に学習支援組織を立ち上げて運営できればと思っています。
そして今通っている生徒たちの後輩や、これからの将来を担う子どもたちの勉強を支援し、長田区全体の学力を底上げしたいです。そして、ここで勉強していた子たちが、指導者としてここへ戻ってくるということが理想です。
教育は再構成されるもので、悪くなればどんどん悪くなります。しかし、良い流れが起きるとさらに良い方向に向かっていきます。悪い習慣を教えられた子どもたちは悪い習慣をその次の代に教えてしまいます。そこで、良い習慣を身に付け、次の世代に良いことを教えていくという「正のスパイラル」を、このみんラボながたで生んでいきたいですね。

-記者-
「長田区内で、中学校区内で成立させる」ことが理想だと考える理由はなんでしょうか?

-宮﨑さん-
文科省は学校の働き方改革で部活動や学校業務の一部を地域に委ねることを推進しています。しかし私は、「地域って一体何を指しているの?」と思います。PTA活動の存続すら難しいような今日の状況で、地域の誰がこれを実践するのでしょうか。
このような状況の中で鍵となるのが、「地域の核となる組織」だと考えています。
今国が求めている教育も行政も、昭和のコミュニティづくりを目指しているように私は思います。私は幼稚園から高校卒業まで長田区で過ごしました。地域の盆踊りや地蔵盆、祭りや子ども会のキャンプなどがあり、夜に家に帰っていない子どもがいたら、広報車でアナウンスして町中の大人が捜索したような時代を過ごしてきたのです。このような地域コミュニティを今の国や行政は目指しているのではないでしょうか。
このようなコミュニティは、先ほど述べた「地域の核となる組織」によって形成されていくと思います。ミッションを持った一つの活動が立ち上がれば、その活動が認知されていき、その活動に協力するように地域コミュニティが形成されていくのではないでしょうか。

-記者-
例えばどのような活動でしょうか。

-宮﨑さん-
例えば、勉強をする集まりが中心にあって、次に勉強している子たちに月に1回ご飯を提供してあげようと言って、子ども食堂と協働したり、新たに子ども食堂が立ち上がったりします。このような形で広がっていくコミュニティが出来ることを願っています。

-記者-
地域コミュニティの核のような存在に、みんラボながたはなりたいということでしょうか?

-宮﨑さん-
そうです。まず勉強を教えてもらう集合があり、そこから色々な形で広がって組織になれればと思います。部活動や学校業務の一部を地域の誰が実践するのか、という課題に戻るのですが、私は活動を始めるのは地域住民でなくてもいいと考えています。私たちのような団体が「地域の核となる組織」として活動をリードしていくことで、地域住民の協力のハードルが下がり、具体的な協力がしやすくなります。自治体や行政のバックアップを得ながら、地域住民と学校、運営団体、区役所が協働していくことで、地域コミュニティが完成するのだと思います。

-記者-
最後に、長田区が将来どのようになって欲しいとお考えでしょうか?

-宮﨑さん-
長田区は地域のつながりが強いので、1つの中学校で学習支援を完結させることができると思っています。つまり中学校の教室を開放してもらい、そこで学習支援教室を開き、指導者はその中学校を卒業生した大学生に依頼します。また私のような教員OBには運営をお願いします。その学校にゆかりのある先生ならもっといいと思いますね。私は母校である中学校で実践したいとも思っていますから。
このような実践を長田区から始めて、教育の形を少しずつ変えていくことが出来ればと考えています。学習支援で学力が伸びた、区全体の学力が向上したというロールモデルを長田区で作っていきたいです。
学習支援を通して学力を底上げしていくことは、自分たちが過ごしている地域の環境改善への視点を育てることにも繋がります。このような活動を継続することで、未来の世代が地域活動に感謝し、地域に貢献する人材となり持続可能な地域コミュティが生まれていくと思うのです。
長田区には6つの中学校が存在します。コンパクトな地域であるからこそ、長田区全体で協働することが可能だと思っています。「教育」「福祉」「地域」「行政」が一体となり「教育の街 長田区」を目指し、全国に発信したいです。

-記者-
ありがとうございました。