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【長田区地域づくり活動助成】長田の子ども達へ届けたい!無声映画から得られる魅力

【団体名】神戸映像アーカイブ実行委員会

 今回は、映画を通して地域の生活文化の向上と振興を目指す神戸映像アーカイブ実行委員会のおふたり、委員長の金千秋さん、事務局長の田中範子さんにお話しを聞かせていただきました。
今年度初めて、子ども向けの映画会を長田で開催した経緯、総合芸術を伝える大切さ、心の豊かさのために必要なことなどを教えていただきました。

【地域に根差した活動の原点とは】
ー記者ー
まずこの団体を立ち上げたきっかけを教えていただけますか。

ー田中さんー
当時のことは、私から。神戸映画資料館が2007年に開館し、2009年から映画祭を始めたんです。でも地域に根付いた活動をしたほうがいいね、ということで、地域の人にご協力をいただいて、実行委員会を立ち上げることになったんです。

ー記者ー
どのように団体を作られましたか。

ー田中さんー
鉄人プロジェクトの方に相談に乗っていただき、地域の方をご紹介いただきました。その後、当時の委員長が退職されるタイミングで、金さんに委員長をお願いしました。

ー記者ー
委員長って大変だと思われなかったんですか。

ー金さんー
当時委員だったということと、ジェンダーバランスも考えて引き受けたんです。

ー田中さんー
委員長と事務局長は女性が、という感じですね(笑)

ー記者ー
地域に目を向けられた理由を教えていただけますか。

ー田中さんー
映画資料館がちょっとマニアックといいますか、専門的な人よりで・・・地域にとっては縁遠い活動になっていたので、地域の方に映画や芸術を知ってもらいたいと思いました。

ー記者ー
どのように地域に出られたのでしょうか。

ー田中さんー
まちのにぎわいにわたしたちが持つ映画資料や専門知識を使ってくださいと言っても、地域の需要とうまくマッチングしなかったんです。簡単なことではないなと思いました。逆にこちらからこんなことをしたいんですけど、助けてください、と地域にお願いすることで距離が近づきました。

ー金さんー
震災から落ち着きを取り戻してきて、専門性を提供するのではなく、コラボするというやり方を変えていったこと、いろんなイベントをやり続けること、自分のやりたいことがマッチングしだしたんじゃないかな。地域の方が認めていただける時間が必要だったなと思います。

【キッズ映画会in新長田の開催へ】
ー記者ー
今年度キッズ映画会を開催したいとなったきっかけは何だったのでしょうか。

ー田中さんー
きっかけは「野外上映会したいな」という委員のひと言から始まったんです。

ー金さんー
震災直後、長田区役所で鉄人の映画を上映していたことがあるんです。夜、子どもが大人と一緒に外に映画を見に来るというとてもいい雰囲気がありました。

ー記者ー
何を子どもに届けたい、伝えたいと思われたんですか。

ー田中さんー
無声映画って字が読めなくても画を見て楽しめるんですよね。長田の子たちにも体験してもらいたいなと思ったんです。

ー金さんー
ジェスチャーだけじゃないですか、物語や意味を超えるもの、というのは子どもの方がいろんな反応を示すんですよね。あと、長田には外国籍の児童もいるし、保護者も一緒に見られたらいいな、言葉を超えた交流もできたらいいなという想いがあります。なので、小学校でもできないかなと思っています。

ー記者ー
11月の野外映画会もとてもたくさんの方がこられたと聞きました。

ー田中さんー
とても寒い日だったのに、総勢130人も来てくれてびっくりしました。

ー金さんー
ふたば学舎は元学校なので、校庭で実施したのはとても良かったんです。休憩の間はブランコ乗っていたり、昔の公園でやっていた紙芝居の雰囲気がありました。「はじまるよ~」という声で子ども達が戻ってくる、ふたば学舎ならではだなと。家族連れで来てくれていて、音楽も生音楽だし、弁士もいるし、終わってから子どもが前の方に集まってたんです。

ー田中さんー
おもちゃ楽器を駆使して演奏してもらっていたので興味津々でしたね。

ー金さんー
ひゅーぷぷぷぷぷって

ー田中さんー
あれはヒットだったなと思いますね。

ー金さんー
上映中もすごいうけていて、笑ったり「そこー!」とか声を出したりしていて、年齢も関係なく、文字を超えるいい空間だったなと思うんです。

ー記者ー
神戸映画資料館のシアターでも上映会を開催されていましたが何人くらい来られましたか。

ー田中さんー
室内映画祭は大人が10人、子ども10人くらい来ていただけました。今はインターネットで何でも見られるし、選択がいくらでもあるように見えます。けれど、我々が子どものころ、テレビで流れているものを見ていた時代と違って、今は結局アクセスしないと見ない、今の方が出会いが限られると思いませんか? かつては能動的に選ばなくても偶然出会うということが多かったんです。

ー金さんー
みんなでテレビを見ているから、おじいちゃんが見ているものを見るという機会がありましたね。

ー田中さんー
何でも選べる時代になっているから、いろんなものを見せてあげようという意識的な大人が周りにいる子たちはとても豊かかもしれませんが、そうじゃなければ今は出会いが狭められているんじゃないかなと感じることがありますね。

ー金さんー
違う世界を見るということ、反応が違うところとか、笑う場面が違うところとか、こんな声出すんやとか、みんなで集まってみる映画館でしかできないじゃないですか。自分の選んだものではない色々なものを一つの画面で一つの場所で見るというのがデジタルではできないことなんだなと思いますね。簡単で豊かで便利というものの不便さ、、、

ー記者ー
上映会に行ったからこそ得られるものが多かったんですね。

ー金さんー
祭の重要性を感じ取れたかなと思いますね。

ー田中さんー
無料というのも良かったと思うし、そのためには助成やスポンサーが必要だなと思いましたね。

ー記者ー
今後、野外上映を増やしたいと思われていますか?

ー田中さんー
野外上映は少なくとも年1回、できれば2回したいなと思いますね。

【活動するにあたって工夫していること】
ー記者ー
活動において、一番大事にしていることは何でしょうか。

ー田中さんー
やはり地域の方と一緒にということを大事にしていますね。地域の人に参加してもらえるような企画にしたり、映画に興味があまりない人にも届けたいです。

ー記者ー
集客方法や広報など、工夫していることはありますか。

ー田中さんー
頑張っていますが結構難しいです。今回うまくいったのは「まちの文化祭」とコラボしたことが大きかったんだろうなと思います。

【将来の長田を生きる子ども達に伝えたいこと】
ー記者ー
最後に、将来、長田がどんなまちになってほしいと思いますか。

ー金さんー
今年、能登で震災があったと思うが、まちを復興・元気づけていくためにはアートの力がとても大事だと思っているんです。もちろん食べることも大事だが、絵を描くこと、歌うこと、踊ることなど、そういうものがないとエネルギーだけでは生きていけないんじゃないかなと思うんです。
総合芸術を子どもたちに伝えることが大事で、だからこそ、この企画は大事だと思います。永遠に残るような映画じゃないですか、それを見たことが記憶に残るだろうし、世界的なアートを知っている、長田で見たね、というふるさとの豊かさを感じるためにはやったほうがいいし、誇りに思えるように、そういうまちだ、という記憶を次世代の子ども達が記憶の中に残していける場所になってくれたらいいなと思います。

ー記者ー
ありがとうございました。