見出し画像

神戸大学経済学部経済学研究科博士前期課程 2024年II期 経済史 個人的解説と講評 独断と偏見のフルコース 〜強めの思想を添えて〜

お初にお目にかかります。神戸大学経済学部経済学研究科修士1年のふらんぼわあず。と申します。

学部は慶應義塾大学経済学部を卒業し、バドミントンがやりたくなって今春より神戸大学経済学部の修士課程に入学したわけですが、その際の入学試験が過去問としてHPに公開されております。

私自身、解答解説のない中で試験勉強に苦心した経験から、今後受験する学生たちのために役に立てればと思い、自分の受験した経済史だけではありますが少し解説と講評をしたいと思います。

長ったらしい挨拶は終わりにして、早速行きたいと思います。
〜独断と偏見のフルコース、強めの思想を添えて〜


2024年II期
神戸大学経済学部経済学研究科 博士課程前期課程 入学試験 経済史

1.概要

入学試験は毎年2回、夏と冬に行われる。
筆記試験科目は英語(TOEIC等の資格試験のスコアを提出して採点)、経済理論、統計学、経済史から選択、いずれも試験時間は90分である。
おそらく得点調整を行って最終的な採点を行うものと思われる。合格最低点、平均点等は不明だが、後述するように鬼門難問はほとんどなく、それなりの得点が求められるだろう。

受験生が特に気になる合格率についてだが、I期試験II期試験とも50%前後ではないかと思う。(倍率が2倍前後のため)
私が受験した2023年度II期は多く見積もっても教室には80人前後しかいなかったが、合格者は51人と例年と比べてかなり多かったのでレアケースと思われる。

経済史の入試においては例年大問4つ、日本経済史と世界経済史が2問ずつ出題される。しかし選択者が少ないこともあって実施されない場合がある(2023年夏は行われなかった模様)

2.2024年II期入試の全体評

総じて例年通りだといえる。例年通り日本史2問、世界史2問の4問構成。近代日本史も例年の如く出題され、難易度も例年通りだろう。大学院の試験で高得点を狙うのは厳しいものがあるが、過去問できちんと対策をしていれば特に解答に困るような問題はなく、後述するどこぞの大学と違って極めて良心的でオーソドックスな問題が揃っているだろう。基礎レベルの経済史の知識≒難関私立大レベルの世界史知識が前提となる。
解答についてだが、おおよそ20分で1問の回答を記述しなければならないため、書く前にある程度テーマと構成を絞っておかないと大変なことになる。
開始5分程度で大問4つそれぞれの書くテーマ、トピックを選定し、20分×4問を解答、5分を見直しに充てるのが良いだろう。

3.各問題解説

大問1 難易度:例年並み
毎年恒例の近代日本史の問題。この手の問題には厳密な解答は存在しないと思われる。というのは、経済理論や統計はともかく、正しい答えを書く論述試験は大学院ではあまり実施しない(あまり実施する意味がない)からである。大学時代に自分が受けた講義や大学院での専攻と相談して解答を決めて良いと思う。
私自身は工部大学校などの教育制度の整備などの視点から論じたが、そのほかにも労働について、鉄道などインフラ整備について、農村の工業化についてなども論じてよいと思う。ただ、解答の幅が広い分それなりに深い理解、考察力が求められるだろう。

大問2 難易度:例年並み〜やや易
現代日本に関する問題。2022年II期で類題が出ていることを考えると易しい部類かもしれない(少なくとも私はそう感じた)。この問題も大問1と同じく解答は自由に論じて良いと思うが、諸要因と書かれているので複数視点で論じる方が望ましいだろう。私は戦前から続く労働者の賃金構造と企業システムが変遷したことについて論じた。ちょうど大学で履修していた範囲でもあったので、かなり自信のある解答だった。

大問3 難易度:例年並み
これも神戸大学では頻出の中世ヨーロッパの問題。地方まで指定されるケースは稀であるが、内容としては早慶レベルの大学受験生でもある程度は解答できるものなので難易度は例年通りとした。低地地方とは現在の北フランス〜ベルギー〜オランダの北海沿岸部をさす。したがって中世ならば毛織物産業による隆盛やスペインから独立したオランダ経済の先進性、近現代ならば大陸初となるベルギーの産業革命やEUの先駆けとなったベネルクス関税同盟など記述できる内容はかなり多い。出来事や事柄を羅列するのではなく、産業的に重要であったことや常に大国の係争地であったことなど、トピックやテーマに基づいて出来事等を言語化する能力が必要だ。
この問題も厳密な模範解答はないと考えられるので、私は自身の専攻と被る点があるベルギーに関して多めに論じた。出願してから僕のためにこの問題を作ったんじゃなかろうか?と思うような問題であった。
なお、神戸大学には奥西孝至教授というネーデルラント地方を中心とした中世西欧史専門の教授がいらっしゃるが、本年度で退官されるようである。今後この範囲の問題が出題されるかどうかは微妙なところである。

大問4 難易度:例年通り〜やや難
近代アメリカの問題。アメリカに関しては過去出題例があまりなくやや難しいかもしれない(とアンチアメリカの著者は感じる)この問題の指示は「説明せよ」なので模範解答を意識した答案作成が求められるだろう。要点は北東部、南部、(北)西部のそれぞれの経済状況と思惑である。開戦前は北西部と南部はミシシッピ川の水運を通じて結びつきが強かったが、ホームステッド法により北西部が北側についた流れをつかめているかが鍵であると思う。ホームステッド法の内容、シェアクロッパーなど戦後の南部経済の状況等まで記述できれば解答としては申し分ない。かく言う私はアメリカは門外漢なので高校世界史レベルしか解答していない()。あんな歴史も何もない先住民と黒人奴隷の殺戮の上に成り立った国家なんぞ知ったこっちゃねえ(ヨーロッパも戦争しかしてねえだろ)

受験した感想

南北戦争の問題はやや面食らったが、大問2はおそらく満点解答、1,3も及第点以上は取れていると思う。逆に言えば1問は捨てられる()
1番面食らったのは教室の第一言語が中国語になるくらいの大量の中国人受験生である。
バカとブスと日本人は大学院に行け。

過去問も含めてだが、国立大学ということもあって経済史のテキストに普通に載っていたり、大学の経済史で扱うような素直な問題が多く、純粋な試験対策時間がものをいいそうである。(某私立M大は一部のテキストにしか載ってないコラムの端っこの用語解説1題だけだった。さらには30人ぐらい受験生がいたのに合格者は0人というまさかの結果であった。大学院教育を軽視していると思わざるを得ない結果である。教員たちも流石に可哀想である。早慶に並ぼうなんて100万年早いわ、受験料返せ)

また、私はこの他に一橋大学の対策も行ったため、累計の勉強時間はおおよそ3ヶ月半、およそ250時間である。神戸大学に絞ればもう少し少ない勉強時間で済むかもしれない。英語のスコア等と相談してみることをおすすめする。(なお一橋大学は指導を仰ぎたいと考えていた塩路教授が修士課程の指導を外れることになったため、途中で勉強を辞めてしまった)

どこの大学院にも当てはまることだと思うが、経済史は選択者が少なく試験が実施されない年もあり、過去問も少なく、解答を公開している大学院も少ないことから敬遠されがちである。実際私の受験会場でも経済史選択者は1人か2人だった。
しかしながら、1浪1留、GPA1.66、必修ミクロは受験時点で未修得、卒論も書いていないというどうしようもない有様の人間が、約3ヶ月でなんとか合格することができたので、試験対策を頑張れば皆さんにも十分に可能性があると思う。私の解説が少しでも神戸大の大学院を受験する人たち(特に私立文系)の役に立てばいいなと思う。最後に受験生へのエールと参考書を記載して終わりとすると共に、これを見かけた受験生の大学院合格を(神戸大学に限らず)願ってやまない。お読みいただきありがとうございました。

𝕾𝖚𝖈𝖈𝖊𝖘𝖘 𝖎𝖘 𝖓𝖔𝖙 𝖋𝖎𝖓𝖆𝖑, 𝖋𝖆𝖎𝖑𝖚𝖗𝖊 𝖎𝖘 𝖓𝖔𝖙 𝖋𝖆𝖙𝖆𝖑. 𝕴𝖙 𝖎𝖘 𝖙𝖍𝖊 𝖈𝖔𝖚𝖗𝖆𝖌𝖊 𝖙𝖔 𝖈𝖔𝖓𝖙𝖎𝖓𝖚𝖊 𝖙𝖍𝖆𝖙 𝖈𝖔𝖚𝖓𝖙𝖘.
~Sir Winston Leonard Spencer Churchill~

参考書
河崎信義・奥和義 編著 『一般経済史』ミネルヴァ書房
<各章末に演習問題がついており、初学からでもかなりのレベルまで経済史の知識、論述力が身につく。これなくして合格はないと言ってもいいレベル>

中西聡 編 『日本経済の歴史』名古屋大学出版会
<日本経済史は基本的にこれ1冊で全て対応できる。ここに載ってない経済史の問題は出ないのでおすすめ。各方面からも絶賛されている1冊>

金井雄一・中西聡・福澤直樹 編 『世界経済の歴史』名古屋大学出版会
<私は大学受験で世界史選択かつ得意科目だったのであまり使わなかったが、世界史を受験で使っていない人は持っておきたい1冊。もちろん内容は隅々まで網羅されており、こちらも上記と併せて非常におすすめ>

鵜飼恵太著 『ストーリーでわかる世界史B 近代・現代』 KADOKAWA
<ナめてはいけない受験世界史の知識。結構抜けている知識も多く、幾度もお世話になった。尊敬する鵜飼師のためにもお金に余裕がある人は買っておこう。(案件とかではないです)>

何かありましたらTwitter(現X)@Ko_framboise_beまでどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?