IT戦略巻き返しのために「プロジェクト憲章」公表すべき|ICTと社会

コロナ問題を契機に、日本の行政IT化が大きく遅れている現実が露わになった。政府はその巻き返しを急ピッチで進めようとしているが、旧来の手法にこだわる役所文化を打破できるのか、心配は尽きない。

数年前に、子会社の基幹システムの全面刷新のプロジェクトに携わった際、アドバイザーだったコンサル会社から、こういったプロジェクトの立ち上げ時には「プロジェクト憲章」を必ず制定すべきであると教わった。

「プロジェクト憲章」とは、そのプロジェクトの目的やゴール、責任者などを明確化して文章として定義したものであり、プロジェクトマネージメント手法の根幹となるものである。

「プロジェクト憲章」の解説はいろいろなところに載っているが、請負側のITベンダーの立場で、発注者側の要件肥大化に振り回されないために的な、「守り」の意味合いで解説しているものが多いような気がする。

だが、私は発注者の立場においても、この「プロジェクト憲章」は非常に重要だと感じた。長い期間のプロジェクトを進めていると、社内のいろいろな人がいろいろな立場でいろいろなことを言い、どんどん方針がブレていくことがある。多額のお金をかけた挙句に、プロジェクトの目的から逸脱したものが出来てしまっては、会社にとっても大きな損失だ。

私の経験上、プロジェクトオーナーがはっきりと目的やゴールを定め、それを言い続けたプロジェクトは成功する。つまりプロジェクトの成否は、そこで使うIT技術の良し悪しなど以前に、プロジェクトの目的や方針を定め、それをブレずに最後まで貫き通せるかどうかなのである。そして、これを明文化したものが「プロジェクト憲章」なのだ。

国家のIT戦略プロジェクトにおいても、ここが重要である。目的やゴール、期限を明確に定めた「プロジェクト憲章」を制定すべきだ。プロジェクトオーナーは内閣総理大臣とするべきである。そしてこれを公表し、国民にコミットしてもらいたい。

国のIT戦略は、国民生活や安全保障など、全ての根幹となるものだ。

本当は「安部一強」と言われていた時期こそ、省庁の壁を越えて断行するチャンスだった。官邸のパワーは一時期ほどではないかもしれないが、今こそ単なる看板倒れに終わらない「骨太」の「プロジェクト憲章」を示し、これをやり遂げてもらいたい。

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