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日本の土葬と火葬について

(はじめに)

今日フランス語のニュースの勉強をしていたら、イスラム教徒は、火葬は絶対に許されていないので、日本の九州に住んでいるイスラム教徒が、大分県で土葬ができる墓地を、申請したいとのことが話題に取り上げられいました。そこで、次のようなことを、書き残しておきたいと思い筆を執りました。

日本の土葬と火葬の歴史

現在多くの若い人が知らなくなってきましたが、日本は、もともとは土葬でした。日本で最初に火葬で葬られた人は道昭という僧侶です。この人は唐で玄奘三蔵に学んだ直弟子で、西暦700年に火葬にされたといわれています。

ほんの40年ほど前までは、「浄土真宗は土葬、真言宗は火葬」だった。

また、このニュースを取り上げたフランス語の先生のお話によると、現在の日本では99.97%までが火葬だとのことです。しかしながら、つい最近の40年くらい前まで、私の出身の讃岐では、宗派によって土葬か火葬か決まっていました。浄土真宗の人は土葬でしたが、真言宗の人は火葬でした。我が家は浄土真宗でしたので、60年前に亡くなった姉は土葬でした。今も土の中に棺桶を下ろしていく様子を覚えています。また、40年前の私の母方のおばあさんは、浄土真宗でしたので、土葬でした。1981年だったと思いますが、このあたりが土葬の最後のようです。

真言宗の伝統的な方法で火葬のやり方

50年ほど前、同じ集落でも、真言宗の人がなくなると、郷里の讃岐では火葬にしていました。その頃は火葬場が町内になかったので、集落ごとに昔ながらの方法で火葬にしていました。墓地の横の空地に、木組みを組んでその中に遺体を置き、周りを藁束でぎっしり囲んで、焼きました。藁束が燠(おき)となって内部が十分に高温のまま長時間木が燃え尽きるまで燃え、きれいに骨だけになる伝統的な方法で焼いていました。浄土真宗の父は、真言宗ではないのですが、同じ集落なので手伝いに行って、この伝統的な火葬のやり方を見て、上手に骨だけになると、家に帰ってきてから感心して私に話しました。

現在、日本では宗派に関係なく全国的に火葬

私の研究者仲間で、北大助教授の方は、30年ほど前、子宮がんで早世され、夫の郷里の佐賀県唐津市の三保の松原に、土葬になりました。御主人は浄土真宗だからと言っていました。私は土葬を身近に聞いたのはこの方が、最後です。その後は、多くの街で火葬場ができ、また、土葬は病原菌を防ぐような埋葬構造にしないと許されなくなったとかという噂で、それ以降は、宗派に関係なく全国的に火葬となりました。

フランスの火葬

1986年から1年間パリに留学しましたが、当時住んでいたアパルトマンのお隣のおばあさんが、階段で転ろげ落ちてなくなり、お葬式にパリの中の墓地ペーラシェーズに行きました。おばあさんは火葬にされ、たくさん並んだ郵便箱のような小さな箱の中に納骨されその蓋をボンドのような接着剤で固める儀式をしました。隣で連れ合いをなくしたお祖父さんが大きなため息をついていたのを、いまだに覚えています。その時、フランスにも、火葬があるんだと思いました。

死んだら、アメリカで土葬にして

私と同い年の在日アメリカ人、ケント・ギルバートさんが、最近テレビで言っていたのを思い出します。テレビ番組の司会者が、「ケントさん、何十年も、日本に住んでいるので、最期は日本に骨を埋めますか?」と聞きましたら、みんなが予想してない返事が返ってきました。
「いや、私は、アメリカで、土葬にしてもらいたい。日本だと、みんな、火葬でしょう?私、キリスト教徒なので、焼かれるのは嫌なんです。」
なるほど、私も、ケントさんと同じように土葬にしてもらいたい。なぜなら、もともとのうちの家の宗派は浄土真宗なので、できるなら土葬にしてもらいたいなぁ、60年前に亡くなった姉さんと同じように。

(おわりに)

現在、日本の法律では、宗派に関係なく火葬となっていますが、浄土真宗や、キリスト教、イスラム教を信じている人は、土葬でもいいとしてほしいですよね。これって、みんな宗派に関係なく一律に火葬でないといけないのかという疑問が私にはありますが、皆さんどう考えられますか?


*冒頭の肖像は、浄土真宗の開祖「親鸞聖人像」(重要文化財)です。奈良国立博物館、収蔵品データベースからダウンロードさせていただきました。
https://www.narahaku.go.jp/collection/654-0.html

2021年6月14日随筆
2022年2月20日加筆

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