「サクラ」徒歩圏内で花見ができるワケ
最寄りの公園から小学校
道路沿いにまで咲く日本の象徴
春先に外出するたび、「今年もサクラをみれてよかった」と妙に安堵するのは、私だけでしょうか。その淡いピンク色の花弁は、咲けば心を華やかさ、散れば物悲しさをみる人に与えます。満開のサクラをみると、まるで世界に歓迎されているかのような気持ちにすらなるので、この花の影響力は凄まじいと毎年感じます。
日本人の郷愁に訴えかけるこの象徴的な花は、現代では近くの公園から通勤・通学路、学校によっては校庭でも目にすることができます。昔からこれほど各地で、当たり前にみることができたのでしょうか。少し気になったので、調べてみました。
花見の様式を変えた
明治時代の新品種
現在私たちが一般的にみるサクラは「ソメイヨシノ」と呼ばれる品種で、もともと日本に存在していた花ではありません。日本に自生しているサクラでヤマザクラという種がありますが、じつは宮廷の花見の歴史をみると、サクラよりもモモ(桃の節句)や中国を原産とするウメが重要視されていたそうです。
理由は定かではありませんが、平安時代になり、京都御所にウメに代わってサクラが植えられるようになり、サクラにスポットが当たるようになったそうです。庶民文化が発達しはじめた室町時代には、開かれた空間で多数の人が集まってサクラをみる花宴が行われるようになりました。
江戸時代まではヤマザクラを植えてサクラの名所が造営されますが、明治時代、江戸の染井村から広まった品種ソメイヨシノが爆発的に全国に広がります。この品種は、花付きが優れている点、木が大きく育つ点、そして一斉に花開くといった点からヤマザクラよりも花見に適し、各所で植えられるようになったそうです。各地でみられる一般的な花だからではなく、花見に適した花だから各地で植えられるようになった、と考えると、これほどあちこちで咲いているのも納得できます。
この10年で開花が最遅
花芽成長を決める5°C
地球温暖化が叫ばれる昨今なので、サクラの開花時期は早くなると思われますが、2024年の東京都における桜の開花発表は3月29日と、ここ10年でもっとも遅かったと報じられました。サクラは花弁を散らしたあとに「花芽(かが)」と呼ばれる花のもとをつくり、 花芽を翌年の春まで充分に休眠させたのちに開花させる仕組みになっています。この花芽の休眠が解除されるには5°C前後の温度が効果的とされ、あまりに暖かすぎると花芽の成長が遅れるそうです。
晩春になってサクラが散り、少しさみしい気持ちが芽吹きはじめてきました。ですが、花芽がもうできはじめているのだと思うと、葉桜を愛ながら翌年を待つのも、また趣きが感じられてきますね。
参考文献
・勝木俊雄『桜』岩波新書 2015年
・「春、待ってたよ 東京で桜開花発表」朝日新聞 2024年3月30日
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