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投資家の興味を惹くIRリリースタイトル書き方のコツ~出来高インパクトAI予測機能紹介~

こんにちは、Figurout代表の中村です。
上場企業がIRのPDCAを回して企業価値を高めるためのSaas、HoooldersAnalytics を提供しています。
先日、新機能として「IRリリースを出す際に、投資家の興味を惹くために効果的なリリースタイトルをつけるためのAI予測機能」をリリースいたしました!


利用シチュエーションは?

事業提携などの投資家に向けて発信すべき開示事項や、法定開示事項ではないが投資家に向けてアピールしたい取り組みのPR開示やプレスリリースなどを発信する際、「リリースにどのようなタイトルをつけるか」は非常に重要です。
WEB広告においては、タイトルのつけ方ひとつでクリック率が大きく異なり、よりよい成果の広告文をA/Bテスト(複数のパターンを表示させて、成果のよいものを選択する手法)を行ったり、Googleなどのプラットフォーマーは広告文からAIがクリック率の予測を行い、より成果の期待値の高いものを表示するロジックを用い成果を伸ばしていることなどから、IRにおいても同様の改善が有効ではないか、という着想から本機能の開発を行いました。

書き方の決まっている法定開示については本機能は使いにくいですが、

  • 事業提携

  • 新規事業や新サービスの取り組み

  • 事業展開に影響する大口受注や案件採択など

などといった、ある程度書き方に自由度のある開示事項については工夫の余地が大いにあります。
忙しい投資家は、すべてのリリースに目に通しているわけではなく、タイトルを見てから中身を閲覧するかどうかを決めています。
WEBマーケティングの分野では、広告タイトルや記事見出しなどでクリック率が大きく変わってくることは常識ですが、IRリリースでもこれは同じことが言えるはずです!

IRリリースタイトルのポイント

今回、IRでよく取り上げられるリリースの内容を踏まえ、HoooldersAnalytics の出来高インパクト予測機能を用いて、どのようなリリースタイトルにすることが出来高への影響が大きくなる(≒より多くの投資家に訴求できる)かをシミュレーションしてみました!
ぜひ、皆さんの会社のIRリリースと見比べてみて、改善の余地がないか参考にしてみていただければ幸いです!
(※なお、本記事については、Hooolders Analytics のタイトルインパクト予測機能を用いたデータをもとにした筆者独自の見解であり、一般論としてそのような傾向がありそうだ、という私見を述べたものとなりますのでご了承ください)

①サービス名や企業名などの固有名詞には業界を知らない人が見てわかる説明文言を付与する

色々な企業のIRリリースを見ていて感じるのは、読み手の立場にちゃんと立てていないと感じるリリースが意外に多いということです。
「株式会社●●●●」とか「サービス名○○○○」のような固有名詞は、社内の人や業界人なら当たり前の前提知識かもしれませんが、リリースに目を通す一般投資家が皆そのような前提知識を知っているわけではありません。
ある会社(例えば株式会社ABC)との販売代理契約を締結したのであれば、その株式会社ABCがどのような会社かを、魅力ある文言で説明すると、投資家の興味を惹くことができます。

悪い例:「株式会社 ABC との販売代理契約を締結」
改善例:「業務用資材製造大手 株式会社ABCとの販売代理契約を締結」

上記のようなリリースタイトルが、出来高にどのような影響を与えるかをHoooldersAnalytics で予測してみた結果が下記です。


①-1 企業への説明文言追加

株式会社ABCが、どのような会社かを説明する文言がある方が、基本的に出来高インパクトの予測スコアが大きくなっていることがわかります。

また、サービス名についても同様です。

悪い例:新サービス「ABC」提供開始のお知らせ
改善例:物流のDXを推進する新サービス「ABC」提供開始のお知らせ ~
~AIを活用し在庫を最適化

①-2 サービス名への説明文言追加

「読み手の立場に立って書く」というと基本のようですが、ずっとIRとして定期的な情報発信をしていると、ついついみんな自社や業界のことを知っているものだと勘違いしてしまいがちです。
常に新しい投資家を意識し、そういう投資家にも魅力が伝わる書き方をすることがポイントです。

②「パートナーシップ契約」などといったあいまいな文言よりも「業務提携契約」のような中身がわかりやすい文言を選ぶ

IRの開示事項として、業務提携に関する開示内容は目玉の1つかと思いますが、契約締結の表現方法について改善の余地があるのかも気になったので、シミュレーションしてみました。

②-1 業務提携的な契約の書き方によっても出来高への影響度は異なる?

「業務提携契約締結」が最も出来高へのインパクトが大きく、「戦略的パートナーシップ契約締結」は出来高へのインパクトが小さい、という結果となりました。

また、述語にあたる部分についてもシンプルに「締結」とするのか、「締結のお知らせ」とするのかetc.. についてもいくつかのパターンでテストしてみた結果が以下です。

②-2 締結文言での変化

「提携に関する合意書締結のお知らせ」がインパクト予測としては最も大きい結果となりました。

前者も後者も、書き方により投資家の反応が変わってくるというよりも、「合意書締結段階でリリースする案件は大型のものが多い」といった、因果ではなく相関によるものの可能性も大きいかもしれませんが、「戦略的パートナーシップ契約」といったあいまいな文言を使うときは具体的に何をするか決まっていないあいまいなケースが多そうな印象はあるので、明確な文言の方がよさそう、というのはあるでしょうか。


③業績への影響度を想起させる文言で説明する

受注のお知らせや営業的な取り組みなど、業績への影響がある事象について、開示を行うケースはあるかと思います。
こちらも①と同様、その事象が業績への影響の大きさを期待させる内容で記載した方が、投資家の興味を惹くことができます。出来高インパクト予測でも、その傾向は確認することができました。

③-1 受注内容を具体的に説明する

「大口受注に関するお知らせ」だけだと、どのような受注かが想起できないため、その内容の大きさを想起できる文言を追加すると、出来高インパクトは大きくなる結果となりました。

また、「営業強化のお知らせ」のようなリリースにおいても、具体的にどのような強化を行うのかを端的に述べることで、出来高インパクト予測のスコアは高まる結果となりました。

③-2 取り組みの内容を具体的に記載

WEB広告においては、広告文に数字を記載すると成果が上がるといったTips が知られています。この辺りは本質的な問題ではなく、つい数字に注目してしまう人の性質をついた小手先の技術ですが、「より多くの人に開示内容を目にしてもらう」という意味では、こういった行動心理学的なテクニックにも意味はありそうです。

出来高インパクト予測機能について

本記事は、出来高インパクト予測機能を用い、一般論として言えそうなIRリリースタイトルの書き方のコツを3つほど紹介してみました。
実際には、具体的なリリースの内容を踏まえて複数のタイトルを入力してみて、一番よさそうなタイトルを選ぶ、という形での活用を想定しています。

1ヶ月無料トライアルもしていただけますので、興味がある方はぜひ下記からお申込みください!


小手先のAIで投資家を扇動することになるのでは、というご意見を頂いたこともありますが、本機能の本当の価値は、「投資家に伝わるIR」を吟味する場をもたらすものだと思っています。
こういったガイドがなければ、工夫しようが結局「勘」で決めるしかないので、「あれこれ考えても仕方ない」ということで投資家に伝わりにくいリリースの仕方になってしまっているケースが多いのではないでしょうか。
今回の予測機能で、「吟味する場と判断基準」ができることで、「投資家により伝わるIRのPDCA」の1つのサイクルができることを願い、本機能はリリースしています!

補足:"出来高への影響を予測"ってどうやってるの?

HoooldersAnalytics では、IRリリース(適時開示、PR開示、プレスリリースなど)が出来高にどのような影響を与えたのかを、平時出来高水準からの比率で算出して評価しています。(「出来高インパクト」と呼んでいます)

弊社では全上場企業の過去2-3年分の全リリースのデータを取得しており、「IRリリースのタイトルが出来高インパクトに対してどのような影響を与えるのか」をAIで予測するモデルを構築し、ツールとして使えるようにしたのが今回の機能です。
なお、企業の規模や業種などによってどのようなタイトルが投資家の反応に影響を与えるのかは異なりますので、「時価総額」「流動比率」「業種」「市場区分」etc..といった指標もAIの学習対象データとして含めています。
自社の場合でシミュレーションを行うことで、より精度の高いシミュレーションができるようになっています。

ちなみに、出来高インパクトについては値にばらつきが大きいため、直接出来高インパクトを予測するのではなく出来高インパクトがどの程度の水準になりそうなのか、下記の確率分布を予測する形となっています。

  • 出来高インパクト大となる確率(閑散時出来高のおおよそ+150% 以上)

  • 出来高インパクト中となる確率(閑散時出来高のおおよそ+50%~+150%)

  • 出来高インパクト小となる確率(閑散時出来高のおおよそ+50%以下)

基本的な目的は「正確な出来高へのインパクトを予測すること」ではなく、「どちらのタイトルの方が出来高インパクトが大きそうか」を予測することなので、このような仕様での機能実装を行いました。

Figurout 中村


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