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ご当地銘菓No1白い恋人。データから納得できる独自の取組みとは?

 こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。

 ダナンはすっかり乾季なので暑い日が続くと、「夏の北海道に行きたいなぁ」思いを馳せることが多々あります。
 北海道といえば「白い恋人」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「白い恋人」はご当地銘菓で認知率・満足率ともに1位に君臨しているお菓子です。

Knowns Biz調べ:ポジショニング分析 ご当地銘菓

 今回はそんな北海道の代表的銘菓「白い恋人」について分析してみたいと思います!


石屋製菓「白い恋人」

引用元:石屋製菓HPより白い恋人

石屋製菓の歴史と「白い恋人」

 1947年に石水幸安氏が札幌市に政府委託のでん粉加工業を創業しました。その後ドロップスや生菓子などお菓子の製造を手がけはじめ、1959年に本社工場を札幌市東区に移転し、「石屋製菓株式会社」を設立しました。
 1960年代後半に大手菓子メーカーが北海道へ相次いで進出したことにより倒産の危機に直面しましたが、2代目・石水勲氏はこれまでの駄菓子製造から北海道の良質な原材料を使い、手間暇かけた高級洋菓子路線へ方針転換することを決意しました。
 そして1976年に「白い恋人」が生まれ、40年以上経った今でも北海道土産や日本土産として愛され続ける商品になりました。

白い恋人の特長

 チョコレートをサンドするクッキーは、ラング・ド・シャ(仏:langue de chat)というフランス伝統の焼き菓子です。練ったバターと砂糖を合わせ、小麦粉、卵白、生クリームを加えた生地でサクサクと軽い食感が特徴です。

 オーブンの温度調節などの細やかなチェックを怠らない事で、きれいな焼き色を作り出しています。
 そしてラング・ド・シャが焼きたて熱々のうちに「白い恋人」のためにブレンドされたオリジナルのチョコレートを挟むことで、冷める頃にはラング・ド・シャとなめらかなチョコレートが調和した「白い恋人」ができあがります。

 原料を加える順番やタイミング、そして生地の温度や比重が少しずれるだけでもラング・ド・シャの形やサクサク感が変わってしまうので、一つひとつの工程に気を引き締め、原料や温度・湿度のこまめなチェックを怠らないことで、愛され続けるおいしさを守り続けているそうです。
 また「白い恋人」の商品名由来は創業者がスキーを楽しんだ帰りに降る雪を見て、「白い恋人たちがふってきたよ」と言ったことがそのままお菓子の名前になっているそうです。
 「白い恋人」は2021年・日本ネーミング大賞にて「地域ソウルブランド賞」を受賞しています。

購入者層分析

Knowns Biz調べ:ブランド認知率・好感率 白い恋人
Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者のデモグラ

 白い恋人購入者のデモグラ構成比をみると40代前半~50代前半が多く、特に40代後半が多く出ています。
 男女比では女性が多いです。

Knowns Biz調べ:白い恋人の7 Journey
Knowns Biz調べ:白い恋人のファネル分析

 「白い恋人」の7 Journeyを見てみると、認知率がとても高いですが、そのなかでやや好意的ではありますが最近購入していない​​巻き戻し層も高めです。
 しかしお土産はしょっちゅう買うものではないので、過去1年に1回以上という意味では巻き戻しが多くなるのは仕方ないのかもしれません。

 ファネル分析では認知からの購入意向は90.9%と高く、また現在購買⇒リピート意向は98.8%とリピーターが多いようです。​​

どんな人が購入してる?


Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者の個人価値観
Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者の社会価値観
Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者の消費価値観

 サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は"報われ待ち”"モノ重視”"八方美人”な方が多いです。
 社会価値観は"ワーカホリック”"出世優先”“ポジション重視”と、真面目なビジネスパーソンに多く利用されているのでしょうか。
 消費価値観は"エシカル消費”に次ぎ、“ブランド消費”が高いです。

 歴史が長い商品なので“ブランド消費”が上位に来ているのは納得ですが、社会的問題にも目を向けている“エシカル消費”はなぜでしょうか。

≪Knowns Bizについて簡単にご紹介≫

“エシカル消費”につながる理由は?

CSR・SDGsに特化している石屋製菓

引用元:石屋製菓HPよりCSRの取り組み

 石屋製菓は看板商品である「白い恋人」を中心に、CSR・SDGsにも取組みつつ「100年先も、北海道に愛される会社へ」を目指しているそうです。

引用元:札幌市役所HPよりSDGs応援企業石屋製菓株式会社

 SDGsに関しては目標年度である2030年にあるべき姿・ゴールに向けて、6つの約束(安心・安全 、 コンプライアンス 、 環境 、 スポーツ振興 、 地域社会 、 雇用・労働環境)それぞれに目標を定めて取り組みを進めています。

 毎年発行される「ISHIYA CSRコミュニケーションブック」では前年に行なったSDGsの活動事例を業務に携わる社員の視点で紹介されています。

引用元:石屋製菓「ISHIYA CSRコミュニケーションブック」2024年版より

CSR委員会発足の理由

 そもそも石屋製菓はなぜCSR活動に力を入れているのでしょうか?そのきっかけは2007年8月に発覚した「白い恋人」の賞味期限偽装だったそうです。

 偽装発覚当時、商品は全品回収し、製造・販売の停止に追い込まれました。そして当時の社長は引責辞任し、「白い恋人」の発売を開始した1976年以降初の赤字に転落しました。

 その時に失墜したブランドイメージを回復させるため、全社を挙げての取り組みを開始し、コンプライアンス体制の確立や運営に関する役割を担うコンプライアンス委員会が発足されました。
 また大手メーカー・森永製菓の支援を受け衛生・品質管理の体制の再構築を行い、社員の意識改革も行なっています。

 その結果売上はV字回復し、2016年には売上高が4期連続で過去最高を更新しています。2020年4月期には偽装問題が発生した前年の売上92億円をはるかに凌ぐ、142億円強の売上規模にまで成長しています。
 V字回復からの売上成長には空港免税店への展開などのインバウンド対応も一因とも言われていますが、偽装問題を受け失った信頼を回復する姿勢を発信したことも大きいのではないでしょうか。

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購入者のイメージは?

Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者のワードクラウド
Knowns Biz調べ:白い恋人 購入者 注目の意見

 「白い恋人」購入者のワードクラウドや注目の意見を見てみると、「北海道土産」「おいしい」「定番」との意見が多いです。
 サイコグラフィックの消費価値観でも“ブランド消費”が高く出ていましたが、「白い恋人」は北海道土産としてのブランドイメージが確立しているのでしょう。

Knowns Biz調べ:白い恋人 現在購入者のブランドイメージ ウェイトバックあり

 現在購入者のブランドイメージでも「期待感・ワクワク​​」に次いで、「ベーシック・定番的​​」や「伝統・頑固さ」が高く出ています。
 またご当地銘菓全体の平均(赤丸)で見ると「カリスマ性がある」も高いことがわかります。石屋製菓のさまざまな取り組みが消費者にも浸透しているのだと思います。

巻き戻し層はどんな人?

 「白い恋人」の7 Journeyでは「巻き戻し層」が高めに出ていましたが、どのような人が「巻き戻し層」には多いのでしょうか?

Knowns Biz調べ:白い恋人 巻き戻し層の個人価値観
Knowns Biz調べ:白い恋人 巻き戻し層の社会価値観
Knowns Biz調べ:白い恋人 巻き戻し層の消費価値観

 巻き戻し層のサイコグラフィックを見てみると、個人価値観は"柔軟姿勢”"インドア派”"ガラスメンタル”な方が多く、社会価値観は"現状満足”"正義マン”と出ています。
 消費価値観は"直感消費”が圧倒的に高く、また“ノルタルジー消費”も比較的高いので、“エシカル消費”や“ブランド消費”の高い現在購入者とは逆の価値観のようです。

引用元:PR TIMESよりTVアニメ『ゴールデンカムイ』と「白い恋人」がコラボ

 「白い恋人」は2024年3月に北海道を舞台にしたTVアニメ『ゴールデンカムイ』とのコラボ缶を発売しています。
 今回のコラボは第四弾とのことですが、毎回ファンから大人気のコラボのようでオンライン販売は早々に完売したそうです。
 迫力のあるパッケージで、直感消費の方やアニメを好きだった人が懐かしく思い手に取る機会になりそうですね。

Knowns Biz調べ:ゴールデンカムイのデモグラ 好感あり

 「ゴールデンカムイ」に好感がある人のデモグラを見てみると、20代前半〜40代後半と幅広い年齢層が好感を持っており、特に30代後半が多いです。
 男女比では男性が圧倒的に多く、年齢・性別ともに「白い恋人」の購入者層と対極にあります。巻き戻し層や普段買わない層にも効果的なコラボになっているのではないでしょうか。

 その他にも北海道札幌にあるお菓子のテーマパーク「白い恋人パーク」では「白い恋人」の工場見学はもちろん、おかし作り体験、期間限定でさまざまなコラボ企画も行なっているので、さまざまな体験もできそうです。

まとめ

「白い恋人」購入者の特徴
・40代前半~50代前半、女性が多い
・報われ待ち・モノ重視・八方美人
・真面目なビジネスパーソンに利用される
・エシカル消費・ブランド消費の傾向
 
 一時は倒産の危機に直面した「白い恋人」ですが、さまざまな取り組みから現在も北海道の定番土産として人気を維持していることがわかりました。
 2022年6月にはドバイ・モールでも販売を開始し、海外進出も果たしている「白い恋人」ですが、“100年先も、北海道に愛される会社へ”を長期ビジョンに今後も北海道に根付いた事業展開を目指していくそうです。

筆者のひとこと

 「白い恋人」はベトナム人にもとても人気で、日本のお土産として喜ばれます。迷った時は「白い恋人」です(笑)。特にベトナムは北部の一部に少し雪が降る程度で、「日本の北海道で雪を見てみたい」という人も多く、“北海道土産“というところも喜ばれるポイントだと思います。
 また今回の分析で、「白い恋人パーク」が引退した私の推し競走馬たちがいる「ノーザンホースパーク」ともコラボをしていたのを知り、私自身も北海道に行きたい気持ちが高まりました。
 札幌旅行の際は「白い恋人パーク」をぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

≪本記事は新しいバージョンのダッシュボードを利用しております≫

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