キャッシュレス周りでここ3年間に起きたこと
こんにちは。マーケティング視点で読解力を高めるノートです。
今回は、20年5月~23年夏までのキャッシュレス市場で起きた出来事(予定も含む)についてご紹介します。
時系列で並べてみると、キャッシュレス市場で事業拡大を目指している事業者の目論見が透けて見えてくる感じがするのと、なかなかにダイナミックな競争を行っていることがわかります。
1.auPAYとPontaの連携(2020年5月21日)
auのポイントプログラムを「Pontaポイント」に変更するという発表が行われており、同日より、「au PAY」アプリを利用したアカウントの連携やポイント統合が可能になりました。
もともと、auには、「au WALLETポイント」がありましたが、率直に言って知名度が低く、auの携帯電話、スマートフォンの取替の時に使うくらいの認識でした。日常、高頻度で利用されるようなポイントプログラムに仕立てあげないといけない理由や事情があったのだろうと推察できます
2.楽天とJR東日本Suicaの連携(2020年5月25日)
楽天がキャッシュレス周りで、JR東日本のSuicaと協業、連携するというリリースです
楽天ペイ アプリからSuicaを発行したり、チャージしたりできる機能を導入するってことは、楽天市場のようなオンライン接点だけでは、何かが足らず、日常のお客さま接点を取りにいかないといけない理由や事情があったのだろうと推察できます。
3.セブンイレブンがアプリ決済にPayPayを採用(2020年8月11日)
セブンイレブンアプリの画面上にPayPayの支払いバーコードが表示され、2020年10月以降、全国の「セブンイレブン」店舗で決済できるようになる、というリリースです。
セブンイレブンには、独自の決済サービス「7pay」がありましたが、不正アクセスの被害を受けて2019年9月末にサービス終了しています。日常の利用拠点を広げたいPayPay側とバーコード決済の早期導入を目指すセブン&アイ側の思惑が合致したことで成立した座組みだと考えられます。
4.PayPayによる加盟店決済手数料の有料化(2021年8月19日)
サービス開始後無料で提供してきた決済サービス利用時の決済手数料を2021年10月1日からの徴収を決めた、という発表がありました。
料率は決済金額の1.98%か1.6%(PayPayマイストア、月額1,980円に申し込む場合)
PayPayの知名度が飛躍的に高まった「100億円あげちゃうキャンペーン(2018年12月)」から、2021年10月までの期間が、利用者と加盟店を同時並行で拡大するための先行投資期間だったと推察できます。
ちなみに、d払い、楽天Pay、auPayは、PayPayによる有料化の発表後、それぞれが、小規模加盟店向けの決済手数料無料化の継続や、新規加盟時の無償期間を設定する等、PayPayとは逆張りの方針を採りましたが、現在では、2.6%~3.24%の手数料を徴収しています。
5.PayPayのポイントを外販/共通ポイント化(2022年4月26日)
PayPayの決済金額に応じてたまるPayPayポイントに関して、2022年10月以降に外部への販売を開始する意向を示した。という発表がありました。
共通ポイント化することで、PayPayやソフトバンク、Zホールディングス(LINEやヤフー等)といったグループ企業以外でもPayPayポイントを付与できるようにする、というものです。
PayPayポイントが、共通ポイント化することで、キャッシュレス市場に挑む大手事業者はいずれも、クレジットカード、QRコード決済サービスに加え、「共通ポイント」を発行する事業者となり、キャッシュレス市場参入時の必要要件であることがわかってきました。
6.LINEのIDとヤフーのIDの連携開始(2023年4月28日)
2022年度の決算発表時に、ZホールディングスとLINE、ヤフーの3社などが2023年10月に合併「LINEヤフー」となることや、Yahoo!とLINEのサービスを統合・一本化するために、合併と同時にID連携を開始し、その後、この「PayPay」のIDとの連携も2024年度中に実施する予定であることを明らかにしました。
各サービスのIDに、それぞれ主力のサービスが紐づいているため、IDを統合、統一しない限り、各サービスの統廃合が難しい、という事情を窺い知ることができます。それぞれのサービスが多数のお客さまや金融機関などのパートナーを持ち、複雑な資本関係が存在するため、統合は容易でないと思いますが、せめて、ID同士を連携し、同一会員であることを、グループ会社や事業、サービスを跨って認識できるようにするところがスタート地点になりそうです。
7.VポイントとTポイントの統合(2023年6月13日)
三井住友フィナンシャルグループとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などは、「Tポイント」と「Vポイント」を統合した新ポイントサービスを2024年春に提供すると発表しました。
銀行口座、クレジット、デビット、さらには保険や証券などの金融、決済サービスを提供する三井住友グループが、M&Aにより共通ポイント事業を手に入れようとする動きは、先行するPayPayや楽天、ドコモ、au等と同じく、経済圏を作りに行こうとする意志の表れだと理解することができます。
8.まとめ
20年5月~23年夏までのキャッシュレス市場で起きた出来事を時系列で確認すると、3つの動きにまとめることができそうです。
1つ目は、QRコード決済の競争は、オンラインの事業者による、お客さまと日常の接点となる加盟店を同時に確保するための争い(協業、提携含む)だったということ。
2つ目は、キャッシュレス市場で戦うために、クレジットカード、QRコード決済サービスに加え、「共通ポイント」が必要だったこと。
3つ目として、キャッシュレスサービスや共通ポイントは、それ自体が事業目的というよりは、あくまでツールであり、自社経済圏を作るための手段や方策だった、という点です。
キャッシュレス市場での各社の競争は、自社経済圏の成立のために必要となる数千万の規模の顧客(会員)IDや数百万か所のオフライン加盟店を確保するために行われてきたと、整理することができそうです。
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