20240430

 アキ・カウリスマキ監督のフィンランド映画『パラダイスの夕暮れ』を観た。彼の初期作品『真夜中の虹』、『マッチ工場の少女』と共に〝労働三部作〟と呼ばれる。ごみ回収の仕事をしながら孤独に生きる男と行きつけのスーパーで働く女性の恋愛を描く。
 彼の作品を何作か観れば分かるが、彼は徹底してフィンランドの底辺で生きる人間をその過酷な状況にもかかわらずユーモアを交えつつ、なんとか希望へとつなげて描く。今作でも男が酒で暴れて留置所に入れられたり、女が突然の解雇通知を受けて金庫の金を盗んだり、そうした事件は起こるものの、逆にその事件が彼らの絆を深める要因となっている。八〇年代の映画なだけあって、まだ日本の電化製品が高級品として彼らの文化生活に用いられているのも時代を感じると同時に、いまの日本の製造業の衰退を如実に物語っている。

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