松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/douj…

松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/doujin/detail/blur-matsuo/ 初の短編集『月に鳴く』(破滅派)が電子書籍で発売になりました。→https://amzn.to/4175oUq

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最近の記事

20240528

 ジャスティン・カーゼル監督の豪映画『ニトラム/Nitram』を観た。一九九六年四月にタスマニア島で起こった無差別銃乱射によって死者三五人、負傷者一五人を出した「ポート・アーサー事件」の犯人マーティン・ブライアントを主人公にしたクライム映画。  知的障害で名前を逆さにした〝ニトラム〟と呼ばれて馬鹿にされてきたマーティンが宝くじの会社のオーナーである女性ヘレンと出会い彼の居場所を見つけるが、事故をきっかけに再び孤独に苛まれていく。主演したケレイブ・ランドリー・ジョーンズはブラン

    • 20240527

       破滅派の編集会議だった。早くも次号のテーマを決めるためにアイデアを出し合った。次回の文フリ東京は、ついにビックサイトに会場を移動する。前回は千円の有料入場になったにもかかわらず、出展者あわせて一万三〇〇〇人近い入場者数を記録している。第二会場ではその多さを実感することはなかったが、たしかに第一会場は一歩進むのにも一苦労するような状態だったので、あの混み具合が緩和することを願う。

      • 20240526

         用事があって自由が丘に出向いた。なにやら駅回りでバザールのようなものが行われていて結構な人出だった。飲食物や装飾品などを販売する路面店が立ち並び、さらに道路が歩行者天国になっていて、そこにテーブルと椅子一式が置かれて人々が飲み食いをしていて、休日の銀座のような趣だった。  駅前にも出店がひしめき、人で一杯だった。今はちょうど駅前の一区画が再開発されており、まっさらになった土地とフェンス一枚隔てて全く対照的な光景が広がっていることに不思議な気持ちを抱いた。用事を済ませて、ブッ

        • 20240525

           アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』(高見浩訳、新潮文庫)の読書会だった。この作品に対してはあまり良い印象を抱いていなかったので、憂鬱気味に参加したが、どうやら同じように読んだ人は少なくて、かなり肯定的に読まれていることが改めて分かった。その上で、わたしにとって理解できない感情や世界の見方について解像度がいくらか上がったように感じる。  わたしの否定的な読みを熱弁し、多少意見のぶつかりもあったが、この違和感やもやもやを言語化したことは意味のある事だったと思う。これからもヘ

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        • 曖昧日記
          589本
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          2本
        • 完全なる消え方の練習
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        記事

          20240524

           16日に、中尾彬が亡くなった。スカーフを首元から交叉にねじ巻いて〝ねじねじ〟という独自のファッションでバラエティー番組などでもよく観ていた思い出がある。最近はめっきり見かけなかったのでどうしているのか分からなかったが、こうした形でその死を知ることになってしまった。すっかり面白おじさんのイメージだったが、俳優として多くのドラマや映画に出演していて、若い頃の姿は二枚目そのもので、そうした追悼動画が流れてくるたびに驚いている。ご冥福を祈りたい。

          20240523

           文フリが終わって、軽い燃え尽き症候群に陥っている。何かの記事で「老化は意欲の低下から始まる」というものを読んでまずいな、と思った。なんでも四〇代くらいから前頭葉が収縮しはじめて記憶力の低下や性欲減退などの兆候が表れ始め、それにかまけて何に対しても意欲が衰えてしまい、老化していくというのだ。老化を防ぐには意欲を持って様々なことに取り組むことが効果的だという。新たな目標を設け、何か始めるべきだろう。

          20240522

           ロベルト・ボラーニョ『第三帝国』(柳原孝敦訳、白水社)を読んでいる。ドイツの戦争ゲームのチャンピオンが西カタルーニャで休暇を過ごす中で奇妙な出来事に巻き込まれていく小説。ボラーニョが亡くなった後に見つかった初期の遺稿で、語り手の日記という体で日々の出来事が語られていく。  以前に観た映画『好きにならずにいられない』の主人公も戦争ゲームをやっていて、この本を読んでいる内に俄かに戦争ゲームへの関心が高まっている。おそらく、日本だと『信長の野望』のようなものなのだろうと想像する。

          20240521

           イスラエルのネタニヤフ首相を国際刑事裁判所(ICC)が起訴したとの報道。報道によると、ネタニヤフ首相やハマスのガザ地区トップのシンワル指導者など合わせて五人に「戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑い」で逮捕状を請求するとのこと。ICCの所長は日本人の赤根智子裁判官。昨年はプーチンへの逮捕状の報復としてロシアから指名手配されている。今後のアメリカやイスラエルの反発は必至ではあるが彼女には信念を貫いてほしいとともに、その勇気ある行動に心から敬意を表したい。

          20240520

           文フリ明けで、すっかり気が抜けて何もしないまま一日が終わってしまった。冬乃くじ「火星の音」を読んだ。「IMAGINARC」というピアノ二台の演奏会の全国公演で配布されるパンフレットに掲載される小説の一篇。サクという人物の語りで、高校の同級生だった桜音とSNS上で〝再会〟し、メッセージのやり取りと共に回想が挟まれるという現代的な構造。  短い掌編という趣ながら、コンパクトに二人の関係性を読者に想起させるエモーショナルな作品で、中でも桜音のある告白を受けてサクと彼のSNSのメッ

          20240519

           文フリ東京当日。流通センターでの開催は今回が最後で、次回からは東京ビックサイトに会場を移す。おそらく流通センターに行くことは今後ないだろう。買い物のことを考えると、移動中に読む本はどうしても文庫になる。そう考えると電子書籍はこういう時に便利なのかもしれない。この日は、フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』(岩波文庫)を持って行った。  午後三時くらいに到着した。会場の前では、ガザ地区へイスラエルによる虐殺のスタンディングデモをやっていた。先日、三島賞を受賞した大田ステファニー歓

          20240518

           アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』(高見浩訳、新潮文庫)を読んだ。天邪鬼なので、読んだことがなかった。ヘミングウェイのイメージとして〝マチズモ〟の権化みたいに思っていたので避けていたこともある。今回読んでみて、まさにそのイメージ通りでやはり苦手と感じた。漁師一筋の老人と彼を慕う少年、大魚とサメとの格闘、野球と男性的な世界観で、「男は常に強くあらなければならない」という具合だ。  ただ、冒頭から海に出る場面はやや幻想的で初めは老人の夢かという感じで、最後の終わり方も儚い感

          20240517

           晴れて、汗ばむほどの陽気になった。五月でこの感じだと今から夏が怖い。俳優の高橋一生とNHKの『岸辺露伴は動かない』で共演していた飯豊まりえが結婚を発表した。四三歳と二六歳の一七歳差。高橋一生と言えば、スタジオジブリの『耳をすませば』で天沢聖司の声優を務めていたと知って驚いた覚えがある。まさに同世代だが、二六の女性と結婚というのも驚きである。とは言え、ドラマではいいコンビっぷりだったので〝ジョジョ婚〟などと言われているが幸せになってほしい。

          20240516

           風の強い一日で、少し気温も下がった。キダタローの訃報。〝浪速のモーツァルト〟として最近は見ていなかったが、二十年ほど前まではテレビでよく拝見していて「面白いおっさん」という認識だった。尊大さも突き抜けていて嫌味がなく、誰からも愛されるような不思議な魅力を持っていたと思う。当時はギャグとしてしか見ていなかったが、今改めて彼のような存在は唯一無二で、あの音楽も後世に残りそうなオリジナリティを持っていると思う。ご冥福を祈りたい。

          20240515

           オリビア・ニューマン監督の米映画『ザリガニの鳴くところ』を観た。2018年のディーリア・オーウェンズによる同名小説を原作としたサスペンスドラマ。1960年代のノースカロライナ州の湿地帯で街の人気者チェイスが遺体で発見された。保安官は湿地で暮らす〝湿地の娘〟カイアを殺人の疑いで逮捕し裁判にかける。物語は裁判と並行して彼女の生い立ちと過去が回想されつつ進んでいく。回想の中で最後の伏線は引かれているが自分の予想とはちょっと違った。  小説は日本でも2020年に翻訳されて本屋大賞の

          20240514

           所属する同人破滅派の最新刊「破滅派21号」が入稿された。ノワールをテーマに九作の創作ノワールとフィルム・ノワール紹介文が掲載されている。わたしは山荘×ノワール「森に棲む者」という短篇を寄稿している。校正の過程で同人たちからご指摘いただき、改めて自分の文章の稚拙さを実感したとともに、改稿を経てより良い作品に仕上がったと思う。モダニズム建築を代表する米建築家フランク・ロイド・ライトのタリアセンで起こった殺人事件を元ネタに、北九州連続殺人事件と神戸連続殺人事件の要素を織り交ぜて書

          20240513

           友田とん『『百年の孤独』を代わりに読む』(代わりに読む人)を読んだ。G・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)を〝代わりに読む〟という、よく分からない試みを著者が実践したnoteでの連載を三篇の書下ろしを含めて一冊の本にしたもの。テレビドラマや映画、書籍、著者の実生活での交流の話題に脱線していくことで、小説内の世界に留まらない開かれた読みを提示する。それをわたしたち読者が読むことで『百年の孤独』を新たに読んだ気分にさせる。実際にわたしは『百年の孤独』を二回読ん