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韓国の音大生たちと過ごした6日間 後半 - Bridgeの海外クラシック音楽便り

皆さん、こんにちは。
関西×音楽×学生のためのカルチャーメディア、Bridgeの前田直哉です。
今回の記事はこちらの続きです。

ネイティブの韓国語についていけるのか。
彼らは日本人の筆者を歓迎してくれるのか。
先に10か月間練習しているメンバーたちに追いつけるのか。

数多い不安を抱えながら旅立つところから始まります。

3.行ってきます!

飛行機での移動は、楽器を持ち運びする人々の悩みの種。楽器と共に旅行をする際には、客室まで持って入りたいのが本音でしょう。SNSで、空港の一部職員による楽器取り扱いの惨状が拡散され、それを見て不安に思う方も少なくないはず。

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今回利用したのはアシアナ航空。関空出発時には機内持ち込みが可能な楽器であることを示すタグを着けてもらえました。韓国旅行の際だけでなく、欧米へ向かう際もアシアナ航空は楽器吹きたちにとって良い選択肢の一つになるかも。

※筆者が問い合わせところ、仁川国際空港ではこのタグを取り扱っていないとのことでした。出発空港や担当者の指示に従ってください。

4.いよいよ練習

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今回練習で訪れた大学は、ソウル大学と西京大学校
駅がある学生街から校舎まで遠いので、地下鉄から乗換時無料のバスで練習場を目指します。

ソウル大学芸術館コンサートホール・リハーサル室
この日は編曲者も立会いの下、確認が行われました。


プログラムは、以下の通り。

1. L.バーンスタイン/キャンディード序曲
2. A.ピアソラ/ピアソラメドレー
3. C.サン=サーンス/交響詩「死の舞踏」
〜休憩〜
4. カン・ハニム編/K-POP MEDLEY
5. J.マティシア/Devil’s Rag
6. G.ホルスト/組曲「惑星」より木星
7. A.Marquez/Danzon No.2

まず、4曲目の『K-POP MEDLEY』から日本の演奏会との違いを見出すことが出来ます。韓国でサクソフォンといえば、ジャズや演歌など、クラシックを想起される方は少ないようです。

一方の日本は、全国津々浦々の学校にありマスメディアでその活動の様子が度々取り上げられる吹奏楽部、そして東京佼成ウインドオーケストラやオオサカシオンウインドオーケストラなどに代表されるプロの吹奏楽団の活発な演奏活動を通して、韓国よりクラシックのサクソフォンに接する機会は比較的多いようです。

加えて、韓国の音楽大学ではサクソフォン専攻の入学者数がだんだん減ってきているといいます。こうした状況下でクラシックのサクソフォンの演奏会を開催することは、日本と意味が幾分変わってくることが分かります。

今回のプログラムは、5曲目を除いて全てがオーケストラなどからの編曲作品です。この点で日本と大きな違いがあるとはいえませんが、7曲目の『Danzon No.2』は日本であまり取り上げられないので、聴いたことがある方は少ないのではないでしょうか。

メキシコの作品を日本で見かける機会が現状あまりありませんが、ラテンのリズムを基調とするこの作品はサクソフォンのもつ音色に非常によく合いました。日本でもこの作品が演奏される日が来るといいなと思います。

また、2曲目の『ピアソラメドレー』にもラテン系の曲を選んでいることを考えると、かつての韓国観光スローガンである「ダイナミックコリア」や、「東洋のラテン人」と表されることのある韓国人たちにとって相性の良いレパートリーのようです。

編成の面では、日本ではサクソフォンオーケストラに打楽器をよく用いますが、ピアノとコントラバスは稀な存在といえます。”オーケストラに席がないサクソフォン奏者たちが管弦楽作品をサクソフォンのみで演奏する”というだけに留まらず、倍音の拡充やサウンド全体の質感向上に大きな役割を果たしていました。もっとも、バリトンサクソフォンと演奏箇所がよく被るため、普段は元々の管弦楽版を勉強しているエキストラのコントラバス奏者の方々は演奏方法や音量バランスに戸惑っていましたが。

サムギョプサル

今見てもよだれが出る韓国料理たち①サムギョプサル
メンバーたちと学生街を歩きながら価格を見て即決。
なんと、豚カルビとサムギョプサルの食べ放題が1人約1,190円!
韓国の食堂はキムチなどのおかずが無料なのは勿論、コプテギ(豚の皮)、キムチチゲ、テンジャンチゲまでもが無料。
お肉が特別薄かったり冷凍臭いわけでもなく、とっても美味しく頂きました。地下鉄2号線ソウル大入口駅1番出口から徒歩1分。

덤뿔 서울대본점
서울 관악구 관악로16길 16 2층 (봉천동)
ソウル特別市 冠岳区 冠岳路16キル 16 2階(奉天洞)

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今見てもよだれが出る韓国料理たち②スジェビ
日本であまり有名でない”スジェビ”。えごまのとろっとろのスープに、すいとんに近く麺はきしめんのように柔らかくもこしがある麺はよく合います。刺激的なイメージの韓国料理ですが、新しい韓国料理の一面が垣間見えた気がします。地下鉄3号線新沙駅8番出口から徒歩6分。

가로수길생칼국수 신사점
서울 강남구 압구정로2길 46 강남상가 1층 19호 (신사동)
ソウル特別市 江南区 狎鷗亭路2キル 46 江南商家 1階 19号(新沙洞)

5. 待ちに待った本番当日

いよいよ2019年12月30日、演奏会当日がやってきました。筆者にとっては韓国で初めて舞台に立つ一日、メンバーにとっては10か月間ずっと練習しながら待ちわびた一日。

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リハーサルの様子。
音響設計は東京・サントリーホールで知られる永田音響設計が担当。

ところで、ずっと進行表をもらえていませんでした。肝心の楽譜は、かろうじてほぼ一週間前に全てを受け取りきる状況。連絡の問題なのか、果たして韓国ではこれが一般的なのか。今でもこの点は疑問です。

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2人のカメラマンが雇われていました。
数日後にはすぐ写真が送られてくる仕事の速さ!

そして当日の流れをほぼ理解できていないままリハーサルを全て終えると、ロビーに集合し全員でお弁当を食べるとのこと。一人でご飯を食べることが一般的でない韓国に対し、日本では近くに何かを買いに行ったり、ケータリングを準備したりします。日本人の筆者には団体の会計から全員のお弁当まで準備することには驚きでした。

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指揮で音楽監督を務められた
ソウル大学や韓国芸術総合学校等で教鞭を執るキムテヨン先生と

さらに不思議に思い質問を投げかけてみたところ、全打ち上げ参加者の飲食費を団体が負担!加えて、通常は演奏会に来てくれる家族や友人のほぼ全員に招待券まで渡すとのこと。日本では決して余裕があるとは言えない自主公演の会計ですが、この公演は満席ではなかったためどうしても心配になってしまいました。打ち上げ会場は飲食店を貸し切ってあったため無料の飲食店と化しており、メンバーが到着する前に満席になっていました。事情があり打ち上げに参加せず一人帰りましたが、演奏以外のところで様々な形でたくさんのお金が出ていく状態に、カルチャーショックを受けました。

6. 最後に

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仁川国際空港第1ターミナル

こうしてカルチャーショックの連続だった韓国滞在を終え、帰国の途につきました。日本とは大きく異なる練習中の雰囲気、演奏までの過程、本番当日の段取り、メンバーたちの筆者への対応など。筆者が一人これだけたくさんのことを感じている分、韓国人メンバーたちも筆者の発言や行動の端々からいろいろなことを感じていたことと思います。突然外国人が自分たちのアンサンブルに入ってきたことへの驚きや戸惑いの中、親切に対応してくれた一部メンバーに感謝します。

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そして、この記事を書いている途中、入国制限が始まり日韓間の往来が事実上ほぼ不可能になりました。いつしかの雪解けを待ち両国民の健康を祈りながら、この記事を終えたいと思います。

文責:前田 直哉
9歳からサクソフォンを始める。京都市立芸術大学音楽学部音楽学科管打楽専攻卒業。第17回日本ジュニア管打楽器コンクール銀賞(第2位)受賞。第23回日本クラシック音楽コンクール1位なしの2位。第22回KOBE国際音楽コンクール優秀賞を受賞。第20回大阪国際音楽コンクールエスポワール賞を受賞。アジアユースオーケストラ2018の一員として、アジア11都市を巡るツアーに参加。これまでにサクソフォンを土田まゆみ、有村純親、國末貞仁、須川展也、本堂誠の各氏に師事。
問合せ:maedanaoya.sax@gmail.com

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