見出し画像

ONE VOICE ZINE vol.5 ISAO (ASIANBEAUTYMURDER,DISTANCE)

第5回目となりました。4回に1回はスピンオフ回を挟もうと思い、いつもと少し内容を変えてお送りしたいと思います。今回お話を伺ったのはASIANBEAUTYMURDER,DISTANCEのイサオさんです。

また身近なとこからか!とのお声もあるかと思いますが訳がありまして…ONE VOICE ZINEでは過去4回、個人のライフストーリーだったり、割と大きな流れを扱ってきました。なので今回はスピンオフ、もとい実験回と言う事で『「◯◯(バンドなど)の事なら◯時間は話せる」という人は本当に話せるのか?』を実証して貰いました。
題して、

◾️ハウンド・ドッグを語ろう

です。今回に合わせてザックリ調べて来ましたが、KMは”ff(フォルティシモ)”を「ホルテッシモ」と言い、大友康平ぐらいしかハウンド・ドッグは知りません。そんな方も多いかと。そこにイサオさんはどう語るのか?
それではどうぞ!


ー前にイサオさんと話した時、今HOUND DOG(以下ハウンド・ドッグ)のCDを買い直してて、ルーツだから「ハウンド・ドッグなら1時間は話せる」って言ってたじゃないですか。なら1時間いってみよう!と。

ちょっと盛りましたけどね(笑)最初に断っておくと、僕はガチのドッグキッズじゃないので、バンドのうんちく自体だと弱いかもです。

ーとりあえず45分はいってみようってことで(笑)まずは出会いから。生まれは東京でしたっけ?

いってみましょうか(笑)
生まれは東京ですよ。ずっと八王子。

ー初めて買った音源がハウンド・ドッグなんですか?

違うんですよ。小学校の高学年ぐらいに安全地帯を買ったのが最初でしたね。厳密に言うとミュージックテープなんですけどね。僕が子供の時って、結構ベストテン番組が多かったんですよ。一番有名なのだと、黒柳徹子のザ・ベストテンですね。それで安全地帯が売れてたって事でね。クラスの友達とかも聴いててって感じです。
そもそもエレクトーン習ってたんですよ。ヤマハ音楽教室の。だから、それまでバンドサウンドだとか、今で言うJ-POPとか全然触れてこなかったんですよ。

ーエレクトーンは何歳ぐらいまでやってたんですか?

中二ぐらいまでですかね…部活とは別に習い事としてなんですけど。

ー部活と習い事を一緒にやってるって珍しいですね。

そうなんですよ。思春期の男子がエレクトーンなんて嫌だったんですけどね。中二ぐらいにもなるとカリキュラムもそう無くなってくるし、最終的にはYAMAHAのDX27ってFM音源のシンセで音作りとか、そんな感じになっていきました。でも今は幼稚園の頃から音楽に触れさせてもらったのは両親に感謝しています。

ーちなみに何部でした…?

剣道部なんですよ。

ー剣道部きた!(3人目)

うちの父親が剣道の先生だったんですよ。それで剣道やって欲しかったみたいなんですね。剣道部入ったらファミコンのディスクシステム買ってやるって言われて(笑)すぐ辞めましたけどね。
そういう事もありつつ、僕は中学が嫌で嫌で仕方なかったんですよ。いじめじゃないけど、イジりというか、そういうものがあって本当に嫌だったんです。で、悶々として家に閉じこもってテレビばっかり見てる奴だったんですね。そんな…中二の時かな、日本テレビでエベレストの頂上から衛星生中継するっていう番組があったんですよ。「チョモランマがそこにある!!」って番組なんですけどね。

テーマ曲がハウンド・ドッグの"Ambitious"だったんですよ。その時に(格好良いな、こういのもあるんだ)って思って。それがファーストコンタクトでしたね。それでシングルのテープを買いに行ったんです。安全地帯に続いて2枚目って事になりますね。"Ambitious"が88年の4月にリリースされて、チョモランマが5月に放送されて、同じ年に広島で南こうせつ主催の広島平和コンサートがあったんです。それをNHKで放送していて、たまたま見たんですけど、トッパーでハウンド・ドッグが出てきて「あ、これか」と。

件の"Ambitious"ですね。これは今観ても「がむしゃらでいたいぜー!」からのイントロで涙腺崩壊します。鮫島先輩の謎の紫タイツも注目です。

ー初めて動いているハウンド・ドッグを見たわけですね

ですね。チョモランマが5月でこれ(ピースコンサート)が8月なので良いタイミングでした。その時にギターの西山毅を見て衝撃を受けて「こりゃエレクトーンとかやってる場合じゃ無いぞ!」って思って。なんと言ってもギターなんですよ。ストラトの赤いボディに黒ピックガードの黒ヘッドっていう。

画像1

※もちろん最近の御近影です。

参考元:https://ameblo.jp/ksgsntm/entry-12537123982.html

このギターが凄く格好良く見えて。ff(フォルティシモ)のロゴみたいなのが入ってますよね。「これ弾いてみたい」って思ったんですよね。貯めてたお年玉で八王子のROCK INNにギターを買いに走りました。

ー自分調べによると、西山毅は中学時代は空手部だったそうです。

(笑)前回の…タクヤンがそうでしたよね。

ー大学で空手部ってやつですね。それで、このギターのルックス…というかモノの魅力から入ったって事なんですね。

そうですね。モノも勿論ですが、西山毅の立ち振る舞いも格好良くて。テクニックも凄くて、特殊な技法とか効果音みたいなのとか、これ一本で出しちゃうんですよ。それが凄いなあと思ったのがギターを始めるきっかけですね。

後々になって、この赤いギターは西山毅モデルじゃなくて、NIGHT RANGERのブラッド・ギルスのモデルだったって知るんですよ。これですね↓

画像2

ーなるほど…ffが付いてないだけなんですね。

でも西山毅が横取りしたわけじゃなくて、西山毅がこのギターのカスタマイズをフェルナンデスにオーダーしてたみたいなんですね。で、そうこうしているうちに「これ、西山毅モデルにしちゃいません?」ってフェルナンデスから打診されたみたいなんですよ。それでそのままなっちゃった…っていう。

ー雑な…大らかな時代ですね(笑)

ハウンド・ドッグって武道館で15日間連続でライブをした記録を持っているんですけど、その前に、ヒット曲も大して無い時代にも武道館でライブをしているんですよ。もともと仙台のローカルバンドなんですけど、ローカルながら50本60本のツアーとかもガンガンやっていたんです。世間やマスコミの注目も無く出来るっていうのは、そういったライブバンドだったからなんでしょうね。

ーお客さんが付いてたわけですね。

そうなんです。でも武道館の次に地方のライブハウス…となると落胆もあったみたいですね。
というのはこの本から知った情報なんです。

画像3

イサオさん私物。年季とガチを感じます。

ハウンド・ドッグというより大友康平のヒストリーを脚色して書いてるみたいな内容なんですけどね。中学校の時に買ってひたすら読んでました。今回のオファー受けて、久しぶりに読み直してみたんですけど、今の、少なからずバンドマンの端くれとして読むと、また違った印象を受けますね。

ーいつ頃に出版された本なんですか?

86年ですね。内容は仙台でやっていた頃から、"ff"が入っている"Spirits"っていうアルバムがリリースされる頃までの話です。

ー僕は正直ハウンド・ドッグの曲は"ff"くらいしか知らないんですけど、イサオさんの特に好きな曲やアルバムや時期ってあるんですか?

さっきも言ったように、88年の"Ambitious"が入り口なのは間違い無いんですけど、ハウンド・ドッグで好きなのはメンバーチェンジする前の、アルバムで言えば"POWER UP!" "BRASH BOY" "DREAMER"ですね。

画像4

"Spirits"っていうアルバムは…収録されている"ff"も「どうなのかな?」って思ってるぐらいなんで。"Ambitious"が入ってる"Gold"ってアルバムもそれ以外は…って感じですし。

画像5

ーアルバムのアートワークだけ見ても"Spirits"を境に変わっていますね。その前は不良性というかワイルドだったり尖ったイメージですが、その後は健全な無難な方向性というか…。

そうですね。やっぱりメンバーチェンジをしただけじゃ無くて、音楽性も大きく変わっているんですよ。

ー84年にその大きなメンバーチェンジがあるわけですが、今のイメージを決定づけるぐらい大きなものだったんですね。

そもそも大学の仲間でやっていたのが、話が大きくなっていって、色んな大人も絡み始めて、スキル面で求められる部分だったり、仕事として音楽をする事の意識だったり、メンバー間で差があったみたいですね。全部「負け犬」参照なんですが(笑)
それでメンバーチェンジとなるわけですが、ベース、ドラム、ギターと抜けて、ベースが海ちゃん(海藤節生)から、元ツイストの鮫島先輩(鮫島秀樹)が入ってくるんですよ。

ー海から鮫が出てきたぞ、と

いいっすね(笑)鮫ちゃんと言うと、大友康平がライブ中にパイロ(演出用の花火)が暴発して目を負傷して、一旦袖に下がるんです。その間、指揮を取って繋いで、翌年の同じ日のライブ「誓いの日」に漕ぎ着けたってエピソードがあるんですよ。その時の漢気っぷりは↓の動画を見て貰えたらと。

ーどのぐらいまで追っていたんですか?今も?

80年代ぐらいまでですね。僕が聴いてたのは88年に出た"Gold"までです。そこから遡って聴いていって、メンバーチェンジ前が好きだなってなったので。なんか大友康平のボーカルもクドくなってきちゃったし…。最初の3枚くらいは声も出ていてラフで良かったんですよ。でもメンバーチェンジ前ぐらいに一度声を潰しかけたんですよね。酒タバコとやっていたのが祟ったのか。それでどんどん大友康平がタレント化していくんですよね。そうなったら興味が無くなって追わなくなりました。タレントが歌ってるハウンド・ドッグなんて聴きたくなかったですし。ここ最近は訴訟問題とかもありましたしね。

ーざっくり言うと、バンドの所在を巡る、大友康平1人vs他のメンバーって構図の訴訟なんですよね。その時の事って把握していましたか?

いや全然。なんかやってるなあぐらいでした。そんな事やるなら辞めちまえって感じでしたし。あんまり知りたい話でも無いですよね。メンバーチェンジ前のハウンド・ドッグってメンバーが大友康平のファンなんですよ。かといってワンマンバンドってわけじゃなく、この逸材を世に出そう売り出そうって感じで、そういう集まりだったんですよ。

ーそこで後から入って来た人達はスキルもキャリアも考えもあるから、軋轢が生まれると厄介なんでしょうね

やっぱりマザーエンタープライズ(ハウンド・ドッグの元所属事務所)を出た辺りから何かおかしくなっていったのかもしれないです。そこを抜けてイエホックって個人事務所を立ち上げたのが発端かと。"イエホック"って"KOHEI"を逆さにして読んだ名前なんですよ。

ー I E H O K…うわ、本当だ…。なんでこんな名前にしたのかと不思議だったんですよ。

ここらで是非見て欲しいものがあるんです。僕の黒歴史の中学校時代の図工の時間に12インチヴァイナルジャケットを作ろうってあったんですよ。その時に作ったものなんですけど…。

1987年リリースの"BE QUIET"をモチーフにしたんですけど、元がこれで

画像6

僕が作ったのはこんな感じです。

画像7

ーうお…ナマモノの黒歴史ですね…!(12インチレコード大です)

それで裏面がこうなんですけど、

画像8

ハウンド・"ドッグ"なのでオオカミでは無いんですよね。これって、いかにも中学生の発想だなって(笑)

ー同じイヌ化だからセーフじゃないですか(笑)にしても物持ち良いですね。

このhd6っていうのが"Hound Dog 6"で「6人でやっていくぞ」って事なんですけど、僕が作った方の表ジャケのシルエットとかもそうですし、元ネタの裏ジャケを参考にして作ったんですよ。

画像9

シルエットとhd6って書いてますよね。で、この下に"Romantic Warriors Hound Dog 6"って書いてあるんですよ。これは嫌いじゃないぞと(笑)

ー良い感じに胸がぞわぞわしますね…!でもハウンド・ドッグはバンド的にも色々あったし、イサオさんにとって愛憎半ばなところがあるんですか?

うーん…憎に関しては最近になって大人のゴタゴタがあって出て来たってだけで、そこの部分は気持ちは切れてるんですよ。基本的には愛ですね。感覚的には海外の70年代とか、もう観れないバンドを聴くみたいな感じですね。メンバーチェンジ前とかね。出会ってなければギターをやっていても別のベクトルだったかもしれないし。

ーやっぱり影響ってあるんですか?ハウンド・ドッグからの

それは無いです(きっぱり)。

ーあれ

音楽的なのは無いですよ(笑)きっかけです。きっかけを与えてくれたって事ですね。その後すぐ有頂天や筋肉少女帯のナゴムレコードの方に興味が移っちゃったので。プレイ的なのは全く。

ーとはいえ出発点だったって事なんですね

それでわかったんですけど、今現在ハウンド・ドッグを聴くのは、過去を振り返る事とイコールなんですよ。あの悶々とした時代は何だったのか?という事を思い出すのと繋がっているんです。その上でルーツ、出発点であった事は紛れも無いですね。

ー良くも悪くも10代の頃や最初の音楽経験に聴いていたバンドっていうのは、その時期の諸々を思い出すきっかけになるのかもしれませんね。しかし行けるもんですね。ハウンド・ドッグで1時間。

※何だかんだ1時間ぐらいでした。


◾️VIPERもちょっと語ろう


4回に1回がこういうスピンオフ回なんですよね。次またこういう試みをする事があったらVIPERで是非…そっちの方がもう少し語れるかと思うので(笑)

出た(笑)イサオさんは過去回で「VIPERと言えばイサオさん」というフレーズが飛び出すぐらい一部では国内有数のVIPERフリークだと思うんですけど、そういえばVIPERとハウンド・ドッグの違いって何ですか?

メンバーの絆ですね(きっぱり)。VIPERは本当に仲良いんで。

画像10

画像11

ーそんなにメンバーチェンジとか無いんですか?

メンバーチェンジありつつ、結果的に丸く収まるんですよ。尚且つ売れたANGRAに嫉妬する事なく、ANGRA人脈も上手く活かしつつという。

そうそう、ブラジルから先週リマスター盤が発送されたんですよ。どんどんVIPERのカタログが増えていっちゃってます。


ー最後にひとこと頂けますか?

誰だお前?って感じの奴のハウンド・ドッグの話を聴いて貰って有り難うございます。しかし本当に良いんですかね?ハードコアシーンや色んな人が見ていそうなところで。

ー全然構いませんよ!自分の場合"人の話"を聴いていて、そのまとまったものを作りたいのであって、そこに有名無名は関係無いです。

最後に一つ付け加えると、このインタビュー(zoom)をしている間、KMさんの背景が『例のプール』だったって事で。

画像12

ー気付いてましたね(笑)もう背景迷子になってて…。


いかがでしたでしょうか。資料まで用意してもらって恐縮の至りです。イサオさんは山の方にも造詣が深いのですが3回連続で山になっちゃうので、敢えて聴きませんでした。。
僕は本当にハウンド・ドッグに関しては何も知らず、大友康平以外のメンバーも知らない状態でしたが、自分でも調べてみて、掘っている人に聴いてみると、「ハウンドドッグ」じゃなくて「ハウンド・ドッグ」など世間一般のイメージとは全然違うところにこだわりがあるんだなと発見でした。半角スペースとか大事ですよね。バンド名。
世間一般と言うと、ギターの西山毅はLinked Horizonにも参加していて「進撃の巨人」のOP曲で紅白にも出演していたとの事です。

後日イサオさんにメンバーチェンジ前と後の曲を聴かせて貰いましたが、やはり84年以前は影響を受けたと言っていたキャロルの影も有りつつ、ドライブ感のあるロックンロールで、メンバーチェンジ後より軽い感触はあるものの、ライブ映えしそうな雰囲気だったのが印象的でした。

本編でもチラッと触れましたが4回に1回はスピンオフ・実験回を挟む予定で、今のところ第10回目が次回となっております。果たしてそれまで頑張れるか?今後にご期待ください…。




※ONE VOICE ZINEでは投げ銭で運営費を募っております。もし宜しければpaypalかnoteのサポート機能などで、ちょろっとご支援頂けると幸いです。
https://www.paypal.me/kanjimatsui?locale.x=ja_JP


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?