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ONE VOICE ZINE vol.8 Closh (WETNAP)

■まえがき

ご無沙汰しております。第8回目のONE VOICE ZINEです。今回はCloshさんです。現在はWETNAPでベースとボーカルで、ゲタゲタのシンセベースやthe doodlesなど、過去にやっていたバンドでご存知の方も沢山かと思います。その他パンクシーンなどを取り扱うTHRF ZINEの発行、普段は保育士として働くなど、様々な面を持っています。ovzではお馴染みの質問から、ベタ過ぎて普通は有り得ない質問など、色々とお話を伺ったので楽しんで頂けると幸いです。
それではどうぞ!


■WETNAPに関してはこちらを参照

ー音楽やWETNAPに関する事は新宿ナインスパイスのIKKIさんのnoteに大体書いてあるんですよね。事前取材として、こりゃ有り難い!と思って読んでました。

あれも…凝り性なんですよWETNAP。ナインスパイスのIKKIさんからメールインタビューしたいってお話を受けて、どの質問にどう答えるか?ってバンド内で揉み直したりしたんです。あらかじめ質問は頂いていたんですけど、この質問はAxanoさん、この質問は私、この質問はなげやりくんみたいにして、結局三分割にしました。

ー言われてみればそんな感じしますね。

このやり方になるまで凄く話し合ったんですよ。居酒屋で飲みながら(笑)この質問には誰が…って録音しながら話してたんですけど、誰が文字起こしするの?みたいな事になって。それでヨコチンさんっていうインディーズ系のインタビュー書いてる人がいて、今からその人呼ぼう!とかなったりしたんですけど、結局ヨコチンさんはアドバイス、文字起こしは自分たちで、それぞれで書く形になりました。久しぶりに思い出しました(笑)

ーインタビューの裏側はそうなっていたんですね。あとは↑の記事を参考に…。zineの方も主旨説明しっかりされているので、いつも通りパーソナルなお話を伺っていきたいと思います。


■生まれや育ちなど

ー生まれはどちらですか?

千葉県の柏生まれ柏育ちです。

柏っていうとKCHC(kashiwa city hardcore)ですよね。でも高校は鎌ヶ谷で、住んでるところも松戸と柏の市境みたいなところなので、まー柏ハードコアとかユニオンとかの印象は全然無いんですよ(笑) 祖父母宅が東京で、田舎の方がもっと都会で、住んでるところが東京より田舎。親戚も東京が多くて、関東近辺から出てないってイメージです。柏で生まれたので柏のハードコアを調べないと…って思って止まってる感じですね。
でも凄く印象に残ってるのが、kamome kamomeが、FIXEDとかな?何年か前にBush Bashでやった時があって。

同郷の格好良いバンド、でもシーンがちょっと違う…と思って見てたんですけど、MCで「過疎化していく街、我孫子!!」って言ってるのが響きまくって(笑) もう老人ばかりの坂道が多い街なので。kamome kamomeのvo.と私の見ている情景がリンクして、リンクし過ぎて、だけなんですけど、ちゃんと聴かなきゃなと思ってます。

ーkamome kamonmeは歌詞の情景描写が秀逸ですよね。個人的に、何か画があって、その中で何かが動いている印象があります。


■部活について。調子に乗って…


恒例の質問なのですが、部活は何をやっていましたか?

部活は…このナリからして(肩をぱんぱんと叩く)からしてなんですけど、運動部、ソフトボール部でした。小四の頃は校内の陸上部に入ってて、その傍ら土日に地元のソフトボールチームに入ったのがきっかけで、小学五,六年までやっていたんです。弱小チームというか…競技人口は少なかったんですが。そうしたら六年生ぐらいの時に体格が良くなってボールが飛ぶようになって、投げられるようにもなったんです。それで調子に乗っちゃって中学は強豪校に行きました。

ー強豪!ソフトボールの?

そうです。柏じゃなくて松戸市なんですけどね。松戸ってソフトボールに力を入れていて、地元の中学には行かず、越境入学したんです。そしたらメチャしんどくて…しんど過ぎて不良になってました(笑)

ーあらら。ちなみにポジションは?

ポジションはライトです。ライトの七番。とてもやる気の無さが滲み出る…

ーこういうとアレですけど…コメントしづらい位置ですね…(世界のライトで七番の皆さん、申し訳ありません)

ですよね(笑)でもフライを取るのは好きで。後ろ向きで取ったり、みたいな。
外野ノックの練習とかする時にコーチ…とは言っても学校の先生なんですけどね、副部長の友達と話していて。そしたら雲が凄く綺麗だったんですよ。夕暮れちょっと前の、夏だったんで尚更。富士山みたいだったんです。
C「見て!あの雲、山みたいじゃない?超綺麗じゃない?」
副「ほんと凄いね!綺麗だねー」
って先生に背中向けて喋ってて。

ー嫌な予感が…

今思えば、あれは私の青春だったなーって景色ではあったんですけどね。全部打ち終わったのでボール拾いの時間があるんですけど、先生が「おい!ちょっと来い!」みたいに呼び出して、副部長だけ怒られているんですよ(笑)「黒坂(Closh)は、あいつはしょうがない!でもお前は副部長なんだからノックに集中しないと!」みたいな。

ー理不尽というか露骨というかですね…。

そうなんです。その時に私は社会を知ったんです(笑)この経験が、私のパンクが好きなマインドに繋がっていくんですよ。

ー中学でその原体験は後々暗い陰を落としますね。

はぐれものポジションにいる事が多いんですけど、ダークサイドまで言ったら言い過ぎかな、外れたところから中心を見るような。部活の思い出話やばいですね(笑) でも9年間もやっちゃったんですよ。

ー9年って事は高校でも?

そうなんです。高校は最初バンドがやりたくて、軽音楽部がある高校を探して受験して行ったんです。そうしたらその軽音楽部が…Supe◯flyとかを学年の可愛い女の子が集まって演奏するみたいなところだったんです。うわーこりゃだめだと。そんな時、たまたま同じ高校だった副部長が「顧問から勧誘もされてるからソフトボール部入る、黒坂もやりなよ」って言われて。「じゃあやるー」って感じで9年間もやりました(笑)

ーまた出た副部長(笑) 高校はソフトボール強豪校だったんですか?

全然!高校はユルいところでした。

ーポジションは同じような?

センターで一番です。格上げしました(笑)

ー良かったですね!中学とエラい差ですね(笑)
(世界のライトで七番の皆さん、申し訳ありません)


■好きな食べ物・嫌いな食べ物

ーこれ…本当にどベタ過ぎて恐らく誰もやって来なかった質問なんですが、ちょっと実験的にやってみたいのでお付き合い頂きたいんですけど、好きな食べ物と嫌いな食べ物は何ですか?ひどい質問だなとは承知の上なのですが…

食べ物ですか(笑) 最近は結構好き嫌いなく食べてるしなあ…。昔は寿司や刺身といったナマモノが苦手だったんですけど、今は好きになりました。徐々に克服?無くなって行きましたね。

ーそうしたら粒立てて聞いていきましょうか。例えばグリーンピースはどうです?

好きです!食べられます。グリーンピース嫌いな人多いですよね(笑) ミックスベジタブルとかそのままいけます。

ー実は最近グリーンピースに対して「これ気付いたらおしまいだな」って思うようになって来ていて…。

気付く(笑) 昔嫌いだったとかですか?

ーいやー昔も今も変わらぬ付き合いなんですが、意識して一粒二粒と噛み締めたら何か気付いちゃいそうで…。

枝豆とそら豆の中間みたいな感じじゃないですか?

ーなるほど!それでやり過ごせば良いのか!ほら、たまに生っぽいのとかあるじゃないですか、あれが地雷じゃないか…って質問と答える方が逆になってますね(笑)

あ、思い出した。この食べ方が生まれたのがわけわかんないと思うのが、昔、給食とかに出ていたフルーツ入りのサラダです。

ーあぁ…(深い同意) サラダの他に酢豚とかカレーとかもありますよね。あれば食べる系なんですが一度も釈然とした事が無いです。

ミカンとかパイナップルとかですね。これは別で食べれば良くない?!と。私の中では意味不明。イミフ中のイミフです!なんでサラダと一緒に入ってるのがわからない…別皿のデザートで良くない?!と思います。

ーカレーの場合なんですけど、好きな人に言わせると、あの存在が口の中をさっぱりさせてくれるんだそうです。一旦リセットして、また次、みたいな。カレーの福神漬けの変形的な?

へぇ…(納得していない模様) 
前後してしまいましたが、好きなものだと蕎麦つゆが凄く好きです。

ー甘いの辛いの(塩っぱいものという意味です)どっちですか?

辛いのですね!醤油っぽいやつ。お酒飲むのが好きで、たまに一人で晩酌するんですけど、水飲みたいなと思って飲んで、なんか塩っぱいものを…と思った時、もう23:30か、固形物入れるの嫌だなあと。それでおもむろに蕎麦つゆをコップに入れて水道水で飲むんです(笑)

ーそれ、案外間違いでも無いんですよね。
お酒飲むと身体の水分も塩分も失われていくじゃないですか。そうなるとポカリとかでも良いんですけど、それだと糖分も摂っちゃうので良くなくて。経口補水液なんて言うと大袈裟だし。そうなると家庭のものなら蕎麦つゆ麺つゆが良いそうなんですよ。風邪引いて全く食べられない時の味変に良いみたいです。
※後日調べたら、ベストでは無いけど、やるなら少し水っぽいなと思うぐらいの濃さで丁度良いそうです。

そうなんですか!にんべんのつゆとかを濃い目に希釈して…とかやってます(笑) コップで飲むのはどうなんだ??とか思いながら。

ーにんべん…今度試してみます!

それと話してて思い出したのが、八角がダメですね。あの甘ったるい匂いというか何というか…。好きなもの蕎麦つゆで嫌いなもの八角って、どうなんだ??って思いますけど(笑)

ー八角はわかります。昔、近所にやたらと八角の匂いがするラーメン屋があって…(以下、奇妙なラーメン屋の話に) 

※後日談
ー改めて読み返してみたら、この話題が際立ってカオティックでした。人となりを知るエピソードって事で…果たして次回はあるのか?!

C(実験的でいいと思います!笑)

■音楽への入りは?

ー音楽を聴くようになったきっかけを聞いて行こうと思うんですけど、今までのovzの傾向だと、大まかにですが、そもそも音楽を聴くようになったタイミングと、バンドとかに繋がる"目覚めた"タイミングが各々あるんみたいなんです。聴くようになったきっかけは何かありますか?

聴くようになったのは…小学生の頃ジャンプで「NARUTO」をやっていたんですよ。凄く好きで、アニメの主題歌のコンピレーションアルバムを親にねだって買ってもらったのが最初ですね。そこからアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)を聴くようになって、中学はアジカンを聴いていましたね。今聴くとエモとかメロディックとかの素養がそこで培われたのかなと。

ー入りとしてちょうど良いんじゃないですか。

その後、高校の頃とかは、コンピレーションに入ってたのでガガガSPとかサンボマスターとか、いわゆるロキノン系とかを聴いていましたね。TSUTAYAで借りたりして。こう言うと真っ直ぐ育ってましたね(笑) 
それで高校一,二年くらいにipodのCMに使われていたThe Fratellisがめっちゃかっけー!って思って。

それから同じようにCMで使われていたGORILLAZとかBlurとか、聴くようになって洋楽の扉が開いていったんです。それとInterFMが好きで、曲名とかは調べずに流し聴きしたり。
あとはアジカンのライブに行った時にオープニングアクトでDÉ DÉ MOUSEが出ていて。そこから低音とかがスピーカーから直に出てくる感じにハマってしまい、ニコニコ動画とかからですけど、Aphex TwinとかSQUAREPUSHERとかを並行して聴く謎状況になって…(笑)みたいな高校時代です。

ー今のところ真っ直ぐ?順調に来てますね。


■ロック研究会〜ハードコア、パンクとの出会い

大学に入ってパンクとかに目覚めて行くんですけど、その時シンセを買ったんです。それで電子音楽やエレクトロニカを作るサークルに行きてーと思って色々探したんですけどバンドサークルしか無くて。コピバンサークルですね、チャットモンチーとか9mm Parabellum Bulletとか。違うんだ!エレクトロニカがやりたいんだ!って大二病を拗らせていて(笑)
その時「ロック研究会」っているオリジナルをやっているサークルがあって。その時の部長が今KLONNSでドラムを叩いているオカモトさんだったんですけど、電子音楽とかやりたいなら出来るよっていうのがあったので、そこに入りました。

ーそれまでバンドを組んだ事や楽器の経験は?

全然!組んだ事無かったです。楽器も。入ったは良いもののDTMの経験も無かったし、とりあえず私がシンセを弾いてベース弾いて貰ってドラム叩いて貰って…っていうのが最初のバンドです。
その時The コントルズっていうハードコアバンドがいて、ロック研究会の看板があるんですけど、そこにBLACK FLAGの書体にゴキブリの絵が描いてあって"ROCK SOCIETY"って書いてあって、そういう色が濃いサークルだったんですね。WIPESでvo.やっているぶっちさんもサークルの先輩だったんですけどGERMSのコピーやバンドをしたりしていて。伝統的にハードコアやパンクに強いみたいなんです。それで先輩のライブを観て行くうちに「ハードコアとかパンクかっけー!」ってなって。
私、身体を動かすのが好きなんですね。電子音楽は低音の出力は好きなんですけど…動きが無いですからね。それだったらハードコアやパンクの方が自分の身体的なアウトプットにも合うし、もうカス!みたいなのからストレートエッジみたいなのとか、色んな思想の人がいて、パンク好きかもしれない!って思うようになったんです。
そこから先輩に当時USBからmp3で音源を入れて貰って聴いてたんです。8Gにマックスみちみちで入れて貰ったりして。それでバンドをやるようになりました。

ーバンドを始めた時に買った音源で印象的なのはありますか?

世代的なものあるんですが、とにかくお金が無い大学生だったんです。なので音源を借りて取り込んだら次の友達に回していたんですね。それで(これは音源が転がってないだろうな)と思って買ったのはThe Panicsです。Killed By Deathみたいなのとか、へなちょこパンクが好きだったので。

YouTubeで聴いて、足りないなと思ったら買う感じです。
どちらかと言うとフィジカル音源に関してはだいぶ邪なスタンスなのですが…(笑) 記憶に残して血肉にするイメージで買っていますね。
こんな感じのジャケなんですが…初期衝動って感じですよね(↑のジャケ画像を見せてもらう)

ーこの辺は結構弱くて…。近年になってから努めて聴くようにはなったんですけど、やっぱり80年代後半から前には行けないんですよ。

ですよね。メタリックだったりクロスオーバーなハードコアが好きな人と、私みたいなKilled By Deathとか初期衝動的なパンクを聴く人って、音質や音像の作り方が大きく違うと思う事があるので、KMさんは凄く頑張って聴いてるなって感じがします(笑)

ーお恥ずかしい限りです…。

私が好きになるポイントって音質の悪さだったり演奏の拙さだったりするんです。何でそこで溜めた?!とか"♪トコトコトコトコ…タンタンッ"って、そのタンタンッて何?とか、ツッコミながら楽しむ。でも本人達は至って真剣みたいな。そこの可愛げだったり人間くささが好きなんですよね。初期パンク。
(敢えて擬音でお楽しみください)
C(自分説明下手でわらいました笑)

ー良い味わい方ですね!ヘタクソって練習したら無くなるので、愛しくて仕方ないですよね。


■バンド活動〜ゲタゲタ

ー初めて組んだバンドはサークル内で?

そうです。私がシンセで。良いように言われ過ぎなんですがPortisheadみたいな感じの…。それがうまく行かなくなって、学外で組んだのがゲタゲタです。

ーだんだんと現在に近付いてきましたね。

当時パンクバンドがやりたいなと思っていたんです。そこにサークルの一個下の女の子が高校の時もバンドやっていてvo.やってたって言うので「どんなバンド好きなの?」って聞いたら「あぶらだことか好き」って言うので、じゃあ一緒にやろうよと。ギターも弾けるって言ってたんですけど、そんなに弾けなかったのでvo.に。ドラムは、私は哲学科だったんですけど、同じ学科のコピバンをやっていた子を誘って、もう1人はロッ研から。そんな感じで女の子4人で始めたのがゲタゲタでした。
その頃、私はDead Kennedysがめっちゃ好きで、GERMSとかUSパンク、GANG GREENとかも好きで、それでベースを弾いていたんですけど、ギターの子がゲタゲタを辞める事になったんです。その時に入ってくれたのが剤電さんで。「ベースをシンセでやったら面白いと思うんですよね」って言ったら「良いんじゃないの?やってみれば?」っていう具合で。剤電ギターの私がシンセベース、ドラムはナツミさんっていう今アイドルやってる人と、vo.のヤナイさんっていう体制になりました。

ーちょっとした紆余曲折を経ていますね。

ヤナイさんのvo.が好きなんですけど、スクリームで喉でノイズを出すか?という事に凄くこだわりがあって。ディストーションがかった音を常に出し続けるか?みたいな。そんな奴いねーと思ってたんですけど、グラインドコアのような出し方でハードコアパンクに寄せる、みたいな感じですね。それにシンセベースとギターとドラムが乗る、と。それから楽しくやっていたんですけど、20代前半の人生の紆余曲折があって解散しちゃうんですけどね…。それぞれの精神的なバランスだったり、色んな事が変わってきますしね。バンド内でケンカもしましたし…。でも、vo.が歪み要素を担って、剤電さんのギターが、元々ベーシストという事もあってテケテケテケテケ…とそれに近い音、クリーンギターでメロディーを出して、それにシンセやドラムと組み合わさって面白い事やってたなと思います。


■就活や仕事の話など

ー20代の紆余曲折というのは就職とか?

いや…私はちょっと…就活が出来なかったんです,

ー僕もやりませんでした。そもそも大学にハマっていなかった…。

え、やっぱり?そうなんですか…。でもおかしくないですか?就活出来ないって。

ー(やっぱり?)  バイトしてバンドしてライブ行ってみたいな生活でした。自分の場合、幸運にもそれで食べていけて、正社員まで行けた事が大きいのですが…。

大学の頃はバンドが楽しかったし「いかに個性を高めていけるか?」みたいな事をやっていたのに、就活となると、髪を黒くして束ねてスーツを着て、みたいな。どうなの?って言われるかもしれないんですけど、そんなルートがあって、それで働きに出るって事が、その格好が出来なかったんです。日本的というか…同化を強要する面があるじゃないですか。一人一人を見たり、企業用に見たりすると違うと思うんですけど。それを強いられる感じが凄くしんどかったんですよね。

ーキツいですよね。新卒とかの就活は決して万人が出来る事じゃないと思うんですけどね…。

それで私は哲学科でバタイユの美術論の教授のゼミにいたので、それにこじつけて、夜間のデザインの専門学校に一年間通って、雑貨メーカーのデザインの仕事に就いたんです。

ーその間バンドは?

バンドしながらバイトしながらですね。
その会社はデザイナーの社長がいて、その下にいる私たちも簡単なデザインをするんです。でも、その社長が家業の製造業から独立した人だからか、社畜精神が凄くて…。(これは一生の仕事は無理だ)と思って、二年間は頑張ったんですが辞めて、ディス◯ユニオンでバイトする事になったんです。

ーあの赤と黒のところですね。その頃のバンドは?

ゲタゲタもやってたんですけど、大学生の頃にthe doodlesっていう'70sリバイバルみたいなのがやりたくて始めたバンドがあって、それはベースですね、並行してやっていました。

それから会社を辞めるぐらいにthe doodlesが活動休止したり、当時VOTZCOだったAxanoさんと知り合って…の時期です。

ー冒頭のインタビューに繋がっていく、というわけですね。


■身体を使おう

ー保育士になろうとと思ったのはどういう経緯からですか?

私は保育士の仕事けっこう合ってると思うんです。パンクとかにも通じる部分があるなと。

ーパンクに、ですか。

デザイナーの仕事辞めて、ディスクユニ◯ンでバイトするんですけど、バイトなのでお金はあまり入って来なくて。一人暮らしもしていましたしね。それで「この生活は無理だ!」と思って八ヶ月ぐらいで辞めるんですよ。この時点で転職2回していますしね。もう失うものは何もない!と開き直って。でも物作りとか、資本主義的なものが苦手で。売るのが苦手なんですよね。

ーわかります。"在庫"っていう言葉が物凄く苦手です。

そうなんです。在庫とか売れ線とか…。デザインの仕事は嫌いじゃないんですけどね。自分の趣味趣向がはぐれものっぽくて、大衆向けにとか考えても、完全にちぐはぐなんですよ。ユニオ◯なら…と思ったけど、売れ線を読まないといけないですしね。だったら何が出来るかな?って考えた時に「身体を使おう、清掃だ」と思ったんです。

ーずいぶん飛躍しましたね!

清掃の仕事をしようと思って、ハクビシン駆除の仕事をやっている会社と保育園の清掃をやっている会社を受けたんです。もうやけっぱちだったんですけどね。ハクビシンは落ちたんですけど、保育園は受かったんですよ。それも正社員で、土日休みで。これならバンドも出来るし丁度良いなと。それで保育園という現場に入ったのがきっかけなんです。清掃やろうと思っていたので、保育士というのは考えていなかったんです。

ーですよね。どういった心境の変化があったんですか?

当たり前の事なんですけど、色んな子どもがいるんですよね。生まれて三年、なんなら生まれてゼロ年でも、大人しい子もいればヤンチャすぎる子もいればで。でも皆んな何かしらへっぽこなんですよ(笑) 服を着ようにも「出来ないー」とか「全部出来るー!」とか言ってるのに、ねじれて着てるとか。凄く面白いんですけどね。それが私の、黒坂理論なんですけど、初期パンクに繋がって。売れてないし、枚数もそんなに刷らないんですけど、色んな個性があって、みたいな。どのジャンルでも同じだと思うんですが、それと同じ様なものを子どもにも感じて。それに働いている保育士さん達もTシャツにズボンで、なんか楽そうだなと(笑) 資格があった方が少しでも楽になるだろうし、保育士の勉強してみようかなと。


■保育士試験の裏?で…

ーどうやって勉強したんですか?在宅?学校に通うとか?

家で勉強しました。保育士試験って九科目あって、例えば五科目取って四科目落としたとしても、翌年に落とした四科目を取れば良くて、受かった五科目はプール出来るんですよ。でも長期間勉強するのが嫌だったので一発で全部取る!と。勉強したのは半年ぐらいですかね。試験の一週間前にWETNAPでSHIBUYA全感覚祭に出て。

ー絶妙なタイミングで被りますね!

ライブは深夜なんですけど、それまで勉強して、ライブして、帰って寝たら勉強して…みたいな生活で。それで無事受かったんです。頑張りました!

※WETNAPは4:18ごろから

ー本当に凄いです。保育士の仕事は今までで一番向いていますか?

向いてますね!保育士の仕事って、子供と一緒に遊ぶんですけど、他にも0~2歳の子はその日なにをしていたのか、
C「何してるの?」
子「これね、中央線」
C「どこ行くの?」
子「どうぶつえん」
みたいな事を親御さんに報告する連絡帳があるんですけど、いかに早く文章を書くのかだったり、観察の練習にもなりますしね。あとは制作ですね。子供が作る絵とか、6月だったらカエルが傘を持っている絵を作ろうってあるんですけど、雨の感じとか、はじき絵って言ってクレヨンで最初に描いてその上に絵の具で塗るっていうのがあって、その見本を作るんです。デザインというか、商売では無い絵だったりして。そういった事が面白いんですよね。飽きないですね。合ってます。

ー確かに"身体を使う"という事で筋が通っていますね。シンセからベースだったり、九年続いたソフトボールだったり。地続きで繋がってたんですね。


■2020年を振り返って

ー2020年はどうでしたか?仕事やバンドとか。

あの時は、一番最初の緊急事態宣言の時、4月から保育士として園に入って働いていたんですけど、5月に入って在宅になったんですよ。

ーそうなんですか…って、え?在宅??

そうなんですよ(笑) しかもウチの園って新規園で4月から始まっていて、何も決まってない状態で在宅になったんです。子供を見るっていう仕事が無くなってしまったんですよ。なので、やっていた事と言えば、一歳ぐらいの子が缶にペットボトルの蓋を入れて遊ぶっていうおもちゃがあるんですけど、それを家でひたすら作っていたりとか。課題図書みたいなのも出て読んでいたりとか…良いの??最高じゃんみたいなところはありましたけどね。今(2021年6月頭)も緊急事態宣言下ですけど、親御さんも働いているので休園するって事は無いんですけどね。

ー期限未定で家から出ちゃいけないって、だいぶ滅茶苦茶な時期でしたよね…。バンドの方は?

バンドは何だかんだいって12本?14本?ちょっと忘れちゃったんですけど、ライブはそれぐらいやってたんです。LIVEHAUS Soundcheckというライブを撮って配信する企画に誘ってもらったりとか、

あとは小岩BushBashに誘って貰った事も大きくて。緊急事態宣言が開けて、感染者数が少し減って、ライブハウスも営業しないと立ち行かないって状態になって。そこにTIALAの企画に誘って貰って、私達TIALAが好きなので、これは出たいよね、と。

そこからコロナの事を考えながらも「自分達はライブが好きだし、ライブハウスも大切だから、やりたいよね」って事で、バンドは練習してライブして、新陳代謝的に流動的にしたいと思う方で、コロナなのでスッパリ止めて…というのは無かったですね。でも前は土日は何かしらのライブに行ってたんですが、今は自分のライブ以外は行ってませんね…。

ーピタッと止まった人と、あまり変わらずやってる人とで対応が分かれて面白いなと思います。これはやる事やっていれば、良い悪いじゃなく、その人の在り方だと思うので。


■バンドをする事、楽器を弾く事、表現する事

ーCloshさんの同級生なり音楽関係なり周囲の方で、20代の紆余曲折を経て、バンドやライブから遠ざかる人が増えたという印象はありますか?女性で括るのは本当に失礼なのですが、敢えて…。

例えば毎週練習に入って音源を録って形にしようっていう、音楽を生活の中心に据えた人種は、性別は関係無くなんですけど、減っていっているような気がしますね。

ー性別、という話でも無いですよね。

女性で言えば、周りで言えばゲタゲタのボーカルは何もしていませんし、大学生の頃に知り合った人でもそういった人は多いですね。子どもが産まれたからバンドをやらなくなるって人は今のところいないんですが、これから増えてくるのかなあ…。でも私は保育士なのでわかるのですが、子どもはまじでヤバいですからね。これは男とか女とか関係無く、曲を作る時間がない暇がないってのは致し方ないですよね。

ーそういった事に対するCloshさん自身が思う事は何かありますか?

あります。そもそもバンドをする女性が凄く少ないんですよ。バンドや音楽が好きで私達がやっているような小さなハコにも足を運ぶ女性は少なくはないんですが、バンドや楽器をやる事へのハードルが高いのかなとも思うんですけどね。折角バンドを始めても、生活の色々だとかで筆を折るじゃないですけど、楽器を折る(笑)みたいなタイミングが何度も何度もあるっていうのが、とても悲しい気持ちになります。

ーそうですね。どうにもならない状況でバンドを辞めざるを得なくて…という話を聴くたびに、その人の問題じゃなくて、もう少し周りの状況が何とかならないのかなと思う事は沢山あります。

私がパンクを好きな理由は思想が先立って楽器を演奏しても良いという事があるんです。要するに下手でもOKと。女性がギターを弾くとき、やっぱり指とか痛かったりするんですよ。手、そんなに大きくないですしね。どの楽器でもそうだと思うんですけど。そういった技術面はひとまず置いておいて、楽器を鳴らしても良いんだよっていうジャンルだと思うんです。そういったところから初めて、バンドや音楽に入ってきてくれる女の人が増えたら良いなあと思います。私は幸運にもそういったバンド界隈の人間なんですが、本当に伝えたい事がある人は今はヒップホップとか、そういった方法で表現しているのかもしれませんね。リズムマシンとかトラック作ったりして表現をそこに乗せて。どんな方法であれ、表現している人が増えるのは良いなと思いますけどね。でも…

ー殊、バンドで、って事で、

ですね。バンドやってみいや、ですね(笑)下手でも良いからやろうよとは思うんですが、人前で表現する事に臆してしまう人は多いのかもしれませんね。ライブを見に来てくれる人の中にもバンドやってみたいって人はいると思うんです。私は人前で醜態を晒してもOKみたいな感じになってますが(笑)ジェンダー…という話では無いんですけどね。フェミニスト的な意見は持っていますが、自分の思想を周りに押し付けたいわけでは無いんです。
格好良いバンドと言うと男の人が多いですからね…あ、でもCODE ORANGEのReba Meyersが凄く格好良くて!プレイがハード憧れてしまいます(笑)  女性だからとか関係無く、好きな事を好きなだけやっている!という感じが。ありがとう!いてくれて!みたいに思います(笑)

ーReba Meyersは小柄な方ですが、ライブになると存在感が凄いですよね。オーラが出せるタイプですね。


それと、児童書が好きでよく読むんですが「北欧に学ぶ小さなフェミニストの本」っていうのがあって、

この中に『強くたって女々しくたって良い、ありのままの自分でいよう』ここまではわかるじゃないですか?でも次の一文に凄く感銘を受けて。「そして、それを周りの人にも押し付けないようにしよう、周りの人もそうであっても認めよう」、(原文は『それに他の人も自由にさせてあげるんだ』)っていう文があって。そうか、セットか、自分はこうだよって主張をして、周りの人の主張を聴くものなんだと。何か社会的な主張をして世の中を変えていこうというより、私はこういうスタンスの人間で、こういう考え方で、あなたの考えも認めます、っていう感じなんです。だからハードコア的な「やってやるぜ!」というのでは無いかもですね。この姿勢でいくのが多様性かな、と思います。

ー同じくバンドをやっていて保育士になった友人がいるんですが、同じ事を言っていて(ちゃんと受け継がれているぞ)と思って目頭が熱くなりました。


■怪物はささやく

ーCloshさんと言うと読書家のイメージもあるんですが、音楽をやっていく上で何か影響を受けた本などありますか?

『怪物はささやく』という本なんですけど、これも児童書なんですが、

注) 以下ネタバレあります

ーこれは…ジャケが良いですね…(と言いつつ奥付けから見るオタク)

書かれてた経緯が変わっていて、書いたのはパトリック・ネスという方で、原案はシヴォーン・ダウドという方なんですが、原案のシヴォーンさんが書いている途中かな?ガンで亡くなってしまうんですね。その遺稿をネスさんが受け継いで書く形になるんです。そういった事が前書きにあって。

ーどういった内容の話なんですか?

児童書にしては物凄く暗いんですけど…シングルマザーとその子供の男の子の話なんですが、お母さんがガンでどんどん元気が無くなっていくんですね。男の子は男の子で学校でいじめられていて。でも悲しいとか苦しいとか無く無反応無関心で透明人間っぽく振る舞っていて。だけど、お母さんには優しくして、とはいえモヤモヤを抱えながら世界に対して無感覚でいるんです。そんな中で自分の中に怪物が現れて、夜な夜な夢の中で物語を聞かせるんです。そうして悪夢から醒めた起きた時、部屋の中が滅茶苦茶になってるんですね。それから男の子は段々と怒りを表現する事が出来るようになってきて。良くない事なんですけどね、暴れてものを壊したりだとか、いじめっ子をボコボコにしたりだとか。それで最後にお母さんが亡くなるんですけど、そこで「どうして先に死んだの?!どうして!」と最大級の怒りを爆発させるんです。でも亡くなったからには生きていかなきゃな、といった感じです。

ー怒り、というのは児童書にしては珍しいですね。

感情のネガティブな部分に焦点が当てられていますよね。怒りを内に溜め込むんじゃなくて、まず表現してから考える、本当の気持ちに向き合うって事もあるでしょうし。そういう児童書ってなかなか無いですしね。私はハードコアやパンクを聴いたりしますが、"怒りの文化"でもあるわけじゃないですか。そういった部分で凄く共鳴するなと思います。最初の無関心ってところではカミュの『異邦人』の、私Dinosaur Jr.が好きなので"Feel The Pain"の「全ての人の怒りを感じる でも僕はなにも感じないんだ」っていうところにも通じますしね。ネガティブな感情も肯定するっていうところに救われました。


■逆質問と最後に一言

ー恒例の逆質問なんですが何かありますか?

私にKMさんのTwitterを教えてくれた人々がいるんですけど、

ーえ?あ、はい、人々(動揺)

KMさんがRAIN OR SHINEっていう最近のバンドの事をツイートした時に"JAWBREAKERを感じる"的な事を書いたじゃないですか。

その時にその人たちが「僕とは違うJAWBREAKER観なんだ。どんなJAWBREAKER観なんだろうね」って話していて。

ーあれか…そうか…JAWBREAKER観って、その人がどの時期が好きか?に寄るんじゃないかと。demoやunfunのイメージがあるか、dear you以降とか、それによってイメージが変わると思うんです。それで言うと自分の中のJAWBREAKER観って、結構JET TO BRAZIL初期寄りとか、今(2021年)やっても通じるみたいなイメージなんですね。少しスケール大きくなった、音もクリア、みたいな。RAIN OR SHINEに至っては、そういった現代的な解像度の高い音作りに、より一般的なJAWBREAKER観を感じた、と言った感じですね。あとはビッグネームを出して大きくボケただけだったり。

なるほど!私は初期のJAWBREAKER好きなんですよ。クランチが効いてしゃがれた声で、ちょっとへっぽこ感、みたいな。そう言われると納得です。

ー音の細部というより、大掴みな、最大公約数のイメージでツイートしてたので、まさかそんな気にしてくれる人がいるなんてビックリしました(笑) 迂闊なこと書けないすね…(後日、大きくフォームを崩す) これで大丈夫でしょうか??

全然OKです!ありがとうございます!レビューって、その人が聴いて来たものが出るので、自由に書いて良いと思います。

ー自分はあれこれ質問するくせに逆質問となると毎度ビクビクです…何か最後に一言ありますか?

twitterで幅広くメタルやハードコアをばんばん聴いてガンガン感想を投下する謎の人物ことKMさんがまさかインタビューしてくれるとは…とびっくりかつ楽しい経験でした。そして思い出す、ライブハウスで初めて会いお互いの好きなバンドや音楽を差し出し合うあの感じ、コロナ禍だからかもしれませんがとても印象深く記憶に残りました。
今WETNAPはレコーディング中です!作品をいつか出します!また夏のライブも決まってます。GtのAxanoさん、Drのなげやりくんも自分でインタビューしたいくらい面白い方々かつ激ヤバプレーヤーなので、こんな状況下ですがライブを見に来てほしいです。

ー面識が無い人には実在を疑われ、面識がある人には「会わなくても何してるかわかる」と言われます…。本日は有り難うございました!!




■あとがき

これまでのONE VOICE ZINEは何かしらの繋がりがある人にインタビューしてきましたが、今回のCloshさんに関しては、そもそもTwitterでフォローして頂き、面白い事してる人がいるな、WETNAP良いな、どんな人なのか話をしてみたいな、と思ったのが事の発端でした。後になって過去の事や色々と繋がりがある事が判明していくのですが。とはいえ毎度毎度なのですが、ど緊張で滅多にない手汗と、音声を聞くと(あー自分、頭回ってないわ…)という体たらくでした。インタビュイーのCloshさんの気さくな人柄に随分と助けられました。
これまで8人の方にインタビューしてきて、2020年,2021年に行き着くまでに、各々、精神性の流れで形成された人と身体性の流れで形成された人に分かれる傾向があるのでは?と仮定するようになりました。直近で例えると前々回のxtkxは精神性タイプ、前回のエロリンさんは身体性タイプだと思っていて、これだとCloshさんは精神性タイプか?と思ったら、インタビューしてみると、意外にも身体性タイプでした。意外、というのはCloshさんのインスタに上げている絵が好きで見たりするんですが、加えて前述の通り本をよく読む印象があったので…と早合点していました。実際に話さないとわからない事って沢山ありますね。その辺をもっと掘り下げれば良かった…というのは後の祭りです。もっと頑張りましょう。

と言ったわけで、今後も更新は不定期ペースになりますが、また忘れた頃に…?それではまた次回!





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