見出し画像

広尾スケッチ #3 広尾湯

マガジン『広尾スケッチ』は、広尾に住み始めたばかりの若者が、
広尾に訪れる/住むだけで健康で幸せになれる秘密を考えていく。

ブルーボトルコーヒーやスターバックス、タピオカ屋さんなどがしのぎを削る広尾散歩通りのメインストリート。

その中に、90年の歴史をもつ銭湯がある。

マンションの1階にある横幅2mちょっとの狭い入り口で、意識しない通り過ぎてしまうだろう。

しかし、おしゃれなカフェが立ち並ぶこの通り沿いで、この銭湯の存在に一度気がつくと、かなり気になって無視できなくなってしまう。

僕は銭湯に入った経験はなかったが、映画などを通して見た銭湯には人の交流や温かさを感じられるイメージがあった。
上京したての若者にも拠り所となる場所かもしれない、そんな温もりを求めて、気がつくとのれんをくぐっていた。

引き戸を開けてすぐ、入り口からは想像できないほど高い天井に驚いた。2,3階分吹き抜けの天井で開放感を感じる。
目の前に番頭さんが座り、左右に男女ののれんが分かれている造りは映画で見た銭湯そのもの。昭和の雰囲気をむんむんと感じるがリニューアルしているようで清潔感のある内装だ。

浴場に入ると、奥の壁一面に描かれたタイル張りの大きな絵が目に飛び込んでくる。

銭湯の書き割りといえば富士山、とばかり思っていたが、広尾湯では西洋の風景画ようなタイルアートが描かれていた。
アルプスのような鋭い山が連なり、大きな川のほとりに西洋風の建物が並んでいた。

銭湯を利用する人は地元のお年寄りくらいかと思いきや、浴場では同世代くらいの若者やお子さん連れのお父さんまで、様々な世代の人が湯けむりをくぐり、ゆっくりと体を清め癒やしていた。

シャワーは初めて使う固定式。
ホースを自在に操れないのは最初こそ不便を感じていたが、両手で頭も体も洗える効率の良さに気づくにはそこまで時間はかからなかった。

さて、頭も体もすっきり洗い流し、いよいよ浴槽に入ろう。
浴槽はあまり広くなく10人も入れない程度で、温度も高めですぐにのぼせてしまう湯加減だ。
金タライを抱えた常連さんらしいおじいさんが、一旦湯船を出てシャワーを浴びてから、また湯船に戻るということを繰り返していた。ゆっくり楽しむのならこの手法が1番なのだろう。

湯船に浸かりながら、子連れのお父さんと話すことができた。
一緒に入っていた小学生くらいのお子さんは、赤ちゃんの時から時々連れてきているとのこと。家の湯船よりも大きく、そこまで高くない料金は地元の人に愛されるリフレッシュスポットのようだ。

最後に番頭さんに聞いてみると、広尾湯の創業は1930年でご主人で3代目。90年もの間、広尾の目抜き通りに立ち続けて広尾の歴史を見守ってきたと言っても過言ではないだろう。

出る時の挨拶は「おやすみなさい」だった。

広尾湯は午後3時から0時まで営業。水曜定休。
毎月高齢者入浴無料デーがあるが、それとは関係なしにいつ行っても見かけるおじいさんもいる。シャンプーやタオルは持ち込み制だが、銭湯で数百円で購入できるのでお気軽にどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?