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丹後から帰る車の中で涙が出てきた

 土の話に感銘を受け、初対面ながら農家さんにポロポロと今の悩みを相談するくらい、心が開放的になっていました。自分の言葉に自信がなかったけど、振り絞りながら何かを変えたい気持ちを紡いでいると「うんうん」と優しく受け止めてくださりました。

 自分を変える意味でもリセットする意味でも、IT業界とは真逆の農家に転身するのは、個人的にも面白そうでアリだなという気持ちも湧いてきます。身体を動かすことは好きだし、何より一緒に行った農作業が楽しかった。数時間居ただけなのに、農場の雰囲気は僕を温かく包みこんでくれていました。

 研修生で働いている男性の一人がたまたま妻と同郷という偶然も重なり、農場メンバーとの距離も縮まっていきます。運があったのは、その方が数ヶ月後に卒業を予定していて、奥さまと二人で暮らしていた家が空くというタイミング。

 移住する上で重要な仕事と住居が一気に決められる、そんなタイミングが目の前に転がってきた感覚です。条件は揃いました、あとは夫婦で決断するのみ。

 体験が終わり、今日のお礼にと段ボールいっぱいのお野菜を受け取りました。農作業を手伝った以上のモノをたくさんいただいて、二人共胸いっぱい。一緒に体験をしていた相談員の方にもお礼を伝えて、大阪へと戻ります。別れ際も「また遊びに来てね」と、とてもフランク。だけど凄く愛情を感じた2日間でした。

 丹後から大阪へ戻る道中、妻とたくさん喋りました。刺激的だった出会い、美味しかったご飯、楽しかった農作業。これまでの移住見学の帰りとは明らかに異なる雰囲気でした。二人の中ではほぼ気持ちはこの時に固まっていたと思います。

 色々と振り返っていた中、やっぱり土の話を聞いた時や僕らの悩みを優しく受け止めてもらった時間が心に残っていて、気づけば涙が出ていました。「運転中なのに危ない!」と妻が助手席からハンカチで涙を拭いてくれ、なんとか事故らず済みましたが、それくらい思いを受入れてもらえた事が嬉しかったし、自分たちは一人じゃないんだと安心したんじゃないかな。

 二人の気持ちはほぼ決まっていましたが、いちど冷静になってから改めて考えてみようと、その日は落ち着いた気持ちで眠りにつきました。丹後から帰った大阪の景色は少し違って見えたのでした。

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