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マーケティングは糸電話

広告は死ななかった。

1999年、『パーミション・マーケティング』でデジタル時代の顧客コミュニーケーションのあり方を見つめた。ベストセラーになった。電通、博報堂からも講演やコンサルティング依頼を受けた。広告代理店のあり方も変わっていく・・・そんな予感がした。

むしろ広告は増えた。

これがデジタル前のマス広告のあり方だとすれば
デジタル後はこうなる。

つまり、人々は自分のインタレスト(興味・関心)でメッセージを口コミしていく。

2012年、「フォーカス・マーケティング」でさらに詳しく分析し、結論として、コミュニティやファンベースを作ることが結局最短のマーケティング(絆結びと絆耕し)になる、そう話した。

これは論理的帰結であり、時代が変わっても変わらない真理だと考えている。物理学と同じ。

なぜなら、人が一番信用するのは信頼できる人からの「オススメ」だから。糸電話だから。

Tik Tok、You Tube、インスタグラム、X、フェイスブック・・・

すべてが広告媒体になった。Vlogやってる人は広告のおかげで収入を得ている。

いまでもそうだが、やがて社会が広告で埋め尽くされる。

東京スカイツリーはPayPayスカイツリー、財政難の公立小学校はネーミングライツを販売して「ビズリーチ小学校」になる。

冗談ではなく、いま、都銀のアプリにも自社製品の広告がポップアップされるようになっている。

こんな感じ。

このままいくと、「コラボ」と称して、家庭用の宅配水も、広告を見てからでないとウォーターサーバーから水を注げなくなるかもしれない。

歯科医治療、事前に「治療計画」と称して「推奨」の入れ歯、歯ブラシ、オーラルケア製品の宣伝時間になるかもしれない。それらすべて患者の費用負担である。

映画開始時間は、本編開始ではなく、広告映画の開始時間。えんえん20分、広告を見せられる。「U-NEXTとコラボ!」とか。

ところが問題は、これらの広告でぼくたち顧客の購買スイッチに点火しないという冷たい真実だ。

誰でも知ってる
でも欲しくない

という製品・サービスがあふれかえる。

バズる

言い換えれば

拡散

というのは、両刃の剣であり、昨日観た『シンプソンズ』(シーズン33、第13話『信じられないエピソードー第3幕は衝撃的!』)は、こんな話。

主人公ホーマーが、愛犬のためにアイスクリームを買ってあげようと店に入る。愛犬は車に、窓は少し開けて、エアコンも入れて。ところが犬が嬉しさのあまり車内で暴れまわり、結果、窓は閉まってドアは内側から鍵がかかった。

近所の人や通行人が「これは犬への虐待だ!けしからん!」とスマホで撮影、拡散、おかげでホーマーはみんなから除け者にされる。

本当はとても仲良しなのに。

話はやがてGoogle、X、Meta・・・どの会社かわからないが、テック企業の壮大なる野望へと発展していく。
さすがシンプソンズ、見ている世界が面白い。ディストピアっぽい世界だが、的を射ている。

さて;

一番大事なのは糸電話。

ぼくたちはスマホを置いて、少しずつ、こっちへと歩を進めていく必要があると思う。

人の温もりと交流の、ほんとうの楽しさを求めて。

広告は増えたが、
接客が消えたこの世界で。

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