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ヒッチハイカーになりたい

「こんにちは! 阪本です。昨日お借りした傘、返しに来ました。ありがとうございます。おかげで助かりました」

借りた傘を返却しに歯科医へ。

JOYWOWにて。たいした傘じゃない(笑)

こうして少しずつ顔と名前を売り込むのである。

「悪いようにはされない」

というのは、こういう地道な努力から生まれる。

そのまま帰宅してもいいのだが、成瀬の訓えに従い
「できるだけ地元にお金を落とす」ポリシーで、
商店街にある西日本書店で続編を購入。

どこかでお茶しながら読みましょう。
これも、全国区チェーンのドトールとかではなく・・・と思ったらドトール閉店、あとに雀荘が工事中だ。

少し歩いて坂井珈琲。コーヒーフロート550円。
PayPayかキャッシュのみなので現金で支払った。

「地元にお金を落とす感」大で、満足する。

端っこの席に陣取り、至福のひとときを。やっぱり成瀬はいい。

そろそろ帰るか、と立って、上着着て・・・やってたらおばさんが前に待ち構えている。

「?」

「端っこ、座ろうおもて」

他に席、いっぱい空いてるのに。

「あ。はい。いま立つとこですから」

「ひょっとして・・・?」ぼくの顔をのぞきこむ。

「はい?」

「違うわ」なんやねん!

こうして大阪では知らないおばさんとも自然と漫才になる。

西日本書店の前を通り過ぎたとき、あるアイデアが浮かんだ。それは今日検証してみる。

一号線沿いに歩く。と、ヒッチハイクの看板掲げる男が。

「東京へ 途中まで乗せてください」

瞬間、「こいつ、甘えてる」と思った。

ヒッチハイクが甘え、ではない。

彼の立っている側が、西向きの車線なのだ。

東京は東。江戸時代の江戸の頃から、大阪より東にある。

立つ場所が逆。

「地元民じゃないから仕方ない」

とは思わない。

今どき、スマホにはコンパスがある。東か西かくらいは誰でもわかる。

成瀬は言う。

「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」

「たとえばわたしはパトロールを好きでやっているが、警察官になりたいとは思ってない。会社員になったとしても、パトロールはできるだろう。だからわたしが何になるかは未定だが、地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている」

『成瀬は信じた道をいく』所収「ときめきっ子タイム」p.26-27

「東京へ」の看板掲げてる彼はヒッチハイカーになりたいのだ。

ヒッチハイクしたいわけではない。

本気でヒッチハイクしたければ、自分がどっちへ向いているのが乗っけてくれるドライバーの負担にならないか、最優先に考える。

彼がいま立っている場所で、仮に誰かが拾ったとする。

西に向かっているドライバーは、どこかでUターンしなければならない。
あるいは、迂回か。

「ヒッチハイカーになった自分」に自分で「いいね」押してる。

だから甘え、という。

教えてやろうかどうか迷ったが、何が起きてもそれは旅の楽しみだろう。なので放置した。

起業もそうで、「起業家になりたい」人は山ほどいる。

でも、起業を動詞にした途端、お金の計算、商品開発、顧客創造、税務署とのやり取りなど、地味でめんどくさい仕事をやらなければ前に進めない。

人は、小さな問題ですら、できれば逃げたいもの。まして問題てんこ盛りの状況など、とんでもないと考えるのが普通だ。生活はきちんとしていて、予測可能であって欲しい。そう考えるのが人情というもの。ビジネスパースンも例外ではない。秩序こそが成功の道、そう習った。折り目正しさと正確さ。家事や簿記ならそれもいいだろう。

 創業したばかりのビジネスはいかなる予想、予測、パターンも当てはまらない。粗削りで、驚きの連続、予想もしない結末ばかりだ。しかしよく考えてみればこの世の中すべて同じで、ビジネスの世界だけが例外ではない。

ポール・ホーケン『ビジネスを育てる』新版・阪本訳

ハチャメチャな問題への取り組み(解決とは限らない)こそが、起業の面白さ、醍醐味であり、つまるところそういう「何をやるか」の積み重ねが、毎日を明るくしていく。

さて。くだんのヒッチハイカー、無事、東へ行けただろうか。今頃福岡だったりして。それはそれで面白い。

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