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インドにおけるコロナ感染拡大と経済に関する覚え書

この覚え書(メモ)は各種ニュースを検討した勝手な自己流分析と考察です。各種ニュースは基本ネットで無料のものから毎朝モーニングを食いにいってる喫茶店で読む日経・朝日・毎日・京都新聞・デイリースポーツが元になっております。ちなみに私は高卒で金融の知識持ち合わせておりません(簿記3級と生産管理の仕事で工業簿記ほんの少し程度の知識)。よって以下文章に一切の責任を負いません。投資は自己責任・自己判断で


1:インドの状況(5月11日現在) 

ベンガルール発11日ロイター電によると、新型コロナウイルス新規感染者数の7日間平均39万0995人過去最多を更新。死者数は1日平均4000人近く。WHOがインドで最初に発見された変異株に対し警告を発するが、鎮静化する兆しはみられない。
インドにおけるワクチン接種状況だがこの記事を書いている5月11日時点でグーグル(提供元: Our World in Data )で確認したところ、

2021年5月10日          合計 (人)      人口比(%)
ワクチンを 1 回以上接種    135,192,013人                      9.9%
必要回数のワクチン接種完了    35,906,905人                         2.6%

インドにおいてコロナ感染がこれほど急拡大した背景だが、宗教的因習・陋習、カースト差別、そして貧富の格差があげられる。


2:インド変異株の特徴

インドで見つかった「B1617」といわれる変異株であるが、コロナ禍が収まりつつある英国においても「懸念すべき変異株」に指定、 WHOは10日、世界的に懸念され追跡調査と分析の強化が必要な変異株に指定。今この時点で分かっているインド変異株の特徴であるが、日本人に対しては免疫低下の可能性があること。研究実験では、人の細胞とくっつきやすく、感染力が高いことが分かっている。各種報道では15~16倍感染力が高いとも。


3:インドにおけるワクチン製造の国際位置

2020年中国から端を発するコロナウィルスが国際的問題・課題として世界各国がその予防薬(ワクチン)治療薬(特効薬)を研究開発・生産にしのぎを削る中、製薬大国のインドは世界の脚光を浴びていた。
そしてその期待に応えるかのようにインドのワクチン製造大手セラム・インスティチュート・オブ・インディアではアストラゼネカ製ワクチンを製造。もう一つ民間企業と政府系機関とで共同開発した純国産の「コバクシン」も一応開発成功、生産供与に入っている。このことによりインドはワクチン提供国として国際政治の場に躍り出る。
中国と対立するインドにおいてワクチン製造能力を高め他国に提供できる立場は中国包囲網を敷くアメリカを中心とする同盟国にとって好ましいことである。特にインドで製造されたワクチンはこれまでに76カ国6000万回分以上のワクチンを輸出しており、その大半はアストラゼネカ製だ。
しかし、今回のコロナ拡大を受け自国内への対応を急務とするところからワクチン輸出を停止せざるを得ず供給が止まり、その隙をつくかのように中国のワクチン外交が東南アジアでその存在感を増してきている。


4:インドのコロナ感染拡大、世界経済への懸念

5月12日投資の際に気になる国際・国内ニュース」でもロイター電を取り上げたがインドにおけるコロナ禍はアップル、鴻海の生産・出荷に影響を与えている。
日本企業ではホンダとヤマハの二輪車、スズキの自動車、パナソニックのエアコン・洗濯機がインド現地工場で生産停止。その他では商社をはじめとする駐在員の緊急帰国が相次いでいる。かなりの影響が出ていそうな感じではあるが一方でワクチン以外で鉄鋼・ 金属製品、機械 ・ 電気・輸送・精密機器等などの製造業では世界に与える影響が少ないと考える。
上記「影響が少ない」の根拠であるが、インド経済において農水省の古い統計だが2017年GDP比は第二次産業製造業の占める割合は26.6%、そのうち製造業は15.3%。農業国のイメージが強いが第一次産業がGDPに占める割合は16.3%で以外にも残りは第三次産業が占めている。そしてこの比率は2020年もほぼ横ばいであると考えられる。
また『月刊資本市場12月号』の広島経済大学、糠谷英輝教授の論文では、〈第二次産業のGDPシェアは中国、ASEAN諸国に比べると低い。製造業の中では鉄鋼、アルミニウム、自動車など発展している産業は限られている。このため輸出入は石油や貴金属が主で、いずれも原油や原石を輸入し、精製、加工して再輸出をする形になっている。
このため外需主導の経済成長という新興国の経済成長で見られる一般的な姿にはなっていない。これは世界経済の影響を相対的に受けにくいというメリットもあるが、反面、経済成長が内需により大きく左右されることになる〉という指摘が重要であろう。

製造業では世界経済への懸念がワクチン以外に無いと書いたが問題はインド経済の主力である第三次産業で、なかでも海運業の問題がある。
現在世界の船員の約15%がインド人であり、世界各国で貨物船に乗船し日々の海運を担っているのだがコロナ感染を恐れる一部の国がインド出身やこの国を経由した船員の入港を拒否しはじめている(ファイナンシャル・タイムス報道)。インドではないがフィリピンでも2件インド変異株の陽性者が発見されるなど気をつけなければ海運業に与える影響は深刻なものとなりかねない(世界におけるフィリピン人船員の比率は約25%)。
それと同時に第一次産業の農産物の輸出に与える世界的影響も考慮しなければならない。世界における米輸出量はインドが1位であり、その他にも大豆・小麦などを輸出しており、これらを輸入している中国、日本、フィリピン、アフリカの一部諸国の食生活に影響を及ぼすかもしれない。

最後に

インドにおける官僚主義は日本どころか中国、ベトナムの比ではない。それは公務員だけでなく民間企業においても同様で申請事がたらいまわしで待たされることは日常茶判事である(試しにネットで「インド 官僚主義」で検索してみると様々な体験談が見聞きできる)。
カースト制度による差別貧困問題もある。インドは「自由民主主義」国家で憲法でカーストを禁止しているものの上位カーストによる最下層カースト「ダリット」への差別はインド社会のあらゆるところ(それは外資系企業も無縁ではない)に公然と存在する。上位カースト層の特権階級、上級国民はインドの支配層でもあり既得権益にがっちりと食い込んで先に述べた官僚主義と一体化している。そしてインドにおけるコロナ感染拡大の原因の1つにカーストによる差別貧困問題が密接に関係している。

インドから優秀なIT技術者が日本、アメリカへと渡り活躍している。今や彼らの存在抜きにして日本(踏み場として)、アメリカのIT企業は成り立たないと言っても過言ではないだろう。技術者だけでなく経営者としてGoogle、マイクロソフトのCEO、その他金融機関などのCEOを務めるインド人も多い。
そんな彼らがインドに帰国して事業などを立ち上げることがあるのか?私の意見だがあり得ないと思う。カーストの下位層出身者ならなおさらであろう。
また、よくインドのIT企業はカーストに関係なく働くことができる、彼らの存在がカースト制度を打ち破るといった論調があるが、日本語に訳された海外の各種報道を注意深くみてみれば、インドIT企業や移住先米国でのIT大手企業、外資系企業でのインド人たちによるカースト差別は現に存在していたりする。

以上の問題を解決するには国民意識を変えていかねばならないのだが、戦後の日本ですら部落差別の問題で悪戦苦闘してきた。
私の意見としてはカーストと今回のコロナ禍は密接に関係しておりこの問題はしばらく続きかつインド経済の足を引っ張るものとみている。

(了)








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