赤札 詩集『しなやかな暗殺者』
赤札
さみしいときにはバーゲンに行く
ワゴンに積まれているのは
ゆめのような
空色ブラウスチェックのブラウス
花柄のブラウスなんて春の野原さながらで
天然素材100%
規則正しいピンタックは
一糸の乱れさえありませんよと誘う声
わたしの場合
必要なものと欲しいものとは
いつもいくらかずれていて
ひっくりかえして手をつっこんで
さがしまくって
どん底に在るひややかな手応えなら
存じ上げております
ねえ、もうちょっと、まけられないの?
と媚びてみる
(全文)
この詩を書いた時、私は何が欲しかったか、覚えていない。必要なものとは、ずれていたようだから、忘れて良かったのだろう。
橘しのぶ第二詩集『しなやかな暗殺者』
梓書院1999年3月20日発行
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