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空は あかく滲んで

『火片』216号の、ひとはなおさんの詩を読んで、泣いてしまった。ひとはさんのお母様は、詩人のなんば・みちこさんで、今年の2月18日、ご逝去なさった。

空は あかく滲んで

            ひとは な お
 
玲さんのお母さんは癌を患い
からだが弱って 声を出せなくなった

わたしの母が 自分のお母さんと
重なって見えると言う玲さんは
澄んだ眼をした年若い看護師見習い

語りかけ 語りかけ
母が応えたと よろこんでくれる

玲さんは 亡くなったお母さんを
患者に重ねて生きるのだろう

わたしの胸に手をあてて
これはだれ と尋ねると
「わたしのおかあさん」と
かすれた声で
母は 言う 
いいえ あなたの娘です
おかあさんが
あかちゃんになっちゃった

母は安心した顔して眠っている

ゆうひにそらが
そまるよに
ほほべにさして 
たそがれを
あるいてゆけば
ひがくれる
ひがくれる

髪をなでながら
歌ってあげる 

空は あかく滲んで
西の山に
沈んでいく
              (全文)

 この詩は、批評を必要としない。批評する権利は、誰にもない詩。優しい美しい哀しい感動を、ありがとうございました。

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