マガジンのカバー画像

詩集について

14
拝受した詩集について、書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

泉水雄矢詩集『unbox/開けてはならない』

 泉水雄矢さんの第一詩集(私家版)。20の詩篇収録。その中で、巻頭詩『深淵の里』だけを独立さ…

橘しのぶ
1か月前
19

小山修一詩集『風待ち港』

 あとがきに、「‥‥手もとに置いてたのしく読んでいただくことができたなら著書としてこのう…

橘しのぶ
1か月前
13

にしもとめぐみ詩集『女は秘密を歩き始めてしまう』

 本詩集は、扉に、リルケの詩の一節を置き、27篇の短い詩から成る。そのいずれもが恋の詩だ。…

橘しのぶ
1か月前
17

秋山基夫詩集『花下一睡』

うららかな春の日、私は、まぁるくすきとおった砂時計の底に体操座りさせられているような錯…

橘しのぶ
1か月前
17

死と愛 粕谷栄市詩集『世界の構造』より

 粕谷栄市さんが詩集『楽園』で、第42回現代詩人賞を受賞なさった。粕谷さんの詩は、以前から…

橘しのぶ
2か月前
23

大木潤子詩集『遠い庭』書評

「遠い庭に永遠の詩を尋ねて」  万緑匂う表紙を開き、頁を捲ると、文字が夏草になってそよぐ…

橘しのぶ
2か月前
16

野木京子詩集『廃屋の月』

二十数年前、詩人の松尾静明さんから「橘さんにとって、詩を書くとは、どういうことですか?」と質問されたことがあった。「日記を書くのと同じです」とお答えした。松尾さんは「それが、今のあなたの限界です」と仰った。その意味が、よくわからなかったけれど、気になって仕方がなかった。昨年より私は、松尾さん主宰の同人誌『折々の』の同人となったのだが、あの時の「限界です」というお言葉に導かれた気がしている。  出版されてまもない野木京子さんの詩集『廃屋の月』にも、同じようなことが書かれ

水嶋きょうこ詩集    『グラス・ランド』

歓喜とは出て行くこと 内陸の魂が大海へと、 家々を過ぎ─岬を過ぎ─ 永遠の中へと深く─  エ…

橘しのぶ
4か月前
16

魚本藤子詩集『北浦街道』

生活者の温かい目線で綴られた二十二篇の詩が、二部構成で収められている。巻頭詩「手紙」に…

橘しのぶ
4か月前
12

松岡政則詩集『ぢべたくちべた』

 同郷の松岡さんとは、第一詩集『川に棄てられていた自転車』の頃、交流があった。差別をテー…

橘しのぶ
4か月前
15

武田地球詩集『大阪のミャンマー』

武田地球さんの言葉には旋律がある。『大阪のミャンマー』『チェルノブイリにチェが降った』…

橘しのぶ
4か月前
22

滝本政博詩集『エンプティチェア』

 精神療法の一つに「エンプティチェア」というものがある。向かい合わせに二つの椅子を用意し…

橘しのぶ
4か月前
21

岩佐なを詩集『たんぽぽ』

 此岸と彼岸をふわふわ往ったり来たり、逝ったり生きたりする不思議な詩集。と言っても、暗さ…

橘しのぶ
4か月前
12

前野りりえ詩集『サラフィータ』

 「サラフィータはわたしの造語で大宰府のアナグラムのようなものです」と、あとがきにある。今年最初に読んだ詩集だ。二部構成で、Ⅰ章は「サラフィータ」、Ⅱ章は「エニウェア」と題されている。  Ⅰ章は「サラフィータ」では、一月から十二月まで、月ごとのサラフィータが描かる。中でも、梅の花盛りの『二月のサラフィータ』が、好きだ。「見惚れていると/だんだん奥へ 奥へと 迷い込む(13頁)」美しいものは必ず怖さを孕んでいる。「そうして 見つけた/倒れて眠る人魚を/これは人魚の香り?(同)」