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ビジネスの文脈においてロジカルであるとはどのようなことか

有名な大学を卒業していてもロジカルシンキング能力に自信がないというビジネスパーソンは多い。ロジカルシンキングの概念を広めたのは外資系コンサルと呼ばれる業種であるが、コンサル会社に勤める人であっても自信があるという人は意外と少ない。

ロジカルシンキングの苦手意識をなくすことの第一歩はロジカルシンキングとは何かを理解することだが、それを正面から説明している人はあまりいないようだ。

ここではロジカルに考えるとはどういうことかを考察してみたい。


世間一般で言うロジカルとは

ネットで「ロジカルシンキングとは」と検索すると、論理的思考であると説明されていることが多い。しかし個人的にはロジカル≠論理的と考えている。より厳密にいうと、論理的であることはロジカルであることの一要素であり、ロジカルの方がより広い概念であると捉えている。

自分も社会人になるかならないかくらいの時期に多くのビジネス書を読んだ。ロジカルシンキングを解説した書籍では、物事の要素を分解して考えるとか、MECE*であることに気をつける、などと説明されることが多い。また、ロジカルに説明するということは結論から話すことであったり、要点を3つに絞って説明することであったりするとされる。

*MECEとはMutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、例えば日本の全人口を男性と女性とに分けるように、何かの概念を漏れなくダブりなく分けるこという。日本の全人口を老人と学生とに分けてしまうと、老人でも学生でもない人もいるし、老人であり学生でもある人もいるのでMECEではない。

論理的であるということ

しかし、論理的であるとは、結論や主張が理由や根拠に基づいてなされていることであり、要素がMECEに分解されていたり、結論から説明されたりすることとは関係ないように思える。

論理的であるとは、簡単に言うと「話がちゃんとつながっていること」という元アーサー・ディ・リトルのコンサルタントである高田貴久さんの定義はわかりやすい (高田, 2004)。

例えば、(1)ソクラテスは人である、(2)すべての人は死ぬ、という2つの条件が与えられれば、(3)ソクラテスは死ぬ、と考えることは、その理由が明確で、誰が聞いても納得のいくものであり、これが私が思うところの論理的であるということである。

もう一つ例を出すと、「弊社のサービスを使ってもらえれば必ず御社の売上が上がります」というだけの説明では、そのサービスに本当に効果があるのかどうか疑念が残るため、これだけでは論理的な正しさとしては不十分である。他方で、「弊社のサービスには長期割引きがあるので、もし長く使っていただくのであれば長期契約の方がお得ですよ」という説明は誰も異論を出さない論理的な主張である。

構造化されているということ

以上が論理的であることの説明であるが、要素がMECEに分解されていたり、あるいは結論から説明されたりすることとは関係ない。

ではMECEな分解や結論から話すというのはどういうことか。それは、思考やその説明が構造化されているということである。何かの概念が構造化されているというのは、その概念を構成する要素同士がどのような関係にあるのかが整理されており、そして説明の順序が一定の規則に沿っているということだ。

例えば研究論文であれば、研究の背景、目的、手法、結果、考察、というように「研究」の概念が要素に分けて説明されており、「この手法の結果としてこうなった」というように要素同士の関係が整理されている。またこの説明の順番は研究のプロセスの時系列であるという意味で一定の規則に沿っている。

また、「カップラーメンの作り方:(1)熱湯を注ぐ、(2)フタをして3分待つ、(3)スープを入れる」という文も、作り方をプロセスに分け、それらをそのステップの順番で展開するロジカルな説明である。各要素の関係性は言うまでもなくそのプロセスの前後関係、つまり順序である。

ビジネスにおいて思考が構造化されていることがなぜ大事なのか。それは、何かの概念を構造化できていないということは、その全体像や構成要素を整理できておらず、結果的に考えるべき内容に抜け漏れがあったり、優先順位をつけられなくなるためである。

説明が構造化されていない場合には、話があっちに行ったりこっちに行ったりして、聞き手としは「今何の話をしてるんだっけ?」「さっきの話と今の話とどう関係があるんだっけ?」と混乱し、説明についていけなくなる。話を構造化しないというのは、ゴールに辿り着きたいと思っている相手に対して、全体の地図を見せずに「とりあえず着いてきて」と言っているようなものである。

よくロジカルに説明するためのコツとして、「結論から話しなさい」「3つにまとめなさい」というようなことが言われるのは、そうすることにより聞き手としては「3つのうち今1つ目の説明なんだな」というふうに頭の中がガイドされるためである。

ようするに

ロジカルシンキングの正体は、何かの話について考えるとき、(1)根拠に基づいて考え、(2)話の全体像とその構成要素を認識し、(3)それらを聞き手が理解しやすい何かしらの順序に沿って説明する、という程度のことである。

これらを素早く、かつ高い精度で実現できる人がいわゆるロジカルシンキングに強い人であると思う。

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参考文献

  • 高田貴久著, ロジカル・プレゼンテーション ― 自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」, 2004

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