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やさしい女

アップリンク吉祥寺にて、ロベール・ブレッソン監督の「やさしい女」を鑑賞。主演はドミニク・サンダ。ブレッソン作品の主演が有名女優だなんて珍しいなと思ったのだけど、これがドミニク・サンダのデビュー作のようだ。

強引な男に迫られて結婚するも、女は一貫して無表情。そして地味な服装はいつも一緒。わずかに心が開かれたと思った瞬間、彼女の服装に変化が訪れたのだけれどちょっとしたいざこざを契機にまた服装は元に戻り、最後までその衣装が変わることはなかった。

男の一方的な価値観に女性が閉じ込められ、そして最後には自ら命を絶つという流れはアニェス・ヴァルダの「幸福」を連想させる。男はただひたすら自省だけを繰り返して相手を慮る様子が一切見受けられない。そこのところもまるっきり一緒だ。

なぜこの作品のタイトルが「やさしい女」なのか。自ら命を絶つという方法でしか表現できない「やさしさ」があるのかもしれない。女が考え得る限り、男の傷を最小限にする方法はそれしかなかったのかもしれない。でもその「やさしさ」はきっとこの男には死ぬまで理解できないのだろう。

ブレッソン作品は元から好きで、「田舎司祭の日記」「ブローニュの森の貴婦人たち」「抵抗」「スリ」「ジャンヌダルク裁判」「バルタザールどこへ行く」「少女ムシェット」「ラルジャン」と主要なところはある程度観ている。けれどこの映画のことは全く知らなかった。1969年の映画。まだまだ未見の名作は多いのだな。

原作はドストエフスキー。ドストエフスキー生誕200年を記念したリバイバルらしい。ドストエフスキーもまた好きな作家だけど、原作のことは何も知らない。神保町で書店めぐりなどしつつ探してみようかな。




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