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ジーンズに込めた哲学

「信用とは、目に見えない商品そのものです。見えないものをつくり上げるのが商人の役割だと思います。ものは残りませんが、つくり上げた信用という価値はいつまでも残り続けます。だから“ものづくりバカ”にはけっしてなってはいけません。お客様の笑顔を想像した商品づくりや、仕入れをすることが重要なのです」


こう語るのは、新潟県妙高市のジーンズショップ「マルニ西脇」店主の西脇謙吾さん。冬には雪で店が埋まってしまうほどの豪雪地帯にありながら、全国にファンを持つ商人の哲学です。
 
この店の看板商品は完全オリジナルジーンズ。デザイン、アイデア、仕様を練り、生地からボタンなど資材すべてで自社製のものを使い、糸染めの回数、染液の濃度から織りもクラシック織機にこだわるなど、すべてを西脇さん自身がプロデュース。こだわりの強さゆえ、製造工程には手間と時間を要することは言うまでもありません。


さらには、妙高の雪解け水に漬け込んで水洗いを施し、一本一本天日干しで仕上げていきます。こうすることで普通に洗濯するよりもジーンズの糊がよくとれ、天日干しで仕上げたときに生地の風合いがさらによくなると言います。冬には、最後の仕上げ段階のジーンズが雪原に並びます。
 
これほどのこだわりはどこから生まれるのでしょうか?
 
「店がお客様のためにあるのと同じように、商品へのこだわりもお客様のためにあるのです。自社商品に対して向けられるものではなく、お客様が求めているものを知り、具現化したものがこだわりとなるのです。そのために、私たちはお客様を知る努力を重ねなければなりません」
 
新刊『売れる店がやっているたった四つの繁盛の法則』では、西脇さんがオリジナル商品をつくり始めたきっかけ、その中で大切にしていることを書きました。そこには「哲学・理念」があり、その哲学・理念に裏打ちされた「物語性豊かな商品」があり、お客様との「約束と絆」があります。
 
そして、そのすべては西脇さんご本人の「個性と人柄」から出発していることを忘れてはなりません。店は人、商品は人、信用とは人なのです。

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