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人材ビジネスにおける「情報の非対称性」との戦いの歴史

日本の人材業界における、というよりも、人材業界がほぼ存在しなかった時代における「就職活動」における課題の多くは、「情報の非対称性」であった。

インターネットが発達するはるか以前においては企業の情報を簡単に知る手段は少なく、ましてや企業内の口コミを読むことなど出来るはずもなかった。

その時代に一石を投じたのがリクルート創業者の江副浩正であり、彼が1961年に企画構想した『企業への招待』という情報冊子がいわゆる「就活」の幕開けであった。

これは新卒の就職活動に絞った情報の非対称性の解消であったが、高度経済成長期の企業拡大と伴い、莫大なニーズが存在していた。

この辺りの江副浩正氏の生い立ち、リクルートの拡大などの話については最近発売された下記の本が詳しい。

1960年代から1970年代にかけてこの情報の非対称性に多数の会社が注目したが、勝者総取りの領域であり、結局の所リクルートの独壇場となっていった。

新卒領域から15年ほど遅れ、1975年に中途領域に絞った『就職情報』が創刊される。そもそもとして転職者数が少ない時代であったことや、コネクションでの就職が通常であったことなどから、転職領域における情報の非対称性の課題解決は後回しとなっていた。

日本全体における情報流通量の増加に伴い、徐々に転職市場も活性化していく。

[メモ]
・そもそもとして、就職/転職にまつわる情報の流通が少なかった
・誰もがこれらの情報にアクセスできたわけではなかったため、情報に対するアクセスの自由化自体に価値があった
・情報流通量の増加と転職市場の活性化の関連は大いにありそう

(補足)
「労働力調査 長期時系列データ」によると、転職者数は1984年の163万人からリーマンショック前の2009年の348万人へと四半世紀で倍増した。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

インターネットの登場と「情報量」のインフィニティ化

紙面での求人情報の掲載においては、掲載できる情報量に物理的な限界があった。この限界を突破するために寄与したのがインターネットである。

1996年にリリースされた「RECRUIT BOOK on the Net」(後のリクナビ)を皮切りに、就職・転職に関する情報メディアは徐々にインターネットにシフトしていく。

流通網がなくとも求人情報を個人へ届けることが出来るインターネットの発展は、オンラインでの就職・転職に関する情報メディアの新規創刊を促した。

筆者が確認できる限りでは、現在は一定規模以上の情報メディアですら数百個以上存在しており、小さなものを含めると数千個程度はゆうに存在すると思われる。

このようなインターネット時代において、先駆者であったリクナビに対して新しいアングルから情報の非対称性の解消を試みたメディアが2つある。それが、ビズリーチとWantedlyである。

ビズリーチは「ハイクラス帯 × スカウト」というポジショニングによって、Wantedlyは「企業との面談の開放」というこれまでにはなかったアプローチによって、情報の非対称性を解消していった。

これまでは本来的な意味でのヘッドハンターによるアプローチしか存在しなかった「受け身」の転職活動が、「スカウト」の登場によって一般層にも徐々に開放されていった。

また、実際に応募する前に相互理解を深める場を設けたいという双方のニーズに合致する形で、「面談」「カジュアル面談」は徐々に広がっていった。

とはいえこれらは「最低限の情報の非対称性」が解消されたがゆえの新しい課題に対しての解決策であり、江副浩正氏が捉えていた課題とは一線を画す内容であることを付け加えておく。

[メモ]
・インターネットの発展は、就職/転職市場にも大きな変化をもたらした
・最低限の情報の非対称性が解消されたがゆえの課題に対し、現在は各社がしのぎを削っている状況
・他方でビズリーチリリース後の10年間において、「スカウト」以上のソリューションが見つかっていない現状がある

この先10年で向き合っていくべき課題

最低限の情報の非対称性は解消し、スカウトによる受け身での就職活動が可能になったのが2000年代といえる。

他方で、企業においては「応募数の増加による採用オペレーションの負荷の増加」、個人においては「求人数の増加による求職者における選択負荷の増大」という新しい課題を生み出している。

また、より本質的な部分で言えば、「自社に合う人が欲しい」「より自分に合う場所で働きたい」という根本の問いはさして解決できていない。

新卒における就活は未だに大変だし、転職活動自体も「大変」ゆえにビジネスとして成立してしまっている。

これらの背景には、「人間が人間を評価することの難しさ」という根深い問題があり、これらのソリューションとして大沢武志氏が1965年にSPIを開発した時点から一向に進化できていない。

面接は未だに存在するし、選考を重要視する企業ほど面接数は増えていき両者の負担は増え続けるし、とはいえ面接時の評価は結局の所「勘」頼みである。構造化面接が一時期流行ったが、これも結局のところ話した結果を勘でジャッジしているに過ぎない。

つまるところ、企業においてはその業務に必要な「能力の可視化」が出来ておらず、他方で個人においては自身の「能力の可視化」が出来ていないということに他ならず、さらにいえばそれらの最適なマッチングは実現できていない。これをもはや人知を超えた不可能な行為だとみるか、ここに一定の解をもたらすことが出来ると考えるかで、今後向き合っていく課題は大きく変わる。

私個人の考えとしては、企業における業務に必要な能力の可視化は未来予知と同義であり、不可能であると考えている。採用検討〜入社〜パフォームするまでに通常半年程度かかることを考えると、半年先の未来の業務を予測してそこに必要な能力を可視化する必要があり、不確実性の高まる社会においての実現難易度は非常に高い。(もちろん、オペレーションが確立された仕事などは別)

他方、個人における能力の可視化は今後さらに加速していくと考えている。WeChat等々が提供する信用スコアリングなどが一例だが、自分自身が「経歴を入力」しなくとも、自身の行動データを機械的に自動で分析する仕組みは増えていくことは必然であり、「特定の行動を行う傾向のある人間の優秀度合いを機械的に算出する」こと自体は、データが貯れば自然と解消される考えている。

勿論これらには倫理的な問題がつきまとう。自身の能力値が自身が検知しない場で算出され、それが売り買いされる未来が来てしまうからだ。この分野に対しての心情的な面からの反発は必至であり、大量データの分析が導く人材ビジネスの未来における倫理的な問いとの向き合い方が、ここ10年で人材ビジネスとして向き合っていくべき一番大きな課題になっていくであろう。

おわりに

 10年というスパンで見ると、倫理的な問との向き合い方が一番ヘビーな問題となるとは思っていますが、数年スパンで見ると「自身の時間という一番貴重な資源を割くべき仕事を見極めるために必要な情報をいかにして入手することが出来るか」という問いの重要度が高いと考えていて、結果的にそれは「カジュアル面談」や「お試し入社」「副業」といった文脈なのだと考えています。

としたときには、意中の企業の中で働く人といかに簡単に繋がることが出来るか、そして企業側は誰かにとっての意中の企業にどのようにしてなっていくかという部分が重要であり、この観点からはSNS採用という文脈は実はまだ序章なのではと考えていて、そこを引き続きハックしていくサービスの重要度は高いと思っています。

SNSを使って転職していくなら、bosyu Jobsは良いサービスですね。

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