ソフトスキルの習得をハードスキルの習得と同じように考えてはいけない

近年ではEM(Engineering Manager)やPdM(Product Manager)についての話題も増え、そこでは対人関係におけるソフトスキルについて語られることも多い。

その中では「1on1のテンプレート」であったり「おうむ返し」であったり、ソフトスキルのテクニック自体について語られることがあるが、ソフトスキルの習得をプログラミング等のハードスキルの習得と同じように語る文脈については違和感を持っている。

このエントリではソフトスキルの特徴とともに、その習得についての考え方を記す。

※ ソフトスキルにも色々あるが、このエントリは「対人関係におけるソフトスキル」にフォーカスしている

傾聴における問題点

ソフトスキルの代表として「傾聴」というものがある。そこでは「ミラーリング」や「バックトラッキング(おうむ返し)」などのテクニックが語られることが多い。それらは確かに話を上手く聞くためのテクニックではあるし、シチュエーションによっては効果がある。

とはいえ本や研修で習った通りのミラーリングやバックトラッキングをしたとして、本当に傾聴ができているかどうかは定かではない。むしろ、「ただおうむ返しをしてくる人」といった印象を持たれたり、「傾聴に必死で相手の話を聞いていない」という本末転倒な状況が生まれたりする。

これは何故かというと、そのテクニックを使うタイミングを間違っているからだ。

傾聴で大切なことは相手が話しやすい状況をいかに作るかという点に集約されるが、それがどのような状況なのかは相手によって当然に異なる。居酒屋で酒を飲みながらの方が話しやすい人もいれば、沈黙の中から言葉を絞り出す人もいる。対面の方がよければ顔が見えないオンライン越しの方が話しやすい人もいる。

ただそれだけの話なのだが、「テクニック」について学ぶことがあったとしても人間についての興味関心が少ない場合、そのテクニックを上手く使うことができない。それどころかテクニックを使うことが逆効果になることすらある。

つまるところテクニックよりもそれを使う状況の見極めが大切なのだが、そこをおろそかにしたままテクニックばかりを追求してしまうという状況が散見される。

ソフトスキルは「テクニック」と「状況判断」に分けて考えるべき

テクニックをたくさん知っていることでその状況状況に応じた最適な行動を取りやすくなる。とはいえ、上述のようにテクニックそのものよりも、それを使う状況の見極めの方が重要度が高い

つまり、ソフトスキルの習得は下記の二つに分けて考えるべきである。

  • テクニックそのもの

  • テクニックを使うための状況判断

前者は座学で学ぶことができるが、後者は人間そのものに対しての勉強が必要であり、座学だけで学ぶことは難しい。もちろん「人間一般」について座学で学ぶことは可能だが、目の前の相手は世の中に一人しか存在せず、人間一般とかけ離れていることは多いからだ。

それゆえに、人間一般よりも目の前の相手そのものへの興味関心が何よりも大切になるし、そこでのトライ&エラーの繰り返しが状況判断スキルを高めていく。

この部分がハードスキルの習得と大きく異なる部分であり、ソフトスキルの習得とハードスキルの習得を同じように考えてはいけないのである。

ソフトスキルの底上げのために、自分自身を知る

ソフトスキルのテクニックを使うための状況判断が大切と書いたが、その状況を作り上げるのは相手だけではなく、当然にその場に自分も存在する。

つまりは相手と自分の掛け合わせによって状況判断が行われる

としたときに、自分という変数を正しく理解しておくことがその場の状況判断の精度を高める一助となる。

[場の力を利用する]
ソフトスキルのテクニックを使うための状況判断にはもう一つの要素がある。それは「場」である。
これは会議室やカフェといった物理的な場だけでなく、立場や役職といった目に見えない場のようなものもある。
傾聴という文脈でいえば、相手が話しやすい場は当然にあるし、そこを選ぶというのも傾聴のテクニックのひとつだといえる。

まとめ

ミラーリングなどのテクニックは大事だが、それだけを身につけても大きな意味はない。それらのテクニックを効果的に使うための状況の見極めが大切であり、そのためには相手に対しての興味を持ちつつ、自分自身の理解を深めておく必要がある。


P.S. 人間相手の何かは大変ですよね。いまだによくわかりません。


まいにちのご飯代として、よろしくお願いします。