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【️美しい日本語】①「可惜夜」



本日のお品書き📝

前菜🥗:  お久しぶりの投稿です

皆さんこんにちは!
お久しぶりの投稿になります。
2年前くらいに、少しの間自分の抱えている
メンタルの病気について投稿していました。
あれから時が過ぎ、やはり私は文章を書くことが 
好きで、将来的に文章を書くことにまつわるお仕事
ができたらいいな、なんて思ってきました。
「その為にもまずはnoteを再開して続けよう!」
と、思い投稿に至りました✍️
予定としては、2週間に1記事は絶対投稿していくので、読んでいただけたら嬉しいです(*´︶`)
私は社交不安障害を抱えていて、人とお話することが極端に苦手で怖いです。
しかし、文章であれば、何を伝えたいか、どうしたら相手に伝わりやすいかを自分のペースで考えることができて、自分を思いっきり表現することが出来るので、文字を紡いでいくことが大好きです。
私自身、普段1人で辛い気持ちを抱えて俯いている日々が多いですが、そんな中でも私の気持ちに寄り添ってくれた絵本や小説がたくさんありました。
私もそういう文章を書いて、私の文章を読んでいる間だけでも、心や体にあたたかさを感じられたら嬉しいし、私と同じように苦しんでいる人にほんのりとした光をお裾分けすることができたらいいなと思っています。 

スープ🍲: 「可惜夜」の意味

「可惜夜(あたらよ)」
明けてしまうのが惜しい夜の事。

メイン🍖: 「可惜夜」に関する自作の物語

タイトル:『あの子』

私の住む小さな田舎町には、辺りを見渡せる丘が
ある。
夜には、都会みたいにキラキラした景色ではないけれど、夜空に多すぎず、少なすぎない星が広がっているような夜景が広がっているので、町に住む人々の密かな人気スポットとなっている。
毎年7月7日、私はそこに1人で行くのが習慣だ。
もっと正確に言うと、7日になる10分くらい前には
到着するようにしている。
今日も7月6日の23時52分に着いた。
丘に立つ木々をあたたかい風がゆらゆらと揺らし、夏だからか、虫がチロチロと鳴く声が響いている。
こののんびりとした空間にたそがれながら、あの子にもらった腕時計を見ると、いつのまにか23時58分になっている。
あと2分で今年も会える。
楽しみでもあるし、何故か毎年緊張する。
自分でも分かるくらい心臓がドクドクしている。
これはわくわくでなのかドキドキでなのか
分からないけど、とにかく興奮してきた。
心臓の躍動を感じながら目の前の夜景に目をやってから30秒ほど経ち、私の隣にある切り株が月の光に照らされ始めた。

ああ、いよいよだ。
今年もこの日を迎えることができたんだ。

ついに時計の針が7月7日0時をさした。

私たちが高校生だった10年前、あの子は
私の目の前で死んだ。
急すぎて、目の前で何が起こったか
判断出来ず、10秒くらい石のように
固まっていた。
状況を理解出来たのは周りがざわつき始めてからだった。
あの子は病院に運ばれたけど、即死だったとお医者さんから言われた。
信号無視した車との事故死だった。
病院から家までどうやって帰ったかあまり思い出せない。
でも、今も時々夢の中であの子を思いながら、自分でもびっくりするくらいの声量で泣き叫んでいるから、きっとあの時もそうだったのかもしれない。
私とあの子はずっと前から「死にたい」と言い合っていた。
2人で自殺しようとした日もあったけど、それでも2人で生きてきた。
あの子はいつも優しかった。
私とあの子は2人ともいじめられていて、自分もすごく辛くて堪らないのに、私が死にたくてたまらない時には、いつも背中をさすってくれたり、頭を撫でて「頑張ったね」って言ってくれたりした。
いつもあの子は辛い気持ちを抱えながら私を支えてくれていた。


ある日、あの子は私の前でたくさん泣いた。
今思えば、それは最初で最後のあの子の泣く姿だった。

「死にたい、何も考えたくない」
「この先楽しいことが待っていたとしても、もう何も見たくないし感じたくもない」

田舎町にそびえ立つ丘の上であの子は泣き叫んでいた。
私は必死にあの子を落ち着かせようとしたけれど、
手足をジタバタさせて、暴れているのを止められない。

こんな時にまで私は無力なんだ
私なんて大嫌い

いつもあの子に助けてもらっているのに、何も出来ない私をいつも以上に責めた。
もうどうしたらいいのか分からず、これまであの子が私にしてくれていたように、あの子の近くにただいて、背中をさすり続けた。
1時間くらいして、あの子は少しだけ落ち着きを取り戻したように見えた。
その後、これまでせき止められていたダムの水が一気に流れ出すように、あの子の口が流暢に動き続けた。
私は何も言わず、ただただあの子の背中をさすりながら話を聞いていた。

「ねぇ、一緒にゆっくり深呼吸しようよ、ここは空気もいいしさ」 

私はあの子に静かに提案してみた。
 
ふう。すー、はー。
ゆっくり吸ってー、吐いて~。

2人で醸し出している、この世で1番なんじゃないかと思えるこの空間を、空気を逃すまいと心臓や肺と共にたくさん吸収した。
何度か繰り返した後、あの子はかなり落ち着きを取り戻していた。   
しばらく2人で、高層ビルのある部屋の電気が消える瞬間や大きなトラックがまるで、走っている一本道を独占しているかのようにすごいスピードで直進しているのを見たりしていた。
そろそろ何か話さなきゃと思ってあの子が座っている方に首を動かすと、月光があの子の目に今だ浮かんでいる何かを照らしている。

今日は朝までここに2人でいよう

心の中で勝手に決めてから、また私は目の前に広がる風景に目をやった。

ふぅぅぅ、ふぅぅぅ、ふぅぅぅ

隣から、夜空に溶けてしまいそうな深呼吸が聞こえてきた。

「あ~、スッキリした!ありがとうね」

そう言うあの子の目にはもう、さっき見たはずのものは浮かんでいなくて、代わりに月の光よりも優しいキラキラを発していた。

「え、私何も出来てないよ。今だってただ
近くにいることしか出来なかったよ」
「何も出来なくて自分のこともっと嫌いになったよ」

うるうるしてしまいそうになる私にあの子は静かに微笑みかけてくれた。
そしてゆっくり口を開いた。

「私、こんなに感情を表に出したの初めてだったの。こんなに暴れちゃうとは思ってなかったから、自分でもビックリしちゃった。暴れ狂ってしまったけどさ、ずっと傍にいてなだめてくれたでしょ?それがすごく嬉しかったの」

ああ、あの子の言葉を今は全部受け止めたい。
全部全部、忘れちゃだめだ。

バッグにペンとメモ帳があるか探している私に、一瞬戸惑いのような表情を見せたあの子はさらに言葉を続ける。

「私たち、お互い死にたい気持ちを共有できるしさ、こうやって片方がどん底にいるときには這い上がってくるのを静かに待ったり、手助けしたりすることだってできるでしょう?こういう関係築ける人ってこれまでも、そしてこの先もあなただけだと思うの。だからね、私も辛いけど、あなたが辛い時には全力で助けるから、守るから一緒に幸せになろう?あなたは何も出来てないって思うかもしれないけど、私たちお互いに助け合えているんだよ」

私はあの子の紡ぐ言葉一つ一つを噛み締めていた。
これまで「私は辛い」「私は悲しい」と私のことしか考えていなかったけれど、あの子は自分のことでも精一杯のはずなのに「私たち」のことを考えてくれていた。
それがあまりにも嬉しくて、目から滝のように何かが溢れ出す。

ずるいよ、なんでそんな風に考えられるの?
私に話してくれたこと以外にも、たくさんの
悲しい出来事に遭遇してきたんだろうな
こんなに細くて小さな体に、数え切れない程の
おもりを背負ってきたんだね

私たちは太陽が登るまで2人の空間に浸っていた。
そして、2人で生きることを約束した。


2人で生きることを決めたあの日から約1ヶ月後、
あの子は死んだ。

ねえ、なんで私を置いていくの
2人で生きてこうって言ったじゃん

あの子は何も悪くないのにそう思ってしまった。
たしかにあの子も死にたがってたけれど、
一緒に生きていく約束をしたばかりだったのに。
でも、やっぱりあの子も辛かっただろうから
これで生きることから解放されて楽になれたんだろうか。
何もかも分からなくて、考えれば考えようとするほど、自分の中で結論を出そうとするほど頭が割れるように痛む。
あの子が死んだ日からしばらくは、不登校になり、ベッドに横たわることしかできなくなった。

それからしばらくして夏になり、少し外に出れるようになっていた私は、七夕の日を迎える20分ほど前に田舎町の丘にいた。
特に何も用事はなかったが、来たくなったのだ。
そして七夕の日を迎えた瞬間、私の隣にある切り株が、ステージのように輝きだし、あの子の匂いが風に運ばれてきた。
いつの間にか亡くなったはずのあの子が切り株に座っていた。

え、あの子がいる…

私は理解が追いつかなくて固まっていると、
あの子はいつの日かみた、柔らかくて静かな
微笑みを私に向けていた。

「久しぶりだね、最近体調はどう?」

確かにあの子の声だ。

「生き返ったの…?」

私は震えた声であの子に問いかけると、

「ううん…。まあ、そうだったら嬉しいんだけどね。あ、あのさ、急に死んじゃってごめんね。私もまさかこうなるとは思ってなかったの。体調平気?」

そう言った。あの子は自分が急に死んだ、それも事故で命を落としたという状況を完全に飲み込めず、死んでからも苦しんでいるはずなのに、私の心配までしてくれている。

ああ、あの子は本当に優しすぎる
あの子の優しさはずっと変わってない

「えへへ、大丈夫だよ」

私はわざとおどけて見せた。

「そんなことよりこの状況が全く理解出来ないんだけど、でも、こうやってお話また出来てるのが嬉しいよ」

そう言うとあの子は深く何度も頷いていた。
その後休まず自分の話したいことをお互い
語り合った。
笑ったし泣いたし何より久しぶりのこの感覚が楽しくて、喜怒哀楽とはこのことかと実感させられた。
明け方になり、

「あ、そういえば」

と、あの子は思い出したように言った。

「毎年7月7日の0時からお日様がおはようするまでの年1回、こうやってここでお話できるみたいなの。私も仕組みはよく分からないんだけど、とにかくそうなんだって。だから毎年会いに来るからさ、来年もここに来てよ」

え、どういうこと?

そう言いかける前にあの子は目覚めた太陽の光と一体化して、ふわーっと消えてしまった。

今日起こったことはありえないこと過ぎて、もしかしたら夢なのかもしれない。
最後にあの子が言ったことも、理解できない。
でもあの子が言ったってことは、きっとそうなんだろう。
来年も試しにここに来てみよう。

そう考えているうちに丘の上で眠っていた。


あれから今日まで毎年あの子とこの場所で会っている。
今だにどういう仕組みで会えているのか分からないけれど、年に一度の、唯一楽しみにしている日だ。
今年も7月7日の0時を迎えた。

あの子と今年は何話そうか。
どんな話を聞かせてくれるんだろうか。

あの子と会えるこの夜が明けなければいいのに。
ずっと2人だけの世界が続けばいいのに。
☆Fin☆


ドルチェ🍨:「可惜夜」にまつわる雑談

皆さんは「明けて欲しくないな、、」と思った夜はありますか?
私は何度もあります🥺

まず、信頼できる人と過ごす夜です。
ご飯を一緒に作って食べたり、ベランダでのんびりお話したりする夜はずっとこの時が続くのなら生きてたいなと思ってしまいます。
普段かすれそうな、誰にも聞こえないくらいの音量で叫んでいる私の声を、SOSを、この人ならちゃんと耳をすませてキャッチしてくれるかもと思えて、2人だけの世界が広がる今夜が1秒、1分経つ度に時が進んでいることを惜しく思います。。

次に1人で海にいる夜です。
昼間の海は太陽の光が海に反射していたり、きれいな青色が目の前に広がっていたりします。
また、泳ぐことや砂浜で貝殻を探したりビーチバレーをしたりなど、海ならではのアクティビティを楽しんでいる人々の姿がよく見られます。
もし絵のコンテストがあって、お題が「海」なら
お昼の海を書く人が多いのかもなぁと勝手に思ってます🥹
でも、私にはお昼の海は眩しすぎて、キラキラしすぎていて直視できないことが多いです😭
一方で夜の海は私にとって、とても居心地がいいなと感じています。
暗がりが広がる中、月の光が柔らかく海にさしこんでいて、波の音が静かに響き渡るところに、ビニールシートをひいて1人で座りながら、その空間を味わうのが好きです🫧
海水が私に近づく時に漂ってくる潮の匂いやゆらゆらと吹いている風、卵色の月がほんのり照らしている海は、生きていたくなくて何も考えたくないという気持ちを抱いている私を叱るのではなく、いつも柔らかく包み込んでくれます。
夜の海に行ってしゃがみこんでいるときは、大抵目を腫らしていて体もぶるぶる震えているのですが、そんな情けない私のことも夜の海は受け入れてくれます。
冷えきった私の体と心の内側に、夏夜の海に吹くあたたかい風のようなものを感じられます。
こんなにも優しい空間を独り占めできている感覚になることができていることに喜びを感じる反面、太陽が目覚めたら、この空間が幻となってしまうことが悲しくなってきて、「この夜が明けないで欲しい、、」と思い、また涙が溢れてきます🥹
これから夏に近づくにあたって、どんどんあたたかくなってくると思うので、夜の海に行ける日が多くなりそうで嬉しいです(*  ˊ꒳ˋ*)

ドルチェまで召し上がっていただいた方、本当にありがとうございます🌷
お口に合いましたでしょうか??
来週も投稿するので、よければリアクションしていただいたり、読んでいただけたら嬉しいです!
これからもよろしくお願いします✨
皆様の今日一日が少しでも過ごしやすい日になりますように☆。.:*・゜








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