022_N公園

公園がある。
飲み屋街の隅に公園がある。

遊具も殆どない。
ブランコと小さな滑り台、
２つのベンチがあるだけの公園。

子供が遊ぶような立地ではないけど、
簡素な公園がぽつりとある。
N公園というらしい。

飲み会帰りに公園を通った時、
ベンチ横にスマホを眺めている女性がいて、
誰か待っているのかな、と前を横切った。

ちらりと女性の方を見ると、
女性は口角をぐにゃりと上げて、
小刻みに頭を前後に揺らしていた。

人様の顔をじっくりと観察する気もなく、
通り過ぎる際に見えただけだが、
顔の下半分だけを無理やり歪ませた表情で
頷くように揺れていた。

見てはいけないものを見たなぁなんて感じで
ばつが悪いというか、気まずいというか、
少なくとも良い気分ではなかった。

それからしばらくして、
先輩達の送別会前に時間があったので
後輩と０次会をしようという話になった。
どこかで集合して適当な店に入ろうと約束し、
件の公園で後輩を待っていた。

しばらく待っていると、
良さそうな店を見つけたと後輩から電話が来て、
その店に直接集合することにした。

店に入って最初のビールを飲んでいると、
後輩が切り出した。

実は一度待ち合わせ場所に行ったんですよ。
そうしたら先輩の横に女の人がいて、
知り合いかと思ったけど
話している様子もないし、不気味だし、
先輩にこの店まで来てもらいました。

そんなことあるか？など話しているうちに
時間も近づいてきたので、店を出ることにした。

件の公園を通って向かおうという話になり、
公園に入る。

細い電灯の下、女がいた。
通り過ぎる際にチラリと目を向けると、
やはり口角を上げ、にたにたと笑っていた。

自分も後輩も無言で公園を抜ける。
大通りに出たところで後輩が言う。

顔見ました？
めちゃくちゃ怒った顔してましたね。

#眠れない夜に