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015_ダム

ダムがある。
大学を横目に車で20分ほど山を進むとダムがある。

もっと車を走らせると少し有名な天体鑑賞スポットがあるのだが、
カップルや家族連れが多いのて、
ふらっと夜風にあたりたいとき、星を見たいときは
そこに行くのが定番だった。

その日も友人と星でも見に行くかと、男3人で出発した。
本線から脇道に入ったところに車を置いてダムに向かう。

5分程歩いたところに開けたスペースがあり、
澄んだ夜には空いっぱいに星が散らばるなかなか良い場所だ。

電灯も殆どないため暗がりのなかを歩くが、
1本道だし、草が茂っていても一応は簡単に舗装されているので
特に迷うことも危ないこともない。



これまでも何回も通っている。
ただ、その日は違った。


5分歩いても10分歩いても目当ての場所に着かない。
こんなに遠かったっけ、と話しながら歩いていたが
だんだんと無言になってくる。

Tシャツとはいえ歩いていると汗ばんでくる。
草木の湿った空気が重く、心地よかった青臭さが不快に変わってくる。

ここまで歩いたのに今更戻るのもなぁ、と考えながら、
ポケットから煙草を取り出し火をつけた。



深く煙を吸い込み、吐き出す。



空気が軽くなった気がした。

あと少しだけ歩いてみるか、と声をかけ足を進める。
3分もしないうちに到着した。



その後、いつも通り星を眺め夜風を楽しんだが、
帰りは5分ほどで車に着いた。

どうして行きだけ時間がかかったのかは分からない。



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