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2022年の小熊ワークを振り返る+年間ベストアルバム

※ヘッダー写真:サマーソニックのカーリー・レイ・ジェプセンで盛り上がる小熊(右下)

2022年の小熊ワークを振り返る


2022年は仕事的にもリスナーとしても、とにかく来日公演の復活が大きかった! 秩父のラブシュプでロバート・グラスパーを観たときの「これを待ってた!」という感動は一生忘れないと思います。マジで泣いたもの。音楽は人生、人生は音楽……。

それが5月ごろの話で、そこからRolling Stone Japanでフジロック/サマソニの特集を作り始めてギアが入り、夏頃はかなり異常なテンションで働いてました。世の中的には2022年もしんどい話ばかりだったけど、仕事は楽しくて仕方がなかった。

コロナ禍に入ってから海外アーティストの取材にもZoomが導入され、個人的にはむしろやりやすくなった一方で、来日公演が途絶えたことで海外との溝はどんどん開いていき、自分がやってる仕事の存在価値を見失いそうになったこともありました。そんな憂鬱がフジとサマソニで吹っ飛び、秋くらいからは来日公演が激増。一時は通いまくって具合が悪くなったけど(苦笑)、繁忙期のまま一年が終わろうとしていて、本当に生きててよかった。

もう一つ、アジカンの後藤正文さん、つやちゃん、矢島由佳子さんとポッドキャストを始めたのも大きかったです。言い出しっぺは自分なんですが、こんな未来がやってくるとは。この1年で43エピソード。ときには素敵なゲストを交えつつ、愉快な音楽談義をやってますのでよかったらぜひ。最新回ではNo Buses/Cwondoの近藤大彗さんを迎えています。

4月のWOWOW「第64回グラミー賞授賞式」スタジオゲスト出演は、とても良い親孝行になりました。こんな未来がやってくるとは。光栄すぎて今思い出しても緊張しますが、いろんなところで「観ました!」と声をかけてもらえて嬉しかったです。もちろん、来年の授賞式に向けて今から猛勉強中(アピール)。

Spotifyによると、小熊が2022年に一番聴いたのはスパークス。もちろん映画『スパークス・ブラザーズ』『アネット』と夏のソニックマニア出演&単独公演が大きかったわけですが、その関係でスカート・澤部渡さん、奥浜レイラさんとトークイベントでご一緒できたのも嬉しかった。こんな未来がやってくるとは。『スパークス・ブラザーズ』未見の方はAmazonプライムでぜひ。「When Do I Get to Sing My Way」で泣きましょう。

以下、編集者/ライターとしての個人的ハイライト。携わったすべての仕事に力を入れてきたのはもちろんとして、そのなかでも特に印象深いもの。一緒に仕事してくださった方々、読者のみなさまに感謝の気持ちを込めて。まだ読んでない方は年末年始にどうぞ。


編集仕事

メイン・ヴォーカル/作詞担当だったアイザック・ウッドが脱退した直後のインタビューということで、そもそも取材してよいのか心配しましたが、温かい話が聞けてよかった。フジロックのライブにも彼らの人柄が滲み出ていたような気がします。インタビューは佐藤優太さん。

アレックス・カプラノスが「ワオ! それを知ってる人がいるなんて信じられないよ」「おいおい、ちょっと待ってよ。今の質問にいろんな意味で度肝を抜かれているんだけど(笑)」とマジで言ってて面白かった。大先輩・荒野政寿さんによるビックリインタビュー。

客層の若さに驚き、時代の節目として印象深かった「POP YOURS」を、つやちゃんがビシッとレポート。つやちゃんは2022年にますます飛躍、ライター/批評界隈のゲームチェンジャーだと思いますが、どうやったらこんなにカッコイイ文章が書けるようになるのだろうか。

内本順一さんといえばノラ・ジョーンズ。当時の日本盤ライナーノーツを学生の頃に熟読していたので、『Come Away with Me』20周年についてのインタビューを内本さんに依頼できたのは光栄の極み。ノラの武道館ライブは年間ベスト級によかった

ロバート・グラスパー相関図

相関図をつくるのはこれで4回目。作を重ねるごとに緻密になっているのは小熊のせい。完成形にたどりつくまで死ぬほど大変だったけど、秩父でグラスパーに渡したら大喜びだったので報われました。監修:柳樂光隆さん、デザイン:川井田好應さん、イラストレーション:Yuki Ohamaさん。

リンダ・リンダズ/マネスキン

この2組は個人的にも大好きだし、絶対に日本で盛り上げなければという勝手な使命感もあり、来日前〜サマソニ後までインタビューを含めて記事を作りまくったので2022年を象徴する存在。

我らが岡俊彦さんがインタビュー。タトゥーを見せたら4人もびっくり

素敵イラスト&テキストは多屋澄礼さん。久々にお仕事できて嬉しかった。

グッドインタビューは柴那典さん。Zoom越しにも大物感がヤバかった。

敬愛する音楽ライター・新谷洋子さんによる激アツレポート。本当にすごいライブだった。

小熊がインタビュー。取材時間は10分。幕張メッセで彼らの出番前に撮影した超クール写真は横山マサトさん。

新谷洋子さん、辰巳JUNKさん、つやちゃんというオールスターキャストの合評。1月20日に出るニューアルバム『Rush!』も楽しみですね。

マネスキンと小熊俊哉

アーティスト対談

夢企画を形にできるという意味で、いちばん役得な仕事。実際にはスケジュール調整が難しかったり、うまくいくかドキドキしたりもしますが、いずれも反響が大きくてよかったです。こういう対談がまた日本で組めるようになったのも2022年という感じ。関係各位にも感謝。

この5人が並んでる構図が最高。インタビューは矢島由佳子さん、写真は垂水佳奈さん。スーパーオーガニズムの2023年ジャパン・ツアー東京公演にCHAIが出演します

二転三転どころではなくて直前までハラハラしたけど、Jがとても饒舌で、思いのほか盛り上がってよかったです。インタビューは赤尾美香さん、写真はKazma Kobayashiさん。

miletさんにはデビュー当初から取材してきて、クーラ・シェイカー愛を何度も聞いてきたので、ここぞとばかりに企画。感動のサマソニ共演のすぐあとに撮影。クリスピアンの「永遠の王子」オーラも凄かった。写真は垂水佳奈さん。インタビューはもちろん小熊。

Dirty Hit

The 1975、リナ・サワヤマ、ビーバドゥービーも2022年を象徴する存在だと思いますが、この3組には何らかの形で取材してきたし、他媒体でたくさんインタビューも載ってたので、個人的にぜひ話を聞いてみたかったのがDirty Hitオーナーのジェイミー・オボーンでした。取材オファーをご快諾いただき、興味深い話を伺うことができてよかったです。

さらに年末には、小熊の2022年ベストでもあるデビューアルバム『19 MASTERS』を発表したDirty Hitの新鋭、サヤ・グレーの来日インタビューも実現。もちろん取材したかったアーティストNo.1でもあったので、ここぞとばかり取材できてよかったです。写真は豊田和志さん。

ライター仕事

2022年の邦楽では断トツに素晴らしいアルバムで、気合を入れてレビューを書きました。SENSAはいつもオファーが絶妙なので勝手にリスペクト。自分はいつも依頼する側なので、ナイスな依頼をいただくと大変喜びます。

カーリー・レイ・ジェプセンは、いかにポップとオルタナティブを横断してきたのか。全身全霊でキャリアを総括。「1500字程度の新作レビュー」という依頼だったのに、字数も内容もまったく別の怪文書になってしまった。岡村さんごめんなさい。


小熊の年間ベストアルバム


すでに長くなってしまいましたが、ここから年間ベストアルバムについて。

このリストは12月26日に生配信&有観客開催した、年末恒例〈blkswn jukebox〉年間ベスト回「2022 the Final Playback」のために用意したもの。4時間半もトークしましたので、まだの方はアーカイブをご覧ください。

〈blkswn jukebox〉では若林恵さんと一緒に、365日休まず新譜レビューを更新しています(もうすぐ4年目に突入)。どうせなら本当に良い作品を紹介したいので、毎週たくさんの新譜をチェックしており、その積み重ねがいろいろ役に立ってます。

若林さんとの配信トークは月イチで行ってますが、熱心なリスナーが増えて、ひとつのコミュニティみたいになってきました。最近はリスナーの方に仕事をお願いしたりもしてます。〈blkswn jukebox〉は2月中旬に京都でのイベントも決定(お近くの方はぜひ)、そのあとは若林さんとフィービー・ブリジャーズの京都公演に行く予定。2023年も楽しみですね。

小熊、黒鳥福祉センターにて

essential 10

Saya Gray - 19 MASTERS
上記のとおり、非常に共感を覚えるアルバムでした。

yeule - Glitch Princess
ムラ・マサの前作『R.Y.C.』の続きを見せてくれたような印象も。レコード入手できてないので、誰かください。

Claire Rousay - everything perfect is already here
タイトルが好き。

Big Thief - Dragon New Warm Mountain I Believe in You
来日公演とてもよかったです。

Makaya McCraven - In These Times
レコードがとにかく高いこのご時世に親切価格。柳樂光隆とやったエンジニアのデイヴ・クーリー取材(↓下のほう)が印象深い。

The Linda Lindas - Growing Up
上記のとおり、死ぬほど聴きました。

Harry Styles - Harry's House
コーチェラで一気に魅了され、そのあと死ぬほど聴きました。川谷絵音さんも仰ってましたが、とにかく「ちょうどいい」。辰巳JUNK先生に書いてもらったコラムも名文です。

Carly Rae Jepsen - The Loneliest Time
上記のとおり、死ぬほど聴きました。

Tchotchke - S.T.
マックス・ツンドラの年間ベストで知って激ハマり。こんなの好きに決まってる。

Duval Timothy - Meeting with a Judas Tree
ケンドリック・ラマーの新作に参加してると知ったときはビックリ。個人的には2020年作『Help』の印象が強いけど、今年も存在感がありました。そういえば2022年は、Vegynを生で見れたのもよかった。


favorite 10+


Nouns - While Of Unsound Mind
李氏さんが異常に推してたことで有名。小熊も好きです。

ELIZA - A Sky Without Stars
2022年のもっと聴かれるべきだと思うアルバム第1位。1曲目「Straight Talker」のイントロから衝撃的だし、こういう感じが好きな人たくさんいるでしょう。

Jorge Drexler - Tinta y Tiempo
年末に聴いてビビる。なんたる良さ。ラテン・グラミー賞を獲得したC. Tanganaとのコラボ曲がめちゃカッコイイ。

James Krivchenia - Blood Karaoke
もしかしたらBig Thief本隊よりかっこいいかもしれないスーパー衝撃作。

Jasmine Myra – Horizons
品のない連中ばかりが持て囃される時代に、「洗練」とは何かを教えてくれる。

They Hate Change - Finally, New
2022年のヒップホップではこのアルバムと、JID『The Forever Story』が特に好きでした。

Vicky Farewell - Sweet Company
レコードの帯がめちゃ可愛い。2022年はドミ&JD・ベックなど、アンダーソン・パーク×マック・デマルコ人脈が大活躍でしたね。

Bruno Berle - No Reino Dos Afetos
ジャケはちょっと怖いけど、めちゃ沁みる。

Isabella LoveStory - Amor Hardcore
新感覚のレゲトン。いち早く起用してるムラ・マサの嗅覚よ。

Sobs - Air Guitar
もちろん好きに決まってますよね。「Burn Book」は小熊の2022年ベストトラック。

さらにもう10枚選んでたのを思い出しました。まとめて聴けるプレイリストも作ってました。それでは、みなさん良いお年を。

Marina Herlop – Pripyat
Naima Bock - Giant Palm
JID - The Forever Story
TOPS - Empty Seats
The pale faced family on the hill & Oliver Coates - The pale faced family on the hill
Linda Ayupuka - God Created Everything
Ravyn Lenae - HYPNOS
Akusmi - Fleeting Future
Nosaj Thing - Continua
Isik Kural - in february


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