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受け継いだレシピ。フランス人が作るフレンチトースト。


「レシピを受け継ぐ」っていうと、
一子相伝とか名店の味とか
あるいは○○家で代々受け継がれる味...
みたいに少し敷居が高めのシチュエーションを
思い浮かべてしまうけど、

今回は、なにげない日常の中にも
「レシピを受け継ぐ」瞬間が訪れるかもしれない…
というお話です。

フランス流フレンチトースト「パン・ペルデュ」
(直訳すると「失ったパン」)は、
身近な人から教えてもらったレシピの中でも
特に思い出深いもの。

このパン・ペルデュを作ると、
”味”とか”文化”とかって、
じつは誰が受け継いでも
いいものなのかもしれない...って、
そんな風に感じるきっかけとなった出来事を
いつも思い出すのです。

フレンチトーストは日本でおなじみのスイーツ。

本場フランスでは
「Pain perdu(パン・ペルデュ)」
と呼ばれています。

2005年から1年ほどを過ごしたパリにある
当時住んでいた小さなアパルトマンの
こぢんまりとしたキッチンで、
私はフレンチトーストでななく
初めて「パン・ペルデュ」と出会いました

フランス人の友人が、
おばあちゃんから習ったという作り方で
焼いてくれたのです。

慣れた手つきで作業をしながら、
こんなエピソードを教えてくれたのも印象的。

「そのむかし乾燥して食べにくくなったバゲットを
食べやすくする方法として編み出された、
フランス人の生活の知恵だよ。
最後まで美味しく食べる工夫をしたってことだから、
日本語にするなら
”失われたパン”よりも”もったいないパン”
の方がしっくりくる翻訳かもしれないね。」

日本語が堪能な友人らしい、
とても気の利いた説明だった。

お馴染みのフレンチトーストなら、
子どもの頃に母が作ってくれた
思い出の味があります。

母のフレンチトーストは、
6枚切りくらいの食パンを使って
ボウルに牛乳・卵・砂糖を入れ
(分量はおそらく目分量)
混ぜた液体に食パンをひたし、
バターをのばしたフライパンで焼いたもの。

それはそれで美味しくて大好きです。

フランスで習った
友人のおばあちゃんのレシピは
ちょっと違います。

パンは乾燥してカチカチ
噛んだら歯が欠けそうなバゲット
(フランスパン)を使用。

フランスのパン屋さんでバゲットを買うと、
持つ部分にだけ紙が巻かれた
剥き出しのバゲットを渡されます。
日本のように丁寧に細長い袋へ
包んでくれたりはしません。
そして、
湿気が無く空気が非常に乾燥しているので、
パンはパン屋から出た瞬間から乾燥し始める。

ただ!
パン職人が作る焼き立てのバゲットは、
外側カリっ中がモッチモチ♪
とてもじゃないけど言葉では
上手く表現出来ないし、
日本ではお目にかかれないレベルの
美味しさなので…誘惑に負けて
端っこを一口かじったら最後、
80cmほどあった長さは
自宅に着く頃には10cmほどになっている
ことがしばしばありました。笑
(この後ふたたび翌朝用のバゲットを
買いに行くハメになります)

何が言いたいかというと…
美味しいバゲットは
パン・ペルデュになるまで
残っていることの方が稀ということ。

前置きが長くなってしまったけど、
パンは乾燥したバゲットを使うのが基本です。

【本場フランスのフレンチトースト「パン・ペルデュ」レシピ】

材料

・乾燥したバゲット…余ってる分
・牛乳…バゲットに染み込む量
・卵…1〜2個(バゲットの量により)
・グラニュー糖…適量(最後にまぶす)

※適当で申し訳ない。。。

作り方

⒈ バゲットを牛乳にひたす。
⒉ 溶き卵を、牛乳が染みて柔らかくなったバゲットに絡める。
⒊ あたためたフライパンにバターをのばし2を焼く。表面がカリッとするまで。
⒋ 砂糖をまぶして皿に盛り付ける。

フランス流の作り方のほうが、
パンの内側が甘くならないので
最後まで飽きずに食べられるところが
気に入っています。


わたしはメープルシロップが好きなので、
砂糖をまぶす代わりに
焼いた直後の熱々のフライパンへ
メープルシロップを回し入れ
キャラメリゼするに1票!

遅延型グルテンアレルギーになってからは、
グルテンフリーパンで作るようになりました。
なるべくプラントベースな調理にしたいので、
牛乳は植物性ミルクで代用します。

友人のレシピで、
食パンを使ったバージョンで作ったり、
ベーコンみたいに塩気があるものを組み合わせて
アレンジする時も。

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2012年、友人は
このレシピとたくさんの思い出をわたしへ残し、
この世を去ってしまいました。

そして
おばあちゃんが可愛い孫に伝えた
大切なレシピを、
文化も国籍も違う私が
受け継ぐカタチとなりました。

以前、「おいしい記憶はシアワセの記憶?」
という記事を書いたのですが、

もう15年近く作っているこのパン・ペルデュも、
友人が子どもの頃に
おばあちゃんと一緒に作りながら習った…という
素敵な思い出のエピソードを丸ごと含めて、
今ではわたしの
美味しくて幸せな記憶の一部になっています

このレシピと向き合うことは
正直、悲しみを伴う。

それでも、作り続けていくことに
意味があるような気がして…
作ることをやめなかったんだと思います。

このレシピを、
次また誰かが引き継いでくれるように、
素敵なエピソードも含め
出来るだけ多くの人へ作っていきたい♪

今はそんなふうに感じています。

※レシピの転用・転載はご遠慮ねがいます。

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