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私的2020年ベストアルバム

例年であればTwitterでアルバムジャケットを並べた画像をツイートして終わっていたのですが、今年の新譜には例年にも増して思い入れがあるものが多くツイート一発では終われない、ということでnoteにて文章を書いてみることにしました。
「私的」とタイトルにつけたことにもあるように、音楽的な質の高さ、評論的文脈上での評価ではなく個人的な好みの話をします。湧く感情に身をまかせエイヤーで書きます。ご了承ください。

今回は邦楽9枚、洋楽9枚を選んでいます。この括りももはやどうなんだみたいな所はありますが、今回はこれです。来年以降は混ぜるかも。
9位→1位に向けて、邦洋交互に書いていきます。ではどうぞ。

9. 藤井風 「HELP EVER HEART NEVER」

今年の超新星、藤井風の1stアルバムです。
1月ごろ、まだアルバムが出る前に「何なんw」のシングルを聞いて衝撃を受けて、その時期「何なんw」しか聞けなくなっていたのを覚えています。
シングル曲がハイライトかと思いきやアルバム全体で見ても遺憾無く才能が発揮されていて、ついつい聞きたくなっちゃうことが多かったです。
これは確か誰かの受け売りなんですが、このアルバム、特別音楽的に新しいことをしている訳ではない、むしろ歌謡曲のような、ベタな音楽であることは間違い無いです。それでもなお圧倒的な魅力を放つのが、藤井風の持つ歌の力なのかな〜なんて思っています。

9. Rodrigo Carazo 「Octógono」

今年の自分の中の大きな音楽的発見の一つに、アルゼンチン・コルドバを中心とする現代フォルクローレシーンとの出会いがあると思います。
きっかけはBanti「Proyecciones」がCDでフィジカル化するニュースだったと思います。そこからズブズブとハマって行き、Cribas, Aca Seca Trio、Lucas Herediaと掘っていった頃にリリースされたのがこのRodrigo Carazoのアルバム。これも現代フォルクローレの要素がギュッと詰まった素晴らしいアルバムです。
現代フォルクローレに往々にして言えることですが、まずなんと言ってもメロディが圧倒的に美しい!!そしてポルトガル語の歌の響きと緩めの横乗りグルーヴ。自分の大好きなフォーク / SSW、そしてブラジル音楽の要素が全部乗せで嫌いなわけがないです...!!

8. TAMTAM 「We Are the Sun!」

2016年作「NEWPOESY」が出たときにも思った気がしますが、今の日本でTAMTAM以上にリズム・オリエンテッドなバンドってもう中々いないですよね。その極地に至り始めたアルバムだと思います。
しかも今回は今まで以上に「人間が演奏している感」も多分に感じて、その土臭さがまたリズムへ意識を向けさせてきます。これは踊らずにはいられない...!
あとはこちらのMikikiでのインタビューを読んだときの、各メンバーの深い深い音楽へのナレッジに改めて驚いたのを覚えています。
「いいサン・ラとよくないサン・ラ」というワードは自分の中での今年の流行語ノミネートです。自分も理解できるようになりたいです。

8. Chicano Batman 「Invisible People」

チカーノソウルを現代に知らしめるインディーバンド、Chicano Batmanの4thアルバムです。
なんて一丁前に書いていますが、自分自身もChicano Batmanによってチカーノソウルという音楽を知り、Sunny & the Sunlinersや現代ではBobby Orozaなんかを聞き出してBIG CROWNレーベルの存在も知ったクチなので、本当にチカーノソウルに貢献する偉大なバンドだと思います。すごい。
内容はチカーノソウル特有の「甘茶」的なスウィートさと、現代的なサウンド、それからサイケなエッセンスも降りかかって非常にいい塩梅です。
あとはベース・ドラムのリズム隊が音良すぎます。特にドラム、何を叩くとこんなに内まった良い音が出るんですか??
個人的には一つ前のアルバム「Freedom is Free」もおすすめです。Invisible people聞いてみて気に入った方がいればそちらもぜひどうぞ。

7. 寺尾紗穂 「北へ向かう」

今年はもう一枚の「わらべうた2」の方も素晴らしい内容ですが、自分はこちらを選んでみました。
ここではより個人的な話をします。
自分自身やはり3月〜5月くらいの自粛期間は非常に辛く、「もうこのまま世界終わっちゃうんじゃないか」なんて思いながらTwitterでの混乱を見てまた心が落ち込むということを繰り返していました。
そんな中で心の支えになってくれたのはSSWたちの静かな音楽でした。例えばJudee Sill, Nick Drake, 青葉市子さん, そして寺尾紗穂さんです。
8月の頭、今池得三というライブハウスでの寺尾さんの弾き語りライブに行きました。第2波が始まったくらいの頃で外出に緊張感のある頃でしたが、最初のMCで寺尾さんが「覚悟を決めて来てくれてありがとうございます」と言われ、救われた気持ちになったことを強く覚えています。
そういう意味でも、自分の中では「北へ向かう」という曲は辛かった2020年の幸せな瞬間を象徴する1曲です。

7. HONNE 「no song without you」

エレクトロデュオ、HONNEのアルバムです。
コロナ禍の到来とロンドンのロックダウンを経て製作された本作は、非常に内省的な要素を強く感じる内容となっています。
今までのHONNEのカタログに比べても音数も削ぎ落とされてシンプルに感じられますが、それが今2020年には丁度良いのかもしれません。
また自分の趣味的にも自粛期間くらいからよりシンプルでより落ち着いた音楽を求めるようになっていたので、個人的にも居心地の良さを感じながら聞いていたアルバムです。
特に「s o c i a l d i s t a n c i n g」は自分の中でイメージする「コロナ禍のサウンドトラック」の重要な1曲です。

While the world's in quarantine / I will see in my dreams
世界が隔離されている間 夢の中で会いましょう

全世界で苦しみながらも同じ時代を生きてきたことの証左になっていく曲だと思います。

6. サニーデイ・サービス 「いいね!」

みんな大好きサニーデイサービスの新作です。自分も大好きでした。
2016年の「Dance to You」以後、再始動したサニーデイサービスでは、オートチューンやシンセを活用した現代的でチャレンジングなアプローチが多々見られましたが、今回はそれとは趣を変え、真っ直ぐなバンドサウンドが展開されました。
また、バンドサウンドということで初期の「サニーデイ・サービス」、「愛と笑いの夜」等の事を思い出しましたが、それらのアルバムのアンニュイなオーラともまた異なる、ポジティブな曲調の楽曲が並んでいます。
それでも歌詞を見るとまた違った感情が見える、そんな一筋縄ではいかないサニーデイらしさも見られます。
丸山さんとの別れもありバンドも大変な時期、来年にはもう50歳になってしまう曽我部恵一さんが、それでもなお「春の風」「コンビニのコーヒー」のような青春の香りがするエネルギッシュな曲を作ってきてくれることが嬉しいです。

6. Kevin Krauter 「Full Hand」

Hoopsのギタリスト、Kevin Krauterのソロ作2ndです。
Kevin Krauterの曲、ないしはHoopsでの曲にも共通して言えることですが、この人が鳴らす包み込むようなギター/シンセの音使いは、他のどのアーティストも出していないシグネイチャーな音だと思っています。
全体を通してビートはエレクトロ/ヒップホップを通過した現代的な硬い質感ではあるんですが、前述のサウンドスケープ感や随所に出てくるアコースティックギターやピアノなどの生楽器のせいか、総合的に見たときには非常に柔らかく、優しい感触になっているように思えます。そのバランス感覚もこのアルバムの素晴らしい点の一つですね。
余談、今年はHoopsの新アルバムも発売されるはずで楽しみにしていたのですが、例の件のせいで1日だけサブスクに解禁された後に削除されてしまいました。あちらも年間ベストに入ってくるクオリティだっただけに残念です...

5. Laura day Romance 「Farewell your town」

若干身内贔屓にも思われてしまうかもしれませんが、このアルバムはやっぱり挙げないといけなかった。東京のインディーズバンド、Laura day romanceの1stフルアルバムです。
元々自分がローラの曲に対して凄いな、と思っていたのはポップに対するバランス感覚、塩梅の取り方です。メンバーの好み的にインディーの質感は根底にありますが、それが前に出過ぎず、ポップスとしてのバランスを保っています。
今回のアルバムではその普遍性、バランス感がさらに深化しています。
ライトに音楽を聴く人はそのメロディや歌詞の人懐っこさやポップさで、音楽好きは深く聞いた瞬間に細かい各楽器のフレーズから現れてくる古今東西の音楽へのリスペクトやオマージュで。どんな人も受け入れられ、好きにさせてしまう境地に至っていると思っています。
また個人的には、「どんな時間で、どんな気分にも馴染む」アルバムだと思っています。
自分で聴く曲を選ぶ時、無意識に曲の雰囲気で「朝に聴く曲」「夜に聴く曲」など区分けしているように思えます。夜にハードなテクノなんかは聞けないし、朝一でソロピアノのアルバムなども選ばないです。気分の方も同様のことを考えます。
その点今回のアルバムでは、いつ聞いても同様にポジティブな感情を抱くことができます。自分の無意識の世界の話なので正確に理由は分かりませんが、やはりバランス感覚の良さなのではないか、と思っています。
真にどの時間のどの街でも鳴ることのできるアルバムだと思います。心から尊敬してやまないバンドです。

5. Adrianne Lenker 「songs&instrumentals」

Big Thiefのボーカリスト、Adrianne Lenkerの最新ソロアルバムです。
Big Thiefの時のバンドサウンドとは違い、このアルバムでは基本的にアコースティックギターとボーカルのみと、パーソナルな世界観で美しい声を聞かせてくれます。
自分がパーソナルなフォークが好きな理由の1つとして、その情報量の少なさがあります。情報量が少ない事で1音1音が際立ち、音や歌の美しさにより向き合えるようになると感じられるからです。
このアルバムもそうで、Adrianne Lenkerの声、アコースティックギターのアルペジオの1音、ポジションを移動するときの弦が擦れる音までが美しく響き、それを目一杯聞き手が感じることができます。
また「songs」ももちろんですが、その真骨頂は「instrumentals」の方に宿っていると思っています。
歌も消えアコースティックな音の響きだけを感じる22分もの大作「music for indigo」はそのアンビエント性も素晴らしい傑作です。
そしてもう1点特筆すべきは、スタジオではなく屋外にて録音されたフィールドレコーディング作品だということです。
今年70'sUKのHeronというバンドを知ってフィールドレコーディングを明確に意識するようになりました。様々な音が紛れ込む事で、「この音が鳴っている空間」まで意識が広がるように感じます。このアルバムでもアンビエント的なエッセンスとして良いスパイスとなっています。
「zombie girl」では実際に鳥のさえずりが聞こえちゃいます。素敵です。

4. mei ehara 「Ampersands」

mei eharaさんのカクバリズムからの2ndアルバムです。
単純な回数で言うと、2020年の新譜で一番よく聞いたのは実はこのアルバムなのではないかと思っています。
自分の中で「アルバム」と言う単位で好きになるものによくある条件?がいくつかあるのですが、その中の一つに「最後まで聴き切った後すぐに2周目を聴きたくなる」というものがあります。今までそう思ったアルバムはいくつかあります。例えばはっぴいえんどの「風街ろまん」、Beatlesの「Rubber Soul」、台風クラブの「初期の台風クラブ」などです。そしてmei eharaさんのこのアルバムもそうでした。そうやってこの一年、気づけば事あるごとに繰り返し繰り返し聴き続けていました。
なぜそう思うのか、決定的な理由は見つけられていませんが、曲の軽やかさは1つ理由としてあるんじゃないかな、とぼんやり思っています。
アルバム全体を通してミニマルな曲が多く、音数を絞られた中で気持ちの良い音が際立っています。特にトリプルファイヤーの鳥居正道さんが弾くギターフレーズはどれも心地よいグルーヴで、mei eharaさんの飾らない歌声と相まって、肩の力を抜いて楽に聞けたような気がします。
どこかのレコード屋さんが、このアルバムに対して「永遠に聞けるアルバム!!」とポップをつけていた事を覚えています。間違い無いです。

4. Gia Margaret 「Mia Gargaret」

シカゴのSSW, Gia Margaretの2ndアルバムは今年の自分の中での「静謐」というテーマでの象徴的な作品だと思います。
病によって声が出なくなってしまった時期に揺れるアイデンティティの中で作られたアルバムで、内容としては美しいアンビエント作品となっています。
Mort Garson 「Mother Earth's Plantasia」を想起させるような穏やかなシンセのアルペジオや自身の過去の声のサンプリング、雄大なサウンドスケープはひたすらに心を癒してくれました。
また最終曲「lesson」では快方に向かうGia margaretの歌も聞くことができます。SSWのアイデンティティの危機と回復の記録としても素晴らしい作品だと思います。
個人的にはこのアルバムとJulianna Barwick「Healing is a Miracle」、Emily A. Sprague「Hill Flower, Fog」という3枚によってアンビエントに興味を持ち出し、最近Loris S. Sarid「Music for Tomato Plants」を知ったことでアンビエントにどっぷり浸かり出しそうです。来年はどうなるか。

3. GEZAN 「狂(KLUE)」

1月末にリリースされた頃と今12月末、1年弱でこれほどまでに輝きを増すとは初めて聞いた時には思いもしていませんでした。
この一年で社会に様々な事件が起こって、「社会の方がこのアルバムを輝かせてしまった」とも言えるでしょう。
このアルバムでまず語るべきは、やはり強烈なレベルミュージックとしての側面です。
個人的に特に今年BLMに端を発するような議論の中で、無思慮に吐かれるヘイト的言説を見るたび心を痛め、その余りの数の多さに自分の考えの方が間違っているのではと不安になっていました。その度にこのアルバムの曲たちを聴き、語られる言葉の一言一句を噛み締めて、改めて自分の心を信じてみようと再確認するループを何度も繰り返していました。その意味で、他とは違う形で自分の心を癒してくれたアルバムだと思っています。
またプロテスト性の話ばかりをしたくなりますが、音楽的にもGEZANの新しい境地が見えます。
BPM100で統一され、繰り返され続ける呪詛のようなサンプリングボイス。重いダブワイズ。「Free Refugees」で乱れ飛ぶ民族儀式的な打楽器。そして全編を通したハードコアの中で優しさが際立つ「Soul Material」や「 I 」といった曲たち。
どの側面を取ってもトップクラスのクオリティだと思います。

3. Holy Hive 「Float Back To You」

ブルックリンの新進レーベルBIG CROWNからの新星、Holy Hiveのデビューアルバムです。
Chicano Batmanの際にも書きましたが、自分自身今年になってからBIG CROWNというレーベルを意識するようになりました。以前からBRAINSTORYやThe Shacks等それぞれのアーティストは認知していたのですが、それらが全て共通の文脈の上で展開されていたことに衝撃を受け、BIG CROWNの新作には全幅の信頼を置くようになりました。
内容はといえば、アルバム全体を通して感じられるドロドロに溶けてしまいそうなほどメロウでサイケデリックな演奏、その上でファルセットが美しいフォーキーなボーカルがゆったり乗っかります。「フォークソウル」とよく称されるのですが、ここまで見事に2ジャンルを混ぜられると脱帽です。
また特に、根幹を支えるドラムの魅力は2020年で断トツのトップだと思います。
自分もドラマーですが、ドラムのパターン自体はここまでゆったりシンプルなのに音の質感とグルーヴでここまで魅力的になるのか、と改めて感動していました。好きになった後に知りましたが、ドラマーのHomer SteinweissはAmy WinehouseやBruno Mars, Mark Ronsonなどのバックも務めたスーパープレイヤーだそうです。
ストリーミングも良いですがその質感を存分に味わえるレコードで是非聞いて欲しい1枚です。

2. 青葉市子 「アダンの風」

12月にリリースされた青葉市子さんの7thアルバムです。
このアルバムは「架空の映画のサウンドトラック」というコンセプトで作成され、それもあってか過去の青葉市子さんのカタログとは明確に毛色の違う作品です。
今までのクラシックギターと歌のみの編成とは異なり、ストリングス、アンビエント的な楽器の音なども盛り込まれ、また「霧鳴島」「Parfum d'etoiles」などのコーラスのみで歌詞のないトラックが挟まれることでアルバム全体を通してのアンビエント性に磨きをかけています。
自分自身先行シングルだった「Porcelain」を単曲で聞いた時には、正直急な雰囲気の変化に戸惑ってしまい、アルバムリリース前にはあまり良いと思えていませんでした。
ただアルバムを通して聴き、アルバム全体を流れる空気感/オーラのようなものを感じながら聴くことで、「Porcelain」が見事にアルバムのハイライトとして溶け込んでいることに気付き、驚きと感動で大好きになっていました。
ただここまで文章を書いてみましたが、このアルバムに感じる底の見えない魅力は、1ヶ月程度で咀嚼して理解できるものではないことは間違い無いです。
これから1年、2年と長く聞いていくことで更に理解し、発見して、もっと好きになっていきたいな、と思います。

2. Bruno Major 「To Let A Good Thing Die」

UKのSSW、Bruno Majorの2ndアルバムは、2020年に自分が好きになったアルバムの中で最もボーカルの魅力、美しさを感じることができたアルバムだと思います。
2020年はコロナ禍によってミニマルでDIY的な音楽が増えました。ただやはりその中でもBruno Majorは元々DIY的に一人で音楽を作り続けていたこともあり、クオリティの面では頭ひとつ抜けていたと思います。
フォーキーでアコースティックなギターの音にローがよく出たベースとタイトなドラムマシンというモダンなアプローチが混ざることで過去と現在が混ざり合うような気持ちを感じます。
そしてその上に乗るBruno Majorの囁きかけるような歌声は一級品です。
全曲を通してボーカルとしての実力を存分に感じられますが、そんな中でもやはりBruno Majorの歌の魅力が圧倒的に発揮される最終曲のバラード「To Let A Food Thing Die」は必聴です。聴くたびに自分の心のしこりをいつも溶かしてくれたような気がしています。
本当であれば8月のフジロックでライブを見るはずでしたがそれが敵わなかったのが非常に残念でした。全てが落ち着き、彼の歌を大きな音で浴びることが出来る日を楽しみに待っています。

1. ROTH BART BARON 「極彩色の祝祭」

自分の2020年邦楽ベスト、ROTH BART BARONの5thアルバムです。
自分の音楽の趣味的に意外だと思うのですが、ROTH BART BARONを好きになったのは実は今年、このアルバムが出た頃からです。
前に聞いた時には自分の音楽に対する受け幅が狭く、この音楽をあまり理解できていませんでした。今作を聴くようになったきっかけも、Judee Sillからの影響を話すツイートを音楽好きの知り合いがRTしているのを見てからです。
いざ聞いてみればコーラスワーク、ホーンやストリングスの幻想的な美しさにやられて一瞬で大好きになってしまいました。振り返って思えば2020年に一番出会えてよかったのはこのバンドかもしれません。
内容について、今更自分のような新参者が話す必要など無いようにすら思いますが、それでもやはり話したいのは「ヨVE」という曲についてです。
ドラムの均一なリズムによる安定した雰囲気の中、優しい上物のフレーズが少しずつ盛り上がって行くこれこそ「祝祭」というような曲ですが、その終わりは予期せず訪れます。この曲の展開には、2020年、当たり前だと思っていた生活が突如として変わってしまった自分たちのことを重ねずにはいられませんでした。そこから「NEVER FORGET」へと繋がる展開は、この「2020年」という年を象徴することすら出来ると思っています。
将来このとんでもない1年を思う時、必ず思い出すことになるであろうアルバムです。1月のライブが楽しみで仕方ないです。

1. Hello Forever 「Whatever It Is」

2020年に鳴るべくして鳴る、もう一つの祝祭だと思っています、Hello Foreverのデビューアルバムです。
「2020年のマジカルミステリーツアー」と表現されるように、美しい厚みのあるコーラスワークや逆再生の音を取り入れたりすることから、一聴するとビートルズ、ビーチボーイズ等の60's~70'sのサイケデリックロックの雰囲気を多分に感じられます。
しかしただの焼き増しではなく、他のあらゆる音楽の要素が貪欲に取り入れられ、現代的な感覚で混ぜられています。例えば「Colors in the Sky」でみられるカラフルで複雑なパーカッションワークはトクマルシューゴのような、「Natural」の疾走感のあるギターフレーズはレーベルの先輩であるStrokesのような、「Yeah Like Whatever」の癖のあるフレーズたちはDirty Projectorsのような。聴けば聴くだけ、あらゆる音楽のエッセンスが散りばめられているように感じられます。
中でもM6「Rise」が素晴らしい、全体を通してポジティブな感情が湧く作中で、ミニマルな音と少し内省的な歌詞がフックになっています。
そして後半で一気に感情が爆発するように展開し、もっと聴きたいと思うところで曲は終わり、ハイテンポな「Natural」へとつながり、その疾走感のまま駆け抜けます。
この極彩色の優しいポジティブ・ヴァイブレーションは自分の今年感じていた鬱屈とした気持ちを綺麗さっぱり吹き飛ばしてくれました。文句なしの傑作、ベストアルバムです。

以上が自分の2020年ベストアルバムです。もちろんここに選んでいないから好きでなかったと言うわけではありませんのでご了承ください。
来年以降も引き続き楽しくいろいろ聞いていきたいですね。
今回紹介したものとギリギリ選ぶことができなかったアルバムをまとめたプレイリストを作りました。よければ聞いてみてください。

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