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関数男物語〜さまよえるやばいフォルダ03〜

 悪夢のようなフォルダを次々に漁っていく。「どこかに規則性はないか…。」「そんなものは、存在しない。」五里霧中で作業していくが、解決の糸口は見つからない。年度の中にフォルダを作っている分掌があれば、計画の中に年度ごとのフォルダを作成している分掌もある。貴重な夏休みの半日を費やして数男が出した結論は、

「これまでのフォルダ構成を無視すること。」

だった。とてもではないが、数男一人の力でどうにかできる問題ではない。そこで、数男は、事務職員の島倉に相談した。島倉は、以前から表計算小の共有サーバーについて不満を述べていた。
 外部からのメールや文書を受理する仕事は、彼女のルーティンの一つだ。重要な通知を始め、研修の案内、出張のための派遣申請なども処理している。文書受理を終えると、管理職の決裁を経て、それぞれの担当者に文書が渡される。これは、すべて彼女がいちいち印刷してくれたものだ。
 県や自治体からの通知などは、印刷されたものに担当者は目を通し、必要に応じて他の職員に周知していく。問題は、各種の調査や報告である。例えば、ある調査が市から届いたとする。島倉は、そのメールの内容と添付された様式を印刷し、文書受理作業を行う。決裁の後、担当者には、印刷されたものが渡される。しかし、市への報告は、データをメール添付で行うのである。


 市から送られてきたデータが担当者に届くようにしなければならない。そのために、島倉は、データを校内サーバーに保存する。しかし、ここで、明確なルールが存在しないため、添付されたデータは、「一時保存」というフォルダに保存するしかないという現状だった。
 一時保存に保存されたデータを各担当が別のフォルダに移動し、作業を行う。そして、作成した調査は、起案後に担当者がメールで市へ送付する。しかし、ここでも問題が起こる。提出したデータに不備があった場合である。
 これは、実際にあったケースで、担当者がメールを送付したが、肝心のデータを添付し忘れていたということがあった。教育委員会から担当者へ問い合わせの電話があったのだが、担当者は授業中で手が離せなかった。そこで、島倉が代わりにデータを送付しようと思ったのだが、そのデータがどこにあるのか全く見当もつかない。結果、担当者の授業が終わるまで作業が進められないという結果になってしまった。


 これが一度や二度ならず、しょっちゅう起こるのである。島倉は、基本的に職員室に常駐して事務作業を行なっている。データの管理という点について、彼女は、大きなストレスを抱えていることは間違いなかった。

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