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2019年に見た映画ベスト10

公開する・しないに関わらず歳末恒例企画として例年書いてる。若者よ、こうでもしないと俺たちアラフィフは何を見て何を思ったかさえ忘却の彼方なんだ、許せ。ちなみに過去2年のランキングは以下の通り。

2017
1. メッセージ (2016) Arrival
2. ブロークバック・マウンテン (2005) Brokeback Mountain
3. エターナル・サンシャイン (2004) Eternal Sunshine of the Spotless Mind
4. 荒野のストレンジャー (1973) High Plains Drifter
5. ミリオンダラー・ベイビー (2004) Million Dollar Baby
6. ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 (2005) Walk the Line
7. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014) Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance
8. 潜水服は蝶の夢を見る (2007) Le scaphandre et le papillon
9. フェンス (2016) Fences
10. わたしを離さないで (2010) Never Let Me Go
2018
1. 息もできない (2008) Breathless
2. デトロイト (2017) Detroit
3. ブルックリン (2015) Brooklyn
4. 河童のクゥと夏休み (2007) Summer Days with Coo
5. 大統領の陰謀 (1976) All The President's Men
6. スリー・ビルボード (2017) Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
7. あなたを見送る七日間 (2014) This is Where I Leave You
8. her/世界でひとつの彼女 (2013) Her
9. gifted/ギフテッド (2017) Gifted
10. セッションズ (2012) The Sessions

括弧内の数字は制作年、つまり遅ればせながら見ました系が何本も入ってくるのがむしろ通常営業であること、おわかりいただけますか。
『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)なんて、公開から10数年間ずっと「ボクシングの映画ですよね」程度の認識でいたせいで、おととし初めて見て、思てたのと違う! って驚きのあまりむやみに評価が高騰したぐらいで。
そもそも母数でいうと2017年が137本、2018年は183本で、常々「映画が好きって公言する人たちに比べればぜんぜん見てない。だけどまあアマプラとかのおかげで見る機会は増えました」ってそんなレベルの人間であることをあらかじめ申し添えさせていただきまして、ようやく今年の俺ベスト10です。あ、今年見た135本からの選出です。

10. インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~ (2018)
Instant Family

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photo: https://www.imdb.com/title/tt7401588/mediaviewer/rm1616932864

家族ものが好きなのとマーク・ウォルバーグ好きの合体。って書き方をすると俳優のバリューで引っ張っていく系ですか、そら日本未公開なのもしょうがないですね。ってなりそうですけど、一応ここでいう「家族」は養子制度によるもので、つまり少子化が叫ばれる私たちにとって家族って何ですか、血縁ですか、血のつながりがなければ家族ではないんですか。というような問いかけを含んでいて、意外に今日的な作品なのかも。と思いながらも物語の回収が不十分だったりするあたりはB級テイストなんですけどね。あとオクタヴィア・スペンサー出てくると自動的に評価が上がってしまうんだ俺。

9. はじまりへの旅 (2016) Captain Fantastic

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photo: https://www.imdb.com/title/tt3553976/mediaviewer/rm912397568
これも家族ものだけど、甘いんですよね作品全体のトーンは。だったらなぜ9位、と聞かれると、えー『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)だってずいぶん甘かったけど泣いたじゃないですかー。とトンチンカンな反論をする俺。
いや、劇中クライマックスで流れる楽曲の使われ方が素晴らしくてさあ。

8. グッバイ・クリストファー・ロビン (2017) Goodbye Christopher Robbin

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photo: https://www.imdb.com/title/tt1653665/mediaviewer/rm1628119040
上の写真も一見すると「家族もの」っぽいわけですが、これはね、強いて言うなら真実はフィクションを超えてさらに苦い系。そんな分類があるのか。
なにしろ『プーと大人になった僕』(2018)って作品も同時期に見たけど、あっちはまだ救いを見出す余地があったけど、こっちはもう本当に見終わったあとに暗くなるやつ。

7. 運び屋 (2018) The Mule

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photo: https://www.imdb.com/title/tt7959026/mediaviewer/rm4010637056
邦題もあらすじ紹介もずっと「運び屋」の話だって言うからそのつもりで見てたら違う、これも「家族」の話じゃねえか。ってなったやつ。
クリント・イーストウッドは『ミスティック・リバー』(2003)以降監督作は『ヒアアフター』(2010)以外全部見ていて、ファンを名乗ってもいいのでは。と思っているのですが、毎回なにかしら賛否両論を掻き立てがちなところがいいですよね。……って意味ではそれこそ誰からも否定されようがない作品ではありました。

6.ももいろそらを (2011) About The Pink Sky

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photo: https://www.imdb.com/title/tt1890472/mediaviewer/rm3237851136
ふだんの行動範囲からは出会いそうもない作品との邂逅、それを「飛距離が出た」と呼んでいるんですけど、これ。これが今年いちばん飛距離が出たやつ。
アマゾンプライムでたまたま見つけた邦画で、不機嫌な女子高生の日常を変な味つけで見せられる作品。おっさん視聴者は若い女子さえ出ていればなんだって見れる……という要素を除いても、不思議な味わいがあって、いや、これいいと思うんだけどな?

5. 沈黙 - サイレンス - (2016) Silence

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photo: https://www.imdb.com/title/tt0490215/mediaviewer/rm1845309952
いまごろ見ていまごろおお、って言ってるやつ、それが私です。遠藤周作の原作も、スコセッシという人の過去作品も知っているわけで、である以上は映画を見るのに通常必要とされる分量以上の覚悟が要るじゃないですか。逆に問いたい、あなたたちはちゃんと覚悟したうえで『ジョーカー』(2019)見に行ったのかと(=見てない)。

4. ピーターラビット (2018) Peter Rabbit

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photo: https://www.imdb.com/title/tt5117670/mediaviewer/rm2997830144
自分のタイムラインで評判が良い作品はたいてい外れがないものですが、これは公開当時疑っていて……というのは、仕事でピーターラビットを扱ったことがあって、猛烈に詳しいんですよ私。だから原作に対して雑な扱いをしているな、と見えたらその時点で興醒めするのは自明で、ってアマゾンがセールでレンタル100円にしたタイミングでおそるおそる見ました。
結果、著作権を管理しているフレデリック・ウォーン社は称えられるべき、という感想。映画オリジナル脚本ながら、全体を通じてビアトリクス・ポターというピーターたちの生みの親の変人エピソードや一度たりとも「可愛いマスコット」扱いされなかったウサギたちとの距離感など、制作者の“分かってる”感がすばらしい出来映えでね。
というか、そういうバックグラウンドなしに見ても緩急自在のストーリーテリングといい、いかにも英国映画らしい苦い笑い要素がふんだんにちりばめられていることといい、ハリウッドじゃない制作界の地力を証明する傑作ですよね。

3. スパイダーマン:スパイダーバース (2018)
Spider-Man: Into the Spider-Verse

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photo: https://www.imdb.com/title/tt4633694/mediaviewer/rm350909952

去年『インフィニティ・ウォー』を見る前に、どこまで自分が追えていたのかを見失ったな。と思ったのでMCU映画の総ざらえを比較的ゆっくりやっており、いわゆるフェイズ3までは『インクレディブル・ハルク』(2008)以外ぜんぶ見たんです私(エドワード・ノートン好きなので逆に見たくない。逆に?)
それでも1本選ぶならこれじゃん? いや、内容を早くも忘れつつあるので勘で言ってるんですけどね。

2. 天才作家の妻 -40年目の真実- (2017) The Wife

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photo: https://www.imdb.com/title/tt3750872/mediaviewer/rm95776768
このグレン・クローズにアカデミー主演女優賞を差し上げずしてどうすんのよ、演技という行為で人類が到達し得る臨界点だろうこれ。何考えてんだ、という憤りがとにかく強烈な印象を残して(受賞した『女王陛下のお気に入り』オリヴィア・コールマンにもさすがって思ったけれども)2月17日に飛行機の中で見て以来、12月28日までずっと暫定1位でした。……ホメているというより前フリになってないか、それ。

1. ザ・レポート (2019)
The Report

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photo: https://www.imdb.com/title/tt8236336/mediaviewer/rm3605233665
興奮のあまり、ふだんやらない画面キャプチャまでやってしまった感想ツイートがこれ。

アメリカの2大政党制はもちろん、作品に描かれた当時の政治状況であったりCIAとFBIの戦いの歴史だったり先行する同ジャンル映画だったり、この1本を味わうために必要とされる予備知識はけっこうな分量なので、万人におすすめできる作品ではないのですが、すごく簡単にいうと、なんで公的な資料を廃棄したらダメなのか、ってことがわかるようになるための映画ですよ。

おおむね「公開直後にその映画を見なかったこと」を後悔することはなく、だからこそ去年見たなかでいちばん心に残ったのは2008年の韓国映画でした、って堂々と言えるタイプの私ですが、稀に「公開直後に見るのと、後日見るのとでは作品の意味が違ってくる」ものもありますよね。
スピルバーグの『ミュンヘン』(2005)を思い浮かべながら書いているんですけど。(=2017年になってから見た)
この『ザ・レポート』は2019年の日本で見るのにふさわしい作品でした。


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