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【喫茶和/和菓子】9月8日 秋のはじまり、桔梗

「暦の上では秋ですね〜」

まだまだ暑さが続く日々の中、街でこんな言葉が聞こえてきた。

空の色が変わった、とか、スーパーに秋の食材を見つけた、とか人それぞれ秋を感じる瞬間が違っていて、ほっこりした気持ちになるので季節の変わり目は好きだ。

そんな私が毎年秋を感じる瞬間は、和菓子屋さんに入って桔梗を見つけたとき。

暑さ残る夏の終わりに、ショーケースに並ぶ桔梗を見つけるといよいよ秋だなと感じる。

桔梗は紫色で星の形をした花だ。秋の七草とも呼ばれ、秋の花として知られる。日常的に和菓子屋さんに行く機会が多い私はショーケースに並ぶお菓子で季節を感じることも少なくない。そんな中でも桔梗が特別なのは、本物の桔梗とお菓子の桔梗、その二つを重ねて楽しむ機会が少ないからかもしれない。

春には桜、夏はヒマワリなど、季節の花とその花がモチーフになったお菓子はセットで楽しむことが多い他の季節に比べて、桔梗は絶滅危惧種にも指定されていて、なかなか本物の花を見かけることができない。

もし、桔梗の花がなくなったら、「このお菓子は何の花を表しているの?」とか、そもそも桔梗をかたどったお菓子がなくなってしまうかもしれないなと思うと、ちょっと、いや、かなりさみしい。

「頑張るんだよ…!」そう心の中でつぶやきながら買った桔梗は去年よりももっと愛おしく感じられた。近くの公園で食べた桔梗はなめらかなこしあんが優しくて、まるで慰めてくれているようだ。こしあんにはコーヒーがとてもよくあう。自然と頭にアイスカフェオレが浮かんだ。

「早く和菓子とコーヒーを楽しめるお店ができるといいな」

そんなことを思いながら喫茶店のドアに手をかけ、吸い込まれていったのだった。

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