長靴をはいたおじさん(短編小説)
田中哲男、59歳。定年退職を3日後に控えた独身男である。地方の町から都会の有名大学へ進学。在学中は部活動など、特別何かに打ち込むことはなかった。しいてあげれば、好きなアイドルのレコードやポスター購入して、コンサートに行くこと。当時、国民的アイドルといわれた鈴鹿さえに、哲男は珍しく熱を上げた。ただ、コンサートでペンライトを大きく振り、「さえちゃ~ん!」と野太い声で応援する、同世代と思われる他の男たちに違和感を覚えた。哲男は彼らを冷ややかな目で見ている自分に気付き、鈴鹿さえから