教科書の例文を使ったCreative Storytelling
内容的に脈絡のない例文を使って文法説明をし、授業が無味乾燥でつまらないものになってしまう。和文英訳問題を通して英作文の指導をしているけれど、単純な日→英を超えた表現力・作文力になかなか繋がらない。多くの英語教員はこのように頭を悩ませる経験をしたことがあるのではないでしょうか。
今回は、このような問題の解決策として、無味乾燥な例文にコンテクストを与え、また単純な和文英訳問題で終わらず、creativeなライティングにつなげる方法を提案します。
よろしければこの投稿の英語版もご覧ください。 #英語で日本の英語教育を語ろう というマガジンを勝手に作成して投稿しています。
文法学習・和文英訳演習の問題点
論理表現の授業などで、教科書やワークブックの例文を使って文法を説明したり、単純な和文英訳エクササイズで文法事項を確認することはよく行われると思います。
しかし、これらの例文はどうしても無味乾燥なものになりがちで、これらの文法事項をコンテクストの中で使わせるというところまでなかなか至りません。また、このような単文において文法事項の練習を積んでも、essay writingのような産出活動の中で学んだ文法事項を使わせることに、なかなかうまくつながらないことに頭を悩ませる英語教員も多いと思います。
もちろん、そうした問題に対して英語教育的に真っ当な解決策としては、meaningful contextを設定したタスクを与えることになります。しかし、毎回毎回そのようなタスクを考えるのもたいへんですし、授業時数的にも全ての単元でそのような活動時間を作り出すことは困難でしょう。
教科書例文を使ったCreative Storytelling
そこで、手っ取り早くターゲット文法事項を「文脈」の中で使用させる活動を紹介します。
指示は簡単です。
「教科書の例文を2,3文選び、つなげてストーリーを作成してください。順番を変えたり、前後や間に文を加筆して構いません。また、例文も少し変えて使って構いません。」
例えば、上に引用した『be Clear Grammar Book II』のページに載っている例文のうち、以下の3文を選んだとします。
一つ一つの例文は脈絡のない文ですが、これらをつなげて、例えば以下のような文章を作り出すことができます。
このようにして、生徒は単調な例文を使って自分たちの創造性で文脈を作り出すことができます。
授業時間としては約10分(初回は活動の指示説明に+5分ほど)あればこの活動を行うことができます。授業時間を割くのが難しければ宿題にしてもいいでしょう。
生徒はこの活動に驚くほど集中して取り組みます。ペアやグループ、またはクラス全体で作品を共有するのも学びにつながります。
脈絡のない文をつなぎ合わせて一貫した物語を作り出すことで、文法の練習だけでなく、ストーリーテリングのスキルを練習することになります。異なるアイデアを論理的に結びつける方法を考える必要があるので、創造性と批判的思考を養うことにもつながります。
難易度調整のバリエーション
活動内容を少し工夫すれば、難易度を調整することもできます。例えば、教科書の例文に日本語訳がついている場合、生徒は日本語で考えがちで、英語表現が制限される可能性があります。日本語訳なしでこの活動を行えば、より挑戦的で意味のある活動になるでしょう。教科書例文に日本語訳が与えらている場合でも、例文を日本語訳なしでコピペして簡単なプリントを作成すれば事足ります。
一方で、英語を苦手としている生徒のために課題を簡単にすることもできます。例えば、生徒が選択できる文の数を減らすことで、創造性を文をつなぎ合わせることに集中させることができ、課題の要求水準を下げつつアウトプットを求めることができます。
また、グループでのブレインストーミングを促すのも効果的です。特に、創造性に自信のない生徒にとっては一人で考えず、ペアやグループで話の構成を考えることは有益でしょう。アイデアや視点を共有することで、生徒が互いに学び合うことにもつながります。
AI時代の創造性
実は、上で示した3つの例文をつなげたサンプル作文はChatGPTによって作成されたものでした。この活動を私の授業で行った際には、サンプルがChatGPTによって作られたことを生徒に伝え、それを動機付けとして「AIに負けるな!」と励ましました。
文法規則を習得し、正確な英語を生み出すことは間違いなく重要です。しかし、特にAIの時代においては、正確な英語を創造的に使用する能力への需要が高まっています。このため、与えられた例文を文脈の中で創造的に活用する活動は非常に効果的だと考えます。
教師の観点からは、この活動はほとんど準備無く実施できるのも魅力です。その場で簡単に導入できる活動であり、多様な学習集団・環境に取り入れることができます。機会がありましたら是非試してみてください。
この投稿で参照した教科書のサンプルページや例文は、いいずな書店のウェブサイトから借用しました:論理・表現Ⅰ be Smart/Clear | 株式会社いいずな書店 (iizuna-shoten.com)
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